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これまで誰も経験した事のない社会がやってくる!(その3)


住民がいない!ー 空家があふれる街はさながらゴーストタウン


 総務省統計局では5年に1度、10月1日に住宅・土地統計調査を行っています。直近では、令和5年に調査が行われていますが、その結果のポイントは次の3点です。                         
① 全国の総住宅数は6502万戸で,2018年の6241万戸から5年間に261万戸(4.2%)増加している。
② この内、空き家は900万戸で過去最多を記録しており,2018年の849万戸から51万戸(6.0%)増加し、総住宅数に占める割合(空き家率)は2018年の13.6%から13.8%に上昇している。
③ 総世帯数は2024年8月末現在調査結果の公表はされていませんが,国立社会保障·人口問題研究所の推計では2030年の5773万世帯がピークと予想されているので今回の調査の結果では、2018年5400万世帯から多少増加して5500万世帯程度と予想されます。
 ここで、注目したいのは、空き家の増加と空き家率の増加傾向である。これらの数字の増加が今後も進んで行くとするならば、私達の生活に与える影響は大きなものがあります。すなわち治安の悪化や雑草の繁茂や不法投棄の誘発、老朽化した空き家倒壊の危険、景観の悪化や地域の価値の低下などセキュリティ面を中心として、全てがマイナス要素になるものばかりです。
 それでは、今後、空き家の増加はどのようになるでしょうか?
将来の空き家の数は、人口減少、世帯数の増減、世帯の内容(世帯構成、人数)等に左右されます。特に人口が減り続けているのに、現状単独世帯増加により世帯数は増え続けています。2033年には平均世帯人員が2名を割り込むという予想ですので、ますます単独世帯が増え続け、住宅需要を支える中心は高齢単独世帯ということになります。高齢単独世帯では広い家も広い庭も要りません。さらに高齢が進むと家の管理能力も年々衰えていくわけですから、一戸建てを中心に空家が増えていくのは必然の結果となるでしょう。
 こういった現状を踏まえて「空き家対策特別措置法」が2015年2月26日から施行され特定空き家(放置すれば倒壊などの危険が考えられる空き家)に対する対応が強化され、本年4月からは「相続登記の義務化」により所有者不明の不動産の発生を防ぐ法的な措置が行われていますが、どれだけの効果が出るのかは今後の結果待ちです。

  1960年代までは総住宅数と世帯数はほぼ同じくらいで住宅の需給は均衡がとれていました。しかし現在では空家が増え続けても総住宅数は増え続けています。新築住宅を好む日本人の特性もあり、住宅は余っているのに新規住宅の着工が続くからです。そのため総住宅数(供給)と世帯数(需要)のギャップはさらに拡がり、空き家の数は2030年には、1500万件を超えるものと推定されます。これは空き家率にして22.8%にも及ぶ規模です。
いずれにしても、住宅は供給過剰です。先に述べた、社会的な問題の発生とともに、住宅産業とその関連産業も縮小していくでしょう。また、空き家の約6割が賃貸・売却用であることを考えると、私たち個人も、収益物件として住宅を購入することは、よっぽどの人気物件でないかぎり、大きなリスクとなることを肝に銘じておかなければなりません。
 

住民がいない 名ばかり“市”が続出!―都市が限界集落へ変わる
 

  限界集落と言う言葉をご存知ですか?社会学者、大野晃氏が1991年に提唱した概念で、山間部や離島を中心に高齢化と人口減少が進んでいく結果、過疎化を通り越して、自治など共同体としての機能が維持できなくなり、やがて消滅に向かう集落のことを言うそうです。そして、この「限界」の指標としては、総人口の内、半分以上を65歳以上の人が占めることとされています。そのネーミングについては、賛否があるようですが、確かに、65歳以上の人が半数以上になってしまったら、これは地域社会としては早晩立ち行かなくなるのは目に見えるようです。そこで限界集落をもうちょっと大きな単位である市町村という地方公共団体の単位で見てみると、その深刻さはさらに鮮明になります。これを限界自治体と呼ぶそうですが、この限界自治体の数は、2,000年には1自治体にすぎなかったものが、2015年時点では18自治体、そして2020年には60自治体にも達しました。このペースで行くと2050年には全国でどれだけ多くの市町村が限界自治体となるのか予想するのも恐ろしい感じがします。
 2017年に夕張市が「市」レベルで初めて限界自治体になり3年後の2020年調査では5市が限界自治体になりました。そして更に恐ろしく感じたのは、このデータで各市の数字を計算していく過程で、限界自治体にはかろうじて入らなかったものの、もうあと1歩で仲間入りする自治体の数の多さでした。それは、もう山村や離島と言ったレベルではなく、そこそこの人口を抱えた都市レベルにも拡がっていたのです。将来人口予測の結果が今世紀末までの大幅減少を指摘していますからこの限界自治体はどんどん増殖をしていきます。共同体としての自治能力を失った自治体、それらはいずれ消滅していくのでしょうか?あるいは、何らかの生き延びる姿を描けるのでしょうか?
いずれにしても、わが国にとっては頭の痛い問題です。

 現在、日本には815の市があります(政令指定都市・中核市・特別区を含む)。そして「市」を名乗るには人口などいくつかの条件をクリアする必要があります。
 もう10年以上昔の事件ですが、2013年2月、愛知県東浦町で、市制移行の条件の1つである人口5万人以上のハードルを超える為に、国勢調査の人口を水増ししたとして、前副町長が逮捕され、組織的不正の疑いが取りざたされるという事件が起きました。市に昇格することで自治体の基盤を強め、まちづくりを進めたいという願望が、重要な基礎調査である国勢調査をゆがめるまでに至ったのです。このニュースにある市制移行の条件の1つである人口5万人以上のハードルですが、これが今までの右肩上がりの日本であれば何の問題もなかったでしょう。だが、これから日本は急激な人口減少社会が進んで行きます。今まで人口5万人を超えていたような市が急激な人口減少に見舞われる様な例は珍しくなくなっています。そうなると、人口が少なく、高齢者ばかりの限界集落のような“市”が日本中にたくさん存在するということになってしまうのです。

 さて、そもそも「市」の定義は何か?と調べてみると、市制施行の要件は①人口が原則5万人以上あること②商工業等の都市的業態に従事する世帯人口が全人口の6割以上であること。③中心市街地の戸数が、全戸数の6割以上であること、とされています。ところが1995年に改正された市町村の合併の特例に関する法律(合併特例法)など市町村合併を促進する法整備がなされ(いわゆる“平成の大合併”)、市町村合併の際における市制要件が人口3万人以上に緩和され(3万市特例)ました。またこの人口要件は今の制度では、このハードルを一旦越えて市制を施行すると、人口減少により条件を満たせなくなっても、そのまま市であり続けることができるため、過去に人口減少のため市から町になった例は1件もないそうです。というわけで現在、全国815の市の内、3万市特例の条件も満たせない市が124市あります。そして、これが2040年には200市余りと約25%もの市が本来なら市になる条件を満たせない「名ばかりの市」になってしまうと予想されているのです。
 例えば、北海道の歌志内市は2020年時点でも人口2989人ですが、2050年には838人になり内65歳以上人口は57.2%にものぼります。全国的にも知られている夕張市は59.1%にもなります。人口838人で果たして「市」としての機能が果たせるのか?そもそも「市」を名乗ることが問題ないのか?はなはだ疑問に思わざるを得ません。
 今までは、市制移行は主に“イメージが上がる”という理由で推し進められてきましたが、人もいない、税収も減るというなかで、市になると設置が義務付けられる福祉事務所や、配置が義務付けられる社会福祉主事など専門的な職員を維持する事も困難になってくる事が予想されます。このような自治体力の衰退が進めば、満足な行政サービスも望むべくもないでしょう。地方公共団体の区割りや制度を一から作り直すべき時が近づいています。近い将来の日本の地方自治制度、その姿は今とは大きく異なってしまうでしょう。
 

これまで誰も経験した事のない社会がやってくる!     (その1)~(その3)の「まとめ」

 
 以上、人口減少社会によって、私たちの生活が激変することを見てきました。しかし、ここで取上げたのは、ほんのその影響の一部に過ぎないと思います。予想できるもの、あるいは思いもしなかったような影響や問題が生まれて来るかもしれません。
 現在、人口が減少することは、いろいろなところで取上げられています。しかし、皆、人口減少には無頓着なようにも見えます。危機感も感じられません。それは国民だけではなく。政府においてもそうだと感じます。先のことはなるようにしかならないからでしょうか?どうせ、30年先、50年先には生きていないと思っているからでしょうか?
 でも、今はまだ、ゆっくりと進行の段階ですが、そのうちすごいスピードで進み、毎年100万人以上の人口減少が30年~40年も続くのです。
 少子化対策も、社会保障改革も叫ばれてから、もうどれだけの年月が経っていることでしょう。これからどのくらいの年月がかかるのでしょう。いやもういまさら手遅れかも知れない。私たちの次の世代、次の次の世代が幸福な生活を送るように、考えなければいけない大きな問題だと思うのですが。

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