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Senri Garden ブルックリンでジャズを耕す

グラスワイン1杯分のお楽しみをジャズと共にブルックリンからデリバリー。エッセイ「ブルックリン物語」、ラジオ「Sen Corouge」、日常を写真と文で綴った「Days」、レシピ「… もっと読む
大江千里の未発表のエッセイ、動画、詩、サウンドを発表していく実験ラボであり、みなさんと作り上げてい… もっと詳しく
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2016年4月の記事一覧

ブルックリン物語 #06 ねえおじ様 "Daddy"

ぴは僕のことをじっと見つめているときがある。 僕が床でストレッチをしていたり、テーブルの前に座り朝ごはんの味噌汁をすすっていたり、それはトイレの便座に座っているときもである。 気配もなくさっと現れて「巨人の星」の明子姉さんのようにじっと心配そうに見つめるのである。おそらく、 「ねえ、ダディ。大丈夫?」 と言いたいのだろう。 相当ストレスを抱えていると、自分でも気がつかないうちに、大声でFワードを叫んでいたりすることがある。その自分の声の大きさに驚くほど興奮している。

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大江屋レシピ (3) 「モーニングスペシャル」の巻

元気スクランブルエッグ。 1)  オリーブオイルで中火で紫玉ねぎのみじん切りと半分ずつに割ったプチトマト、そして沢山の刻みにらを入れる。 2) 少々の塩と黒胡椒で下味をこしらえ、そこに卵二つを入れる。お好みになるまで混ぜ合わせる。

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蜜の味  神様への書留郵便。

神様への書留郵便。 眼に映る景色の色合いや質感はおそらく自分の心の写し絵だと思う そして大事なのはその絵のフレームの外にある 壮大な景色のひろがりには 必ず大きな意味があるということだ 神様は時々バカだから 時々とんでもないミスを犯すから ちゃんと注意深くなどものごとをみてはいないから とりたてて注意を払ってなどいないのだから たとえどんなにくるしくても 起こったことの全部をシリアスに捉えちゃいけない きみが思うほど こういっちゃなんだが いま神様

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ぴ散歩 1  スタスタスタ

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ブルックリン物語 #05 聖者の行進 ”When The Saint’s Go Marchin’ In”

メキシコ料理でモレという食べ物がある。 柔らかく煮込んだチキンに、これまた柔らかく煮込んだ豆を両サイドにあしらって、真ん中のライスを絡めて食べるのである。肉をほぐして豆を上に載せてハラペーニョ(青唐辛子)を擦りおろし、ソースをちょっぴり加えるとなんともいえない妙味が口全体に広がる。 僕が住んでいる街にはメキシコ人が多い。スーパーにもメキシコ米やメキシコのお酢、メキシコのメーカーの缶詰などがずらりと並ぶ。 日曜日にはメキシコ人の司祭がいるカトリック教会で盛大なミサが行われ

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大江屋レシピ (2) 「俺にぎり」の巻

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ブルックリン物語 #04 欲しいものが手に入ったら、すぐに飽きてしまうあなた "After You Get What You Want, You Don't Want It"

英語でWhimsicalという言葉がある。 辞書によると「気まぐれな」とかいう意味になるらしいのだけれど、実際は違う。 僕の中では、たとえば、ジャムの空き瓶などを再利用してハーブをいっぱい入れ、水やお茶などを注ぎ、スエーデン家具に腰を下ろして足を組み、ゆっくりと頂くようなイメージ。ロハスで古いものを大事にする感覚。 たとえば、マンハッタンではなくてアップステートの別荘で。窓を開けると、雪原にタヌキや鹿が走っていくのが見える。かたわらには暖炉に火が灯る。 壁紙はベトナム

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ブルックリン物語 #03  青い雨 "Blue Rain"

真っ青な空を見ることがある。 日本にいた頃に記憶にない特別な青色がそこにある。 あれは一体なんなのだろう。 NYに昔から住む日本人の友達に聞くと、「そうそう、あの色って紺碧だよね。最近とくに見る……」と口を揃えて言う。おそらく、空気の澄んだ日、雨が降った後に起こる現象だと思うのだが、それがとてつもなく美しい。 自分が生きている間に、そういう珍しい現象や色に出会えるチャンスはいったい何回あるのだろう。 舞台のホリゾントに映し出したような紺碧に近い幻想的な色。あの空の色

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蜜の味 #ハッシュタグ

#ハッシュタグ なんでもハッシュタグをつけちゃえばいい。 その精神が気に入らない。 このまえの引っ越しの時も結局そうして なにも断捨離ことができずにいた。 あれもこれもそれもどれも大事なものは なんだって分け合っちゃえばいい。 繋がって共有しちゃえばいい。 その精神の骨子が気に入らない。 梅の花がネックレスのように垂れた道の 影と日向をかき分けながらそっとスキップ した午後の澱みにきみはなんて吐いた? 「春はひとりになりたい」 つぶやきの先で落っこと

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蜜の味

詩作の場「蜜の味」に向けて まだ年端もいかぬ頃に「あの頃はよかった」と昔を慈しみ どうやったらいまを前向きに生きることができるのかと 考えあぐね、いつのまにかそのはけ口を「創る」ことに 見出した。それを誰に話すこともなく、ここまで自問自答で やってくると、 さすがに、どこかにその痕跡を少しだけ 残しておいてもバチが当たらないのではないかと 思えてくる。 とあえばその痕跡の味はいかなるものか。 もしや甘くどこか苦味が残る味ではないか。 甘いだけのカステラで

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