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議会に陳情を出してみよう! - 行政書士が語る、陳情の意義と実際の審議過程とは?

割引あり

今回の記事では、元自治体議員の行政書士として、陳情を出すことの意義や重要性について解説します。自治体議会での審議過程を通じて、市民の声が届くことの意義や、問題解決の可能性について述べます。また、他の陳情の審議状況や陳情者の立場からの議論のポイントを具体的な例を挙げながら解説し、陳情の多様性や審議の厳密さを伝えます。実際に私が提出した陳情の審議過程を有料版の中で紹介します。行政書士として、陳情を行う市民のお役に立ちたいと考えております。

陳情を出すことの意義について

参政権と陳情

国民には、主権者として、政治に参加する権利があり、これを参政権といいます。参政権とは、選挙権・被選挙権に代表されます。

1 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

憲法 第15条

そして、憲法第15条の次にあるのは、請願権の保証がなされており、請願・陳情も参政権の重要な要素であることがわかります。

 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

憲法 第16条

陳情を出すことは重要な権利です。そして、ご自身が地域政治の場で解決されるべきだと考える課題を堂々と提起することが出来ます。そして、その意見に対する議員の反応を注視することも重要です。
そうした事実に基づいて、次回の選挙の投票判断ができるのです。

請願・陳情の違い

請願は憲法に定められた権利ですが、陳情って何でしょうか?

請願というのは議員が紹介者として必要ですが、陳情は紹介議員なしに自治体議会に提出できるものです。国会では、請願しかなく、一般国民が陳情を提出して議論してもらう仕組みはありません。

陳情の扱いは自治体議会によって異なりますが、筆者の地元大田区議会においては、
請願も陳情も審査の扱いは同じです。
大田区議会の説明文をご参考まで。

区議会は、区政に関することや皆様の要望を請願・陳情として受け付けており、どなたでも提出できます。
請願も陳情も、議会の審査では同様に扱われますが、提出の要件及び受理後の取扱いに以下の違いがあります。
(1)紹介議員
・請願の提出には、紹介議員の署名又は記名押印が必要です。
(陳情は不要です。)
(2)陳情の審査除外基準
・請願は憲法第16条において保障されている権利であり、受理した請願は必ず議会の審査が行われます。
・陳情について、大田区議会では「審査除外基準」を設けており、受理した陳情のうち、これらに該当すると議長が判断した陳情は、議会運営委員会の承認を得て、議会の審査をしない取扱いといたします。

「請願・陳情を提出する方へ」大田区議会

大田区議会における陳情の審議状況の解説

さて、今回は、筆者が地元の大田区議会に陳情を提出しその審議過程を報告していく記事です。前提として、大田区議会でほかの陳情がどのような取り扱いをしてきたか履歴をたどります。(令和5年4月に改選されてますので、それ以降の履歴をご紹介します。全49件)

  • 5第18号 物価高騰に伴う緊急給付金制度に関する陳情 【陳情者】 YT氏 → ×

  • 5第19号 蒲蒲線(新空港線)建設代替案の検討及び実施に関する陳情 【陳情者】 YT氏 → ×

  • 5第20号 各駅(JR・東急・京急・都営地下鉄)における駐輪機設置又は増設に関する陳情 【陳情者】 YT氏 → ×

  • 5第21号 協議会等実施取組の実態に合った協議及び統計処理の改善に関する陳情 【陳情者】 YT氏 → ×

  • 5第22号 ふるさと納税による減収対策の実施に関する陳情 【陳情者】 YT氏 → △

  • 5第23号 駅前広場の歩行者・自転車の通行区分に関する陳情 【陳情者】 YT氏 → ×

  • 5第24号 駅前のバス・タクシー乗り場及び駅前広場に風雨避け及びベンチの設置に関する陳情 【陳情者】 YT氏 → ×

  • 5第25号 70歳以上のフレイル予防のために外出して100円給食の助成金制度実施に関する陳情 【陳情者】 YT氏 → ×

  • 5第26号 区議会議員定数削減に関する陳情 【陳情者】 YT氏 → ×

  • 5第27号 区議会議員の歳費固定化に関する陳情 【陳情者】 YT氏 → ×

  • 5第28号 京急雑色駅に特急電車が停車していただけるようにすることに関する陳情 【陳情者】 YT氏 → ×

  • 5第29号 「住民票の閲覧制限」制度の改善に関する陳情 【陳情者】 個人 → ×

  • 5第30号 「別居・離婚後における良好な親子関係を維持する制度」を求める陳情 【陳情者】 個人 → ×

  • 5第32号 道交法63条の十一にヘルメット条例案に関する陳情 【陳情者】 個人 → ×

  • 5第33号 第二段階を含む新空港線(蒲蒲線)整備計画を区民に分りやすく説明する事を求める陳情 【陳情者】 新空港線を考える会 → △

  • 5第34号 新空港線三セク会社の財政的リスクへの区民の懸念にたいし丁寧な説明を求める陳情 【陳情者】 新空港線を考える会 → △

  • 5第35号 保育士応援手当に関する陳情 【陳情者】 福祉保育労組 → ×

  • 5第36号 B滑走路西向き離陸の室内騒音の再測定を、できれば継続的な測定をと願う陳情 【陳情者】 Y氏 → ×

  • 5第37号 ごみ集積所設置に関する陳情 【陳情者】 個人 → △

  • 5第39号 『保育士応援手当の継続』に関する陳情 【陳情者】 福祉保育労組 → ×

  • 5第45号 保育士応援手当の継続に関する陳情 【陳情者】 保育問題協議会 → ×

  • 5第46号 区民の長年の悲願「安心で安全な空」を叶えてくださるよう要望する陳情 【陳情者】 I氏 → ×

  • 5第47号 生活保護基準引き上げの意見書を国に求める陳情 【陳情者】 生活と健康を守る会 → ×

  • 5第48号 自転車用ヘルメット購入助成を求める陳情 【陳情者】 生活と健康を守る会 → ×

  • 5第49号 区立小中学校の給食について無償化の継続と質の確保を求める陳情 【陳情者】 新日本婦人の会 → ×

  • 5第50号 三年間の実績で明らかな「有害・不要」の羽田新ルートの廃止を国に求める陳情 【陳情者】 M氏 → ×

  • 5第51号 政党機関紙の庁舎内勧誘活動の自粛を求める陳情 【陳情者】 個人 → △

  • 5第52号 現行の健康保険証の存続を求める陳情 【陳情者】 東京歯科保険医協会 → ×

  • 5第53号 ごみ収集車の通行を可能とする私道整備の陳情 【陳情者】 個人 → ×

  • 5第54号 健康保険証の存続を求める陳情 【陳情者】 東京保険医協会 → ×

  • 5第55号 大田区が所管する区道に対し道路としての管理監督をお願いする陳情 【陳情者】 個人 → △

  • 5第56号 住民の生活実感を反映できるLdenに代わる騒音指標を国に求めてほしいと願う陳情 【陳情者】 Y氏 → ×

  • 5第57号 馬込第三小学校の校舎改築と教育環境の改善を求める請願 【陳情者】 紹介議員:共産・無所属 → ×

  • 5第58号 小中学校のトイレに生理用品の設置を求める陳情 【陳情者】 新日本婦人の会 → ×

  • 5第59号 マイボトル用給水スポットを大田区の施設に設置することを求める陳情 【陳情者】 新日本婦人の会 → ×

  • 5第60号 大森東中学校による砂埃(砂塵・粉塵)の防止策に関する陳情 【陳情者】 個人 → △

  • 5第61号 固定資産税及び都市計画税の軽減措置の継続について意見書の提出に関する陳情 【陳情者】 青色申告会大森 → 〇

  • 5第62号 固定資産税及び都市計画税の軽減措置の継続について意見書の提出に関する陳情 【陳情者】 青色申告会蒲田 → 〇

  • 5第63号 固定資産税及び都市計画税の軽減措置の継続について意見書の提出に関する陳情 【陳情者】 青色申告会雪谷 → 〇

  • 5第64号 再審法改正の促進を求める意見書を国会・政府に提出することを求める陳情 【陳情者】 日本国民救援会 → ×

  • 5第65号 「現行健康保険証廃止撤回を求める国に対する意見書」に関する陳情 【陳情者】 平和と民主主義交歓会 → ×

  • 5第66号 「現行の健康保険証の存続を求める政府への意見書」の提出を求める陳情 【陳情者】 城南保健生協 → ×

  • 5第67号 全ての羽田空港運航便で発生した着陸復航情報の公開を求める陳情 【陳情者】 M氏 → ×

  • 5第68号 国民健康保険料の引き下げなど改善を求める陳情 【陳情者】 新日本婦人の会 → ×

  • 5第69号 「スピーキングテスト」に関する請願 【陳情者】 紹介議員:立民・共産 → ×

  • 5第70号 若竹児童公園に誰にも優しいトイレの設置を求める陳情 【陳情者】 個人 → △

  • 5第72号 大田区古着回収ボックスの常設に関する陳情 【陳情者】 個人 → △

  • 5第73号 滝山病院事件で明らかになった精神科病院の実態と大田区福祉行政の在り方に関する陳情 【陳情者】 団体 → ×

  • 5第74号 消費者保護のため政府等に特商法の抜本的法改正を求める意見書の提出を求める陳情 【陳情者】 第一東京弁護士会 → △

陳情の審査結果は、大田区議会サイトに公開されています。
陳情の審査結果は、採択、不採択、継続に分かれます。継続とは、委員会で採択、不採択の判断をしないで継続的に審査していきますということ。とはいえ、次の審査機会はあまりなく、実質棚上げ扱いともいえます。
記事の表記はわかりやすく採択「〇」、不採択「×」、継続「△」としました。

陳情者名と具体的な陳情の内容は区役所の情報コーナーに冊子が置かれています。
今回の記事作成では、陳情者名をピックしました。
団体名は勝手に略称にしたほか、
個人名は複数陳情を提出した人にはイニシャルをふり、単発の人は、個人とだけ表記しました。
分かる人には、陳情の内容関係なく、この陳情者の案件は不採択となってしまうのか、など読み取れます。

令和5年4月から12月までの大田区議会での陳情全49件の審査結果をまとめると
採択「〇」   3件
不採択「×」 36件
継続「△」    10件

採択はわずか3件。区内3つの青色申告会はそれぞれ提出した「固定資産税及び都市計画税の軽減措置の継続について意見書の提出に関する陳情」
これは、毎年恒例で、青色申告会が陳情して、議会で意見書を提出。そして、国レベルで固定資産税及び都市計画税の軽減措置が継続されるという政治プロセスです。

恒例の青色申告会の陳情を除けば、大田区議会は陳情を採択していないわけで、陳情が採択される期待を持つことはナンセンス。
陳情に対して、議員はどういった反応を示すかを観察することが重要です。

陳情提出を支援する行政書士

私は業として行政書士をしております。
行政書士はお客様に代わって行政庁へ許可申請などを行います。そうした過程で、政策提言への関与を求められることもあります。政策提言のひとつの形態として陳情書の提出を支援させていただくこともできます。

多くの議会が郵送で受け付けた陳情は審査されません。平日の営業時間帯に窓口に持ち込むのが大前提なので、お忙しい方は、行政書士を代理人として活用することが有効です。

区役所10階、議会事務局の窓口にて受付をしております。
受付時間…8:30~17:00 (土曜日・日曜日・祝日及び年末年始を除きます。)
窓口まで請願・陳情書をご持参ください。代理の方による提出も可能です。
(大田区議会では、郵送分の陳情は審査除外となりますのでご注意ください。)

「陳情の提出について」大田区議会

政策提言や陳情提出になれた行政書士であれば、議会での議論をより良い形に残すこともできるでしょう。

実際に陳情を提出するためのコツと注意点

前置きが長くなりましたが、筆者が提出する陳情をお示ししてそのポイントを解説します。今回の陳情は2本です。

区長等の退職金に関する陳情

陳情の趣旨:
「大田区長等の退職手当に関する条例」の改正を検討してください。

理由

2023年4月の江東区長選で当選して11月15日に辞職した木村弥生氏に対して、江東区は12月6日、区議会で木村氏が虚偽答弁をした疑いがあるとして、木村氏の退職金約462万円の支給を差し止めると発表しました。この件はわずか半年余りで区長が自らの不祥事で辞職した場合でも多額の退職金が支払われるという驚きの事実が明らかになったと言えます。大田区でも、区長が任期満了に至らないのに、退職金を得てしまうことにならないよう早急な対応を求めたい。
そこで、大田区長等の退職手当に関する条例(以下、「条例」とする。」)の改正を検討してください。

ちなみに、条例第3条において、区長等の退職手当は勤続期間1年ごとに算定されることとなっており月割はされません。同様の退職手当に関する条例がある江東区では、区長がわずか半年余りで退職されたにもかかわらず、勤続期間1年分に相当する退職金が算定されています。
そして、条例第6条で、「非違により」退職した場合、退職手当を半額にする規定があり、やはり同様の条例がある江東区では、そうしたことを根拠に退職金の支給を差し止めたものと思われます。つまり、不祥事の場合でも、必ずしも退職金の支給を差し止めることはできません。
何も事が起こっていなくても、退職金の支払い条件は整備しておくべきかと思います。
ご検討のほどよろしくお願い申し上げます。

区議会議員の不祥事発生時の議員報酬支払に関する陳情

陳情の趣旨:
「大田区議会議員の議員報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例」の改正を検討してください。

理由

大田区以外の自治体で議員の不祥事のニュースは後を絶ちません。最近では、2021年7月の都議会議員選挙直後に発覚した都議会議員の無免許運転人身事故、2022年7月の港区議会議員の淫行による3度目の逮捕、2022年8月の寝屋川市議会議員のコロナ融資詐欺といった不祥事がありました。みなさまの身近な議員にも不祥事は起こりえます。
そして、議員の不祥事が発生すると長期に議会を欠席してしまいがちなのに議員報酬が支払われることは、有権者からの大きな批判の対象になります。そうした批判を防ぐためにも、大田区議会議員の議員報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例(以下、「条例」とする。」)の改正を検討してください。

たとえば、寝屋川市では寝屋川市議会の議員の議員報酬及び費用弁償等に関する条例に、議員が被疑者又は被告人として身体の拘束を受けていることにより議会の会議を欠席した場合の議員報酬の支給を停止する、といった変更を加えています。
また、港区では、港区議会議員の議員報酬等の特例に関する条例を定めて、議員が自己都合その他の事由により区議会の会議等を連続して欠席した場合における議員報酬を減額する、といった規定を設けています。

事が起こる場合の備えとして、議員報酬の支払い条件は整備しておくべきかと思います。
ご検討のほどよろしくお願い申し上げます。

陳情の経緯

noteの記事で半年で辞職した江東区の区長さんが退職金をもらうということに制度の不備を感じておりました。せっかくだから、不備を是正するアクションをすることとしました。
あえて、誰か区議会議員に根回しすることもなく陳情書一発提出してます。
もちろん、自分自身の権利を守る主張であれば、関係する議員に状況をしっかり説明して、より良い審議がなされるような努力をするべきです。

陳情書作成のコツ

陳情書は簡潔に分かりやすく。
これが絶対だと思います。
何枚にもわたる、微妙に論理的でない文章はなかなか読めません。
また、合理的であっても、専門的な記述も困りものです。そうなると、陳情書の提出だけでなく、事前に関係議員や行政担当者に説明をして理解してもらうべきでしょう。さらにいえば、良好な関係性で関係議員や行政担当者に説明ができたならば、「陳情」という声で課題解決が進んでいくので、もはや陳情書を出すこともないでしょう。

陳情の趣旨は、あまり具体的なことを書かない。具体的なことが書いてあると、それ実現不可能だよね、といった理由をつけて不採択とされてしまうこともあります。
議員の皆様の良識にもとづく自由で活発な議論を期待します。

陳情提出を通じた成果とこれからの展望

さてここからは有料ページといたします。

「区長等の退職金に関する陳情」は2月27日の総務財政委員会
「区議会議員の不祥事発生時の議員報酬支払に関する陳情」は2月29日の議会運営委員会で審査されます。

実際に、議会で陳情審査がなされた後に、陳情審査の内容とこれからの展望を書き進めてまいります。ぜひ読んでみたいという方は、今課金していただくことも歓迎です。記事が更新されましたら、通知されますので、お待ちください。お待ちいただいている読者がいらっしゃることはこれからの執筆意欲が高まります。
ぜひ有料ページのご購入をお願いいたします。

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