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[しゃぶしゃぶ食べ放題屋] 和食さと(SRSホールディングス社)の歴史

 今回は、しゃぶしゃぶ食べ放題の店舗を全国展開する、和食さと(SRSホールディングス社)の歴史について解説します。


波乱の時代の、2代目社長就任


 1987年3月 29歳の時にSRSホールディングス社に入社した、後に「和食さと」の事業を立ち上げる重里欣孝(しげさと よしたか)さんは、仕入れルートを開拓するための営業に駆り出されました。入社二年目に、同社社長であった父から
「韓国の済州島で美味しいフグが捕れるそうだから、済州島や釜山などの港からフグを仕入れられるように、話をつけてこい」
と言われ、当時反日感情の激しかった韓国まで行ったそうです。

1980年代の韓国では、反日感情が激しかったようです。
1980年から1988年まで韓国大統領をつとめていたチョン・ドゥファンさんが
「韓国が日本の領土とされてしまったのは日本が悪いのではなく朝鮮が弱かったのである」
と主張したり、また1986年、日本文部省の藤尾大臣が
「韓国併合は合意の上に形成されたもの」
と発言したため、韓国内の反日勢力は大ブーイングしました。
1980年代の韓国で反日感情が高まったため、1991年12月には、元慰安婦らが日本政府に謝罪を求めて東京地裁に提訴しました。

1987年から欣孝さんは、仕入れルートを開拓する営業活動に精を出していましたが、この頃、SRSホールディングス社が創業期から運営していた安売り寿司屋の売上げ・利益が落ちていました。1978年に「回転寿司の回るコンベア」の独占権が切れてから回転寿司屋が沢山できたことにより、寿司屋同士の価格競争が激化したためです。
欣孝さんは、1985年にSRSホールディングス社が実験的に奈良県に開店していた、旬の食材を使った和食ファミレス『和食さと』の店舗をもっと増やせば会社の売上高・利益が伸びるんじゃないかと考え、会社経営陣にそのように提案しました。

しかし1980年代後半、人気だったファミレスチェーン すかいらーく社が和食も売り出し話題となっており、それを見た和食・寿司チェーン 音羽社や、和食・うどんチェーン サガミ社など和食チェーンも「最近 和食離れが進んでいるけれど、そんなこと関係なく和食レストランは流行るらしい」と気づき張り切って店舗数の拡大を始めていたので、社内で
「今更 和食店をやっても、ライバル店が山ほどあるので儲からないんじゃないか。店舗を増やすには大金がかかるので、『和食さと』店舗を増やさない方が会社のためじゃないか」
という意見が多く、社内のほとんどの人が欣孝さんの意見に猛反対したそうです。
創業者社長の息子で、入社3ヶ月後からSRSホールディングス社の取締役についていた欣孝さんは自分の意見をゴリ押しし、SRSホールディングス社がそれまで安売り寿司屋の運営をする中で蓄積してきた、他社がまねできない和食作りのノウハウを結集して喜ばれる和食メニューを作り、また自分のそれまでの、仕入れルート開拓の営業マン経験から学んだ知識を活かしながら、材料を安く仕入れる工夫をして商品価格を下げ、他にはない最高の『和食さと』店舗を全国各地に作りました。

結果、SRSホールディングス社が創業期から運営していた安売り寿司屋の売上げ・利益が落ちる中、『和食さと』店舗の業績は伸び続け、SRSホールディングス社を支える存在となりました。そしてSRSホールディングス社は1989年8月に、居酒屋チェーンを運営する芳醇社を買収し、海鮮居酒屋「馳走厨房芳醇」も運営できるようになりました。こうして和食店だけでなく居酒屋も運営できるようになり、業績がさらに良くなったSRSホールディングス社は、1989年9月に大阪証券取引所第一部に上場することができました。
そのため重里欣孝さんはSRSホールディングスの社員さん達に認められ、1993年 35歳でSRSホールディングス社の2代目社長となりました。

 1990年代は日本の景気が悪かったので、SRSホールディングス社の売上げ・利益も少なくなり、二代目社長となった欣孝(よしたか)さんは、税金を節約するため1997年に、レトルト食品や冷凍食品の製造を行っていた子会社 スインビー・フーズを精算しなくてはいけませんでした。
1992年8月、金利の上昇からバブルが崩壊してきて、消費者がお金を使わなくなり、1992年の日経平均が1990年より6923.76円も落ちるほど景気が悪くなったので、1992年8月に宮沢総理大臣が、不良債権を抱える金融機関に公的資金を注入すべきだと提案しました。しかし、まだその頃は住専(個人向けの住宅融資を専門に扱っている金融機関)の経営もそこまで苦しくなく、国民の生活にそこまで不安がなかったために、宮沢総理の案は却下されました。
ところが、バブル崩壊の影響で東京23区の土地が「1991年: 1m3=129 .4万円」から「1995年: 1m3=60.0万円」まで落ち、また1995年の倒産した企業の負債総額が1991年より1.09兆円も増えたので、1995年には回収不能の不良債権額が住専全体で約6.4兆円にものぼり、住専8社中7社が行き詰まりの状態になってしまいました。住専がつぶれると困るので、1996年にやっと日本政府は、6850億円の公的資金を住専に投入しました。さらに、1998年に日本政府は大手21行に総額1兆8000億円、1999年に大手15行に総額7兆4592億円の公的資金を投入しました。
資金投入をしても銀行の信用不安は収まらず、銀行にお金を預ける人が少ないままだったので「銀行が融資できない・融資してもらえないので会社経営が上手くいかず、景気も良くならない」状態が続きました。消費が落ち込んできたので、日本政府は景気を良くしようと、1995年に金利を3.0%から1.625%に下げ、1998年に1.50%にまで下げましたが、日本の経済活動は活発にならず、インフレ率は「1995年: -0.09%」から「1999年: -0.35%」にまで下がりました。
このように1990年代は日本の景気が悪かったので、SRSホールディングス社の売上げ・利益も少なくなり、二代目社長となった欣孝(よしたか)さんは、税金を節約するため1997年に、レトルト食品や冷凍食品の製造を行っていた子会社 スインビー・フーズを精算しなくてはいけませんでした。

アメリカバブルの復活と会社の起死回生


 日本経済は、アメリカ企業の株価が上がり続けるバブルによる、輸出の拡大で良くなりましたが、2000年10月に景気の山を越え、以降景気後退局面に入りました。理由は、アメリカ経済が急速に減速し、アメリカへの輸出が急減したことです。また、日本はアメリカだけではなく中国とも貿易しており、2000年の中国への輸出額は輸出総額の10.0%を占めますが、当時中国経済は、1997年7月頃から始まったアジア通貨危機(アメリカが日本やドイツにドルを買わせドル高になったために起った、アジア諸国の通貨の価値下落・そこからもたらされたアジア経済の低迷)の影響で低迷していたので、2001年の日本の輸出総額は、2000年より2.7億円も減ってしまいました。
しかし、アメリカ政府が金融緩和を行い、金利上昇により一度崩壊したアメリカのインターネット関連企業の株価が高くなるITバブルが復活し、アメリカの景気が良くなったので、アメリカがパソコン部品をアジアから輸入するようになり、2002年はじめから中国を含むアジア諸国の景気も良くなりました。そのため、日本からアメリカや中国向けの輸出も増え、2002年~2007年の各年の日本の輸出総額は毎年増え続け、2007年の日本のGDPは2002年より42.0兆円も増え、日本経済が活発になれば上昇するインフレ率も「2002年: -0.90%」から「2007年: 0.05%」まで上昇しました。

 このように2000年代は日本経済が活発だったので、安くて美味しい和食のファミレス『和食さと』は繁盛したみたいです。
国内の健康食品の市場規模が「1998年: 6900億円」「1999年: 7500億円」「2000年: 8100億円」と増えてきたほど、日本人の健康意識が上昇してきたので、SRSホールディングス社は2000年2月から、メニューブックやポスターなどに「会社がどのような規準で食材の安全を判断しているか」をまとめた「安心宣言」の文章をのせ、手間と費用を惜しまずに、その規準に収まっているかをチェックする事にしています。
また日本人の生活が洋風に変わり、洋食店が沢山でき価格競争になってきたので、SRSホールディングス社が運営していた洋食店が利益を出せなくなり、2002年2月に、同社は運営していた洋食店を全て和食店に作り替えました。少子化が進み、家族連れをターゲットとするファミレス自体が流行らなくなってきているので、和食ファミレスの経営に集中しても上手くいく保証は全くなかったのですが、欣孝社長は「イチかバチかやってみよう」という思いで1店舗数千万円のお金をかけて店舗作り替えをやりました。経営陣の8割の人が反対したのを、ゴリ押しして作り替えを断行した欣孝社長でしたが、しかし作り替えた後も、売上げが全く上がりませんでした。「やっぱり言わんこっちゃない。こんなバカ社長にはついて行けない」経営陣は会社を辞めて去ろうとしましたが、欣孝社長は「後10年待ってくれ必ずV字回復させてみせるから」と言い、別の会社に勤めていた弟 政彦さんにアドバイスを求めました。

政彦さんから、
「『和食さと』は、日本には珍しい和食ファミレスチェーンと言うことで人気になってきた店。しかし、ファミレスの王者 すかいらーく社が運営する「夢庵」や、東海地区・関西に和食レストランを展開するサガミホールディングス社が店舗数を増やしたりなど、和食ファミレスが沢山できた今、珍しさがなくなってしまったので、さとは流行らなくなってしまった。和食さとと言えばこれ、といわれるようなインパクトある商品を売れば、さとの業績は回復するかもしれない」
と言われ、欣孝さんは「しゃぶしゃぶ食べ放題」という画期的なメニューを考え出し、2009年6月からこちらの販売を開始しました。「しゃぶしゃぶ食べ放題」を売り出す戦略が見事に成功し、売上げがどんどん出て、2010年のSRSホールディングス社の営業利益は2009年のなんと3倍以上になったので、1998年からとんかつ屋 「かつや」店舗の運営を開始し関東地区中心に店舗数を増やし、「かつや」運営開始からわずか4年後の2002年には直営・FC合わせて100店舗を達成した天才企業 アークランドサービスホールディングス社に認められ、2010年10月には同社から4802万円を出資してもらい、関東地区だけでなく関西でも「かつや」店舗を出店し運営する会社 サト・アークランドフードサービスを設立することができました。

アメリカに負けぬ改革


 2008年9月から始まったリーマン・ショックにより、ドルの信用がなくなり ドルが売られてドル安になり、アメリカ経済がガタガタになってしまいました。
当時のアメリカ大統領 ブッシュが2008年10月、「銀行を潰してしまうとアメリカの信用が無くなって大変なことになる」と言って、約7000億ドルの公的資金を投入して金融機関の不良債権を買い取りました。しかし、大型ハリケーンが2005年8月にアメリカ南東部を襲った際 逃げ遅れて被害に遭った貧困層に支援を出し渋ったほど、お金を出したがらないブッシュ大統領が、金に糸目を付けず金融機関救済をするほどアメリカはヤバいのか、と世界に思われ、アメリカ経済はますます信用を失い、2008年10月3日時点で1万ドルの値段をつけていた米ダウ平均は、2009年3月には6547ドルまで下がってしまいました。

金融機関の救済をすることにより アメリカ経済がむしろ悪くなってしまったので、2008年11月に行われたアメリカ大統領選挙でブッシュ大統領が所属していた共和党は負け、新しく民主党のバラク・オバマが次期大統領に当選しました。
大統領就任前から経済再生計画を検討してきた真面目なオバマ大統領は、就任後わずか1ヶ月の2009年2月から、約5000億ドルの予算を割いてインフラ投資を行い、また所得税の減税なども行いました。これらは大きな結果を上げ、アメリカの景気は良くなり特に個人消費が増加し、2009年のアメリカのGDPは2008年より下がりましたが、2010年のアメリカGDPは2009年より4127億ドルも増えました。

アメリカの景気が良くなったので、2010年の日米貿易の輸出入合計は2009年より5.6兆円も増えました。また、2010年の日本のGDPも2009年より20兆円以上も増加しました。2009年の日本のGDPが2008年より減少しているところを見ると、2010年の日本経済は活発だったことが分かります。

その後、2011年3月に東日本大震災、2015年頃からの不動産バブル崩壊による中国経済の減速など、さまざまな問題がありましたが、トランプ大統領が2017年に法人税率を35%から21%まで大胆に引き下げるトランプ減税を実施したこともあり、アメリカ企業の設備投資や個人消費が盛り上がったので、アメリカ経済は悪くならず日米貿易もさらに活発になりました。2020年の日米貿易の輸出入合計は、2010年より3.8兆円も増え、2020年の日本のGDPは2010年より18兆円以上増えました。

 このように2010年代は日本経済が活発だったので、「しゃぶしゃぶ食べ放題」という強力な武器のあるSRSホールディングス社は、東日本大震災が起き電力不足で、政府から2011年7月から9月まで関東圏と東北地方の店舗で15%の節電を義務づけられた影響や欧州債務危機による景気の悪化の影響で、2012年3月期の通期決算(純利益)では28億円以上の赤字を出してしまいましたが、2010年3月期~2016年3月期の間の、2012年3月期以外の通期決算(純利益)では黒字が続きました。
2016年9月に、ボリュームのある定食や丼物のレストランチェーンを運営する 宮本むなし社を買収し、さらに「和食さと」店舗内にドリンクバーの機械を導入したSRSホールディングス社は、それらのために43億3300万円の資金をつかってしまったので、そのため2017年3月期の通期決算(純利益)は一時的に赤字になってしまいましたが、すぐに回復しました。

コロナ禍で2020年からの業績は流石に悪く、2021年3月期~2023年3月期の間のSRSホールディングス社の通期決算(営業利益)は赤字でした。しかし、2022年9月から「和食さと」店舗内でしゃぶしゃぶだけでなく焼き肉やお寿司なども食べ放題になるサービスの提供をはじめ、2023年1月~2月に期間限定でフグ料理を販売したりと工夫した結果、同社の2023年3月期の売上高は2022年3月期より116億円も増えました。

今年もSRSホールディングス社は、4月からスマートフォンなどでお持ち帰り注文をできるようにしたり、3月から「和食さと」店舗でアイドルグループNMB48とコラボしたオリジナル料理の販売を始めたりと工夫しているので、2024年3月期には2023年3月期より34億円以上多い通期決算(売上高)が出ると予想されています。

今後 SRSホールディングス社が、どのように世の中を変えていくのかに注目ですね。

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お疲れ様です。
貴重な時間を割き、お読みくださいましてありがとうございました。
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 次回は、和豚もちぶたしゃぶしゃぶ食べ放題で有名なファミレス きんのぶたを関西で展開する、ワン・ダイニングの歴史について解説します。
11/27(月)に提出予定です。お楽しみに。

まあに

サムネイル内で使った画像の引用元:
https://sato-res.com/assets/sato/apple-touch-icon.png

https://imgfp.hotp.jp/IMGH/81/05/P024458105/P024458105_480.jpg

https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00129/071900067/

まあには見た!

上の記事から学んだ事:
日本で給料が上がらない原因は、
「日本企業の経営者が慎重なので 会社の収益を従業員に配らず会社に貯蓄しておくから」
だけだと思っていましたが、上の記事を読んで
「日本の会社の大半は赤字なので設備投資ができず、企業の収益が上がらないから」
というのも見逃せない大きな理由だなと気づきました。
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上の記事から学んだ事:
上の記事を読んで、輸出物価・輸入物価という概念は大切だなと思いました。例えば、2022年の欧米では、ロシアのウクライナ侵攻の影響で物価が高騰しており、日本の主な輸出品の自動車が売れなくなっていたので、自動車の値段が下がり輸出物価が下がりました。だから、輸出しても儲からず、2022年の実質経済成長率は2021年より下がったのかも知れません。

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上の記事から学んだ事:
上の記事を読んで、言い訳はやっぱり良くないと思いました。これからもまっすぐ生きたいです。

その100円が、まあにのゼンマイを回す