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応援されていること


子供が小学1年生のとき、いじめっぽい目にあっていた。
内容を聞くと、他愛のないというか人によっては「うっとうしいな」で済まされるようなことだった。

しかし、私の子供は真に受けていた。

私も小学生時代に似たような経験があったので、そんなもんは無視に限る。1週間もすれば相手は飽きるのだから。ただ、決して仲間に入ってはならない、というようなことを1年生向けに話しただけだった。


相手は飽きてくれなかった。
1カ月も過ぎたころ、我が子の体調に変化が出てきた。
顔の湿疹が治らなくなり、就寝時にはゲップが止まらない(要するに胃がやられた)。家にいるときは私から離れることができず「もう学校に行きたくない」と数時間に渡って言い続ける。


元々我が子は、自他ともに認める底抜けに明るい子供だった。大人も友達も大好きで、みんなと一緒に遊んだり話したりすることが何よりも楽しみ。

だから、誰にも嫌われたくない。
言い返したら倍になって返ってくる、怖い。

ということだったらしい。


そこで初めて、私は学校に連絡した。
担任の先生は絶句していた。「気がつかなかった」
なぜなら、その相手は我が子だけではなく、いろんな人に同じようにキツイ物言いをしていたのだ。そして、そのほぼ全員が生徒自身で担任の先生に相談していた。
うちの子は先生の前では楽しそうにしていて、1人だけ一切何も言えなかったらしい。そして最終標的になった。


そこから先生は毎日毎日、うちの子と相手の子を別々で面談し続けた。休憩時間もほとんど教室で過ごし、何かあれば必ず先生の近くで過ごすようにと言ってくれていたらしい。

1カ月後、「学校楽しい、もう何もいじめられなくなった」
と言ってくれた。心底ホッとしたし、先生にもお礼の電話を入れた。

相手の子の言い分はいつも「瀬森さんと遊びたい」だったらしく、何とも切なくなってしまった。
先生は「瀬森さんはよく笑うし、きっとそれが眩しすぎると感じる子もいるのでしょう」と話され、さらに何とも言えなくなった。
しかし、その子ももっと気の合うお友達が見つかったようで、それも安心した。

私との面談時には「その屈託のない笑顔をずっと忘れないでいてほしいと心から思うのです」と話してくれた。
きっと我が子のことだけではなく、教え子全体のことを思っての言葉だと感じた。


先生の第一印象は、おとなしくてキッチリしていそうだった。
実際のところ、叱るときも大きな声を出すことはなかったらしい。字がとんでもなく上手で、スポーツが好きで、おそらく自分も教え子も静かに律するタイプだったのではないか。
それを冷たく感じる人もいたようだが、私は今でもとても好きな先生だ。


その先生も数年後に転任していかれた。
子供は今でも年賀状のやり取りをしている。
転任のときに子供が手紙を書いたので返事をくださったのだが、そこには「あなたをいつも応援しています」と書かれていた。

年賀状にも必ず「あなたをいつも応援しています」と書かれている。


子供は受け取ると「わーい」と喜んでいるが、私は毎回涙が出そうになる。
なんでかわからないけど。
なんでだろう。


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