東京以外の日本に街が存在すると知った日の話

高校2年生の頃、私は生きる意味を見いだせず、なんとなく日々を過ごしていた。

高1の頃、人生で一番大きな失敗してからというもの、どう生きればいいか分からなくなっていた。

ある時、毎回通っていた同人イベントが大阪で開催されることが決まった。
大阪は行ったことがなかった。というか、私は一都三県と茨城以外の場所に行ったことがなかった。

自然教室や修学旅行で関東を出たことはあるものの、そこでは自由が与えられていなかったため、自分の意思でそこに行ったとは言い難い。

親戚は国内だと東京と神奈川にしかいない。4代くらい遡らないと関東外の人がいない。

そんな家庭で、大阪に行こうとするとどうなるか?

「大阪なんて危険なところ1人で行っちゃ駄目よ」

母親に反対された。
関東人の大半は大阪を危険なところだと思っている。

私は反論した。
「私は歌舞伎町だって普通に歩いたことあるよ。何で歌舞伎町はよくて大阪は駄目なの?」
「あのねぇ、大阪に行くには新幹線を使わなきゃいけないでしょう?新幹線に1人で乗るなんて大変よ。あたしだって修学旅行でしか乗ったことないのに」
1人の新幹線が危険という方向に論点ずらしをされた。
「でも小学校の友達の○○ちゃんは夏休みにおばあちゃん家に行くのに1人で新幹線に乗っていたよ」
みたいな感じで反論を続けていたら、2週間後やっと母親が折れてくれて、私は無事大阪に行けることになった。

当日は朝早くに起きて、品川駅へ向かった。実家は川崎市某所だが新横浜にはほとんど行ったことがなかったため品川駅を利用した。
事前に購入した新幹線のきっぷを新幹線改札に通すと、とてもワクワクした。
はりきりすぎて大分早く品川駅に着いたので、何本か新幹線を見送って、指定席をとった新幹線を待った。

目的の新幹線が来たら、きっぷとにらめっこして自分の席を探した。

品川駅なので席に着いたらすぐに新幹線は出発した。
小さい頃うちの三姉妹で読んだ、新幹線は早そうだが実際乗っているとそんなに景色は早く見えないという話を覚えていたので、それが本当なんだなーと思った。
しばらく景色を見たら、読書をしたり、音楽を聴きながらSNSを見たりして乗車時間を過ごした。
それまでの私は読書なんてあんまりしないタイプだったが、この時読んだライトノベルが非常に面白かったのでこれ以降移動中に積極的に読書をすることになった。

アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者1 (講談社ラノベ文庫)


 音楽のほうはと言うと、この時fripSideにハマっていて、Flower of braveryをよく聞いていた。
そのおかげで今でもこの曲を聞くとこの旅を思い出す。

大阪駅に着いて、まずエスカレーターに乗ると、周りの人がみんな右側で止まっていた。噂通りなことに感動した。慣れない左側を歩いて、電車を乗り換えた。

最初の目的地は東淀川駅付近にあるとあるコンビニ。以前そこにカブトボーグのガチャポンがあるとTwitterで話題になっていたので、今でもあるか見に行ってみたら、流石に無くなっていた。
最初の目的を達成してある程度時間を潰したので、一番の目的であるインテックス大阪に行くことにした。

大阪駅で環状線に乗り換えて、弁天町に向かう。
環状線の景色を見て、生まれて初めて東京でも東京圏でもないのに高層ビルが立ち並ぶ光景を見た。
東京以外の日本にこんな場所があったのかと驚いた。

その後はインテックス大阪に行ってお楽しみの同人誌を買った。
インテからコスモスクエア駅に戻る時、道に迷ったので通りすがりの人に道を聞いた。そしたら関西弁で答えが返ってきた。人生で初めて関西人と話した。
道を教えてもらった後もいろいろ会話が弾んで楽しかった。
日常生活の中で普段会話する人といったら、私の本名や立場を知っている人ばかりで、私は常に偏見の目で見られていた。
しかし、この時話した知らない人は、私のことをただの旅行者として扱ってくれてとても心地がよかった。
知らない場所に行けば何者でもない自分になれる。この会話でそれを知った。

その後は道頓堀や通天閣のあたりに行って観光をした。事前に調べたお店でたこ焼きを食べた。

最後に大阪で観光したのは、タイムリープできるという噂のある神社。
人生で一番の失敗をしてからというもの、私はタイムリープに憧れてネット上でいろんなタイムリープ体験談みたいなのを読んでいた。その中に出てきたのが、大阪市城東区にある八劔神社。

結論から言うと、タイムリープはできなかった。
しかし、この旅は私に未来への希望を与えてくれた。

私は人生に行き詰まっていた。大きな失敗をして、人生もう駄目なんじゃないかと思っていた。
地元に居場所はない。外国にも恐らく居場所は無い。この世のどこにも居場所がないんだと思っていた。
テレビに出る街は全て東京。みんな田舎(テレビに出てくる田舎はみんなポツンと一軒家で自給自足してる)から東京を目指して上京してくる。それは東京くらいしか日本にまともな街がないからだと思っていた。
しかしそれは違った。日本には東京以外にも街があって、そこには人々が生きている。テレビがそれを映さないのは悪しきキー局制度のせいだと後に知った。

もしこれを読んでいる人の中に、修学旅行以外で地元都市圏から出たことがない人がいたら、是非日帰りでもいいから旅に出てほしい。
日本は広いということを、その身で実感してみてほしい。

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