唐長さんとのモノづくり #5 南蛮七宝に光悦月
1,南蛮七宝に光悦月(下弦の月)/紹巴織
となみブルーで織る地の南蛮七宝。お太鼓には光悦月。
紹巴織の特長の一つ、発色性の良さを思いっきり活かして『青(となみブルー)』を主に、白のお月さんも際立たせて袋帯です。
柄づけも、光悦蝶のときと同じ、月は多少左寄りに。月をフワッと見せつことで、浮遊感や正面に対峙して見たときの不思議さを出すようにしています。
2,昔から愛される月
月は、昔から世界中の文明で大きな意味を持っていました。たとえば、その満ち欠けから『再生や回復』の意味。太陽が男性・月は女性、生活に密接な暦は、月齢で決められた太陰暦など。
下弦の月、月は満ち欠けで形が変わります。その形は、月を弓に見立てることができ、どちらが欠けているかで、上弦・下弦の月と分けることができます。
月が沈む時を基準に、欠けている方が上にあると上弦、下だと下弦。言い方を変えると、月をみて左が欠けていると上弦、右が欠けると下弦の月といえます。
この帯のデザインである『下弦の月』のアップ。
月の中にうさぎは見えませんが、織りと素材の紬で、陰影をつけることで、こちらも地の南蛮七宝よりも前に来るようにしてみました。
3,お腹部分には・・・。
こちらは、前2者(蕨・光悦蝶)と異なり、あえて南蛮七宝を無地で通しています。
この帯以降、南蛮七宝の地紋の上に何かの文様を置く場合、このパターンがほとんどです。理由としては、ここに帯留を入れたコーディネート、なにか着姿全体としては、ストーリーがつくれるかもしれない・・・。そんな事情からです。
たとえば、この光悦月の場合、お月さんにはつきものは『うさぎ』。
唐長の唐紙にもある、うさぎ柄。
ガラス作家さんにお願いして制作して頂きました。
うさぎの帯留め。
これをお腹の部分に入れると。
振り返り、お月さんを見上げるうさぎ・・・。
なにか情景とストーリーが浮かんできそうです。
唐長文様の帯や着物のモノづくりには、そんな想像を加えることができる余白をつくっておきたい。最近は特にそう思う傾向が強くなっています。
4,その他・・・
こちらは、紹巴織に紬糸を通して、マットに表現する袋帯。
裏地も・・・と書きたいところですが、これはまた次回にでも・・・。
こちらは帯の青の美しさをクラッチバッグに。