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勢いと下調べ

たまに実家に帰ると、近所を車で走る。
見慣れた景色と「ここはどこだっけ?」というくらい変わってしまった場所が代わる代わる現れる。
変わってしまった場合は、たいてい何もなかったところが住宅地になっている。
そこにあったはずの坂や小さな沢すら消えている。


昔から地元に住んでいる父は、「なぜあの土地に建つ家を買うのかわからない。あそこは昔から水が溜まるところ。怖い」と言っていた。
だって、前の姿を知らないからね。遠くから引っ越してくる人たちは。


若い従妹が結婚そして妊娠した。
赤ちゃんと静かに、お互いの騒音を気にしないで生活したい。
ローンは若いうちに組みたい、と一戸建てを購入するらしかった。
しかし動ける時間がない。急いで探していたところ良い物件が見つかり即決したそうだ。
とても雰囲気の良い場所で新築で安い家が見つかったと叔母が喜んで実家に報告しにきた。


その場所を聞いた父は猛反対した。
「良い場所で新築で、なぜその価格なのかわかるか?あの一帯は掘ってみたら2メートルもいかずに砂が出てくるようなところだ。絶対に解約しろ」
その言葉を聞いて、叔母は慌てて本人たちに解約を勧めたらしい。
まずは賃貸アパートに住んで、ゆっくり探すことにしたそうだ。



今住んでいる我が家の近くに数軒の家が建った。
そこはつい最近まで急な斜面だった。
我が家よりも敷地は狭いが、価格は大幅にめちゃくちゃ高い。二度見するほどの価格だった。
地の利がすべてだと思われる。大きな駅に近いのだ。
私は何年も自転車に乗りながらその急斜面を見ていたので、大丈夫に決まっているけど心配してしまう。


そういう我が家は勢いだけで引っ越してきた。
知り合いなど誰もいないし、以前も低層ビルが建っていたそうだけど。
今さら知らない方がいいのかもしれない。
もう住んじゃってるんだから。


普段あまり意見を言わない父が頼りになると思えた、地元の人って大事だなと思った話。

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