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荒木村重なる人物

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※歌川国芳『太平記英勇伝』27「荒儀摂津守村重」

 摂州伊丹城主なり。
 其先、将軍・義昭公に随従して、春永に鉾楯(ぼうじゆん)せしが、義昭公の柔弱なるをうとんじ、大多に降り、春永の面前に出るに及んで村重の曰、「己が領国・摂州の地は、総て13郡分国にして、敵徒、所々に城を構へ、兵士を集むあはれ、某に切取の事を仰付られなば、身命を抛(なげうち)、切鎮(きりしづめ)るべし」と言上なすに、春永、莞爾(かんじ)として答をなさず、坐右を見玉ふに、高坏に饅頭を盛並しものあり。腰刀を引抜、切先に三ッ、五ッ、串貫(さしつらぬき)、「いかに村重、我寸志なり。食すべし」とて、目の上に差付たまふ。一坐、色を失なふ中に、荒儀、聊(いさゝか)恐るゝさまなく、「有がたし」とにじりより、大の口をくわっと開き、切先に貫し饅頭を只一ト口(ただひとくち)に食(くわ)んとなす。春永、大きに笑ひ玉ひ、「聞及し汝が大膽(だひだん)、我をさへ驚せり。望に任せ、切取て摂津守たるべし」と仰ければ、村重、面目を施し、直に打立、程なく一国を切従へしが後、再び春永に叛き、竟(つひ)に伊丹の城を責落され、圍(かこみ)を切抜、一命を遁れ、剃髪して一期を送りしとかや。
                     一家略伝史 柳下亭種員記

【大意】荒木村重は伊丹城(有岡城)の城主である。織田信長に拝謁した時、荒木村重は、「摂津国は13郡に分かれ、敵は城を構え、兵士を集めている。某(それがし)に切り取りを申し付け下されば、身命を賭して平定申す」と言上した。これに対して、織田信長はニャっと笑い、無言で腰刀を抜き、その剣先を脇の饅頭を盛っている高杯に向け、饅頭3、5個を突き刺すと、「寸志(ちょっとしたプレゼント)だ。食べろ」と荒木村重の目の前に突き出した。その場に居あわせた者たちは皆、青ざめたが、荒木村重は「有り難く頂戴仕る」と、大きな口を開けて、たった一口で食べてみせた。織田信長は笑い、「噂に聞いていたそなたの大胆さには驚いた。摂津国を切り取り次第に任せる」と言った。その後、荒木村重は、摂津一国を支配したが、織田信長に背き、伊丹城の囲いをすり抜けて逃げ、剃髪して余生を送ったという。

(注)江戸時代の慣例で、名前をもじって記載している。
・荒摂津守村重=荒摂津守村重
・小多春永(はるなが)=織田信長

            出典:『絵本太閤記』「荒木村重が餅を食らう」

以上です。

荒木村重について詳しく書こうと思ったのですが、よく出来た動画が既にあり、書いても需要が無さそうなのでやめました。


・ほのぼの日本史
「荒木村重は信長に謀反を起こしても一族を見捨てなかった」
https://www.youtube.com/watch?v=AVbtZaYBdGo

・歴史じっくり紀行
「信長を裏切り、一族郎党皆殺しにされても生き残った男・荒木村重」
https://www.youtube.com/watch?v=uHHH5uJ2ezM

・戦国BANASHI【『麒麟がくる』登場人物解説】
「信長を裏切り逃げ出した男!?荒木村重」
https://www.youtube.com/watch?v=GJZdQvuhAjg

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