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【法人税】試験研究費の税額控除

試験研究費の税額控除について説明いたします。

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1.試験研究費の税額控除とは

試験研究費の税額控除とは、企業が研究開発を行っている場合に、

法人税額から
試験研究費の額に税額控除割合(2%~)を乗じた金額を
控除できる

制度です。

2.試験研究費の税額控除の種類

試験研究費の税額控除の

〇  制度の種類
〇  税額控除額
〇  控除上限

は、以下となります。

国税庁HP   タックスアンサー  No5442  ~  No5444
国税庁HP   タックスアンサー  No5442  ~  No5444

(注1)選択適用
①一般試験研究費の額 と
③中小企業技術基盤強化税制の税額控除額 は、

選択適用となります。中小企業者の場合は、③を選択する方が有利となります。

(注2)適用対象
③中小企業技術基盤強化税制は、基本的に、中小企業者(資本金の額が1億円以下の法人)のみが対象となります。

3.税額控除が可能な試験研究費

税額控除が可能となる試験研究費は、端的にいえば、

自然科学に関する研究開発に要する費用

となります。

3.1  控除可能な試験研究費の概要と定義

概要と定義は以下となります。

<概要>

次の1~3を満たすもの

1  各事業年度の所得の金額の計算上

損金の額に算入される費用
研究開発費として損金経理され、ソフトウェア等の取得価額に算入される費用

2  以下の①~③に関して、「試験研究  ≒  研究開発」を行うための費用

①  製品の製造
②  技術の改良、考案若しくは発明
③  対価を得て提供する新たなサービスの開発


原材料費、人件費、経費
委託試験研究費
技術研究組合の賦課金

<定義>

試験研究とは、事物、機能、現象などについて

新たな知見を得るため又は利用可能な知見の新たな応用を考案するために行う(新規性)

創造的で体系的な調査、収集、分析その他の活動のうち(創造性)

自然科学に係るものをいい

新製品の製造 又は

新技術の改良、考案若しくは発明 に係るものに限らず

現に生産中の製品の製造又は既存の技術の改良、考案若しくは発明に係るもの

も含まれる。

租特法関係通達  四 第42条の4

3.2  対価を得て提供する新たなサービスの開発

対価を得て提供する新たなサービスの開発とは、以下となります。

各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される

対価を得て提供する新たな役務の開発

所定のプロセスを経て行われるものに係る

試験研究のために要する費用

以下に掲げるもの

① その試験研究を行うために要する原材料費、人件費(当該試験研究の業務に専ら従事する者として財務省令で定める者に係るものに限る)及び経費

なお、経費のうち外注費については、外注先での原材料費、人件費及び外注費以外の経費に相当する部分に限る

② 他の者に委託して試験研究を行う法人の当該試験研究のために当該委託を受けた者に対して支払う費用(ただし、①に相当する部分に限る)

租特別法施行令第27条の4第3項第2号他
租特法施行規則第20条第1項及び第2項他

3.3  サービス開発に係る人件費

サービス開発に係る人件費については、以下の者にかかるものに限ります。

✅   情報の解析に必要な確率論及び統計学に関する知識並びに情報処理に関して必要な知識を有すると認められる者(情報解析専門家)であり、

✅  その専門的な知識をもってサービス開発に掲げる試験研究の業務に専ら従事する者

租特別法施行令第27条の4第3項第2号他
租特法施行規則第20条第1項及び第2項他

3.4  サービス開発として必要となるプロセス

サービス開発として必要となるプロセスは、下図となります。

経産省  研究開発税制の概要と令和3年度税制改正

4.税額控除の対象とならない試験研究費の例示

試験研究費には、例えば、次に掲げる活動は含まれません。

⑴  人文科学及び社会科学に係る活動

⑵  リバースエンジニアリング
  (=既に実用化されている製品又は技術の構造や仕組み等に係る情報を自社の製品又は技術にそのまま活用することのみを目的として、当該情報を解析することをいう。)
     その他の単なる模倣を目的とする活動

⑶事務員による事務処理手順の変更若しくは簡素化又は部署編成の変更

など

租特法関係通達  四第42条の4

5.税額控除の対象となる「特別試験研究費」

特別試験研究費は、

・特別研究機関等
・大学等
・その他の者

・共同で行う試験研究に要する費用
・これらの者へ 委託して行う試験研究に要する費用
・中小企業者に支払う知的財産権の使用料

がある場合、当該企業が負担した

✅  特別試験研究費の一定割合を
✅  法人税から控除できる

仕組みのことをいいます。

一般型に比べると、対象範囲が限定されています。そのかわりに控除率は高くなっています。

なお、本制度を活用するために計上した試験研究費については 、

・「一般型 」及び
・「中小企業技術基盤強化税制」

を、活用するための試験研究費として計上はできません。

6.税務処理と税額控除のタイミング

法人税法上の試験研究費のうち、

✅基礎研究及び応用研究の費用の額
✅工業化研究に該当することが明らかでないものの費用の額

は、製造原価に算入しないことができます。(法基通5-1-4 (2))

税務処理と税額控除のタイミングは、以下となります。

7.会計基準との関係

「研究開発費等に係る会計基準」においては、研究及び開発の定義として、以下のように規定しています。

研究とは、新しい知識の発見を目的とした計画的な調査及び探究をいう。 
 
開発とは、新しい製品・サービス・生産方法(以下、「製品等」という。)についての計画若しくは設計又は既存の製品等を著しく改良するための計画若しくは設計として、研究の成果その他の知識を具体化することをいう。 

「研究開発費等に係る会計基準の設定に関する意見書」においては、以下のように規定しています。

例えば、製造現場で行われる改良研究であっても、それが明確なプロジェクトとして行われている場合には、開発の定義における「著しい改良」に該当するものと考えられる。

似ていますが、

法人税法上の試験研究費は、

自然科学に関する「研究開発」活動を意味しており、

✅事務員の事務処理手順の変更や、販売方法の改良など、人文科学・社会科学関係の研究費は含まれない

ものとなります。

8.税法上の繰延資産との関係

法人税法施行令に、以下の繰延資産の範囲の規定があります。

(繰延資産の範囲)
法施令第十四条
三  開発費(新たな技術若しくは新たな経営組織の採用、資源の開発又は市場の開拓のために特別に支出する費用をいう。)

新たな技術若しくは新たな経営組織の採用などの開発費は、法人税上、

✅  任意償却の「繰延資産」となり、
✅  試験研究費には含まれない

ものとなります。

9.まとめ

●  試験研究費の種類によって、税額控除額が異なる
●  税額控除となるのは、自然科学の研究開発費用
●  会計基準や法人税の他の規定との違いがある

試験研究費の税額控除に関して、ご自身で検討するよりも、専門家である税理士に相談することをおすすめします。

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