見出し画像

【PYPL/Q4-2021決算速報】オンライン決済サービスを提供するペイパル、2021年第4四半期の結果は売上◯、EPS×、ガイダンス×。市場予想を下回りAH大幅下落。今回も決算&Earnings Callチェックでペイメント&キャッシュレス市場を俯瞰。インフレ価格の影響で低所得層の消費には弱さが露呈。

(全文無料で読めます)

このマガジンは取り上げた企業の投資を推奨する意図は全くないことを改めて確認いたします。企業の業績チェック、ビジネスモデル、新着ニュースをシンプルに定点観測する読み物です。

(ペイパルの会社概要・歴史・ビジネスモデル考察は「【PYPL/米国株銘柄分析】オンライン決済サービスを提供するペイパルの会社概要・ビジネスモデル・今後の株価見通し(将来性/成長性)を決算とCANSLIMの観点から考察。」を参照。)


「PayPal(ティッカーシンボル:PYPL)」のQ4-2021の結果が出ました。


After Hourで株価は決算ミスの影響を受けて大幅下落中です。ひどいことになってますね。今回の決算もアナリスト予想を下回ってしまいました。


株価チャートは現在以下の通りとなっております。

(2022年2月2日時点)

200日移動平均線が50日移動平均線の下にある時点で、成長株トレードをする上ではあり得ない水準ですね。しばらくはペイパルの分析は同じくキャッシュアプリ系のスクエア(SQ、またの名をBlock)の業績予想や業界全体の盛り上がりを見るための情報収拾になりそうです。NEXTペイメントバブルを待ちましょう。


前回決算は↓↓↓です。それでは今回の決算も見ていきましょう。


2021年第4四半期の結果

■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■

※YoY = year over year(前年同期比)

・売上:$6.9B/YoY+13%(予想$6.86B)◎
・EPS:$1.11/YoY+4%(予想$1.12)×
・TPV:$340B/YoY+23%
・Active Accounts:426M/YoY+13%

Q1-22ガイダンス:
・売上:$6.4B/YoY~+6%(予想$6.74B)×
・EPS:~$0.87(予想$1.16)×

■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■


まずは速報として大まかに決算を見ていきます。Earnings Callを聞いた後、本日中に追記し内容を充実させていきます。


■ Revenue(売上高)

◇ Q4-2021:$6.9B/YoY+13%(予想$6.86B)◎

アナリスト予想をクリアしていますが、首の皮一枚という感じです。引き続き、eBay Marketplacesの収益圧縮が響いているとの報告がなされています。

eBayを除く売上はYoY+22%となっています。

■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■

Q1-19:$4.13B(YoY+12%)
Q2-19:$4.30B(YoY+22%)
Q3-19:$4.38B(YoY+19%)
Q4-19:$4.96B(YoY+17%)
Q1-20:$4.6B(YoY+12%)
Q2-20:$5.3B(YoY+22%)
Q3-20:$5.5B(YoY+25%)
Q4-20:$6.12B(YoY+23%)
Q1-21:$6.03B(YoY+31%)
Q2-21:$6.24B(YoY+19%)
Q3-21:$6.18B(YoY+13%)
Q4-21:$6.91B(YoY+13%)←New!!

■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■


現在株式市場ではインフレ、金融緩和引き締めなどが話題に上がり続けていますが、このインフレ圧力が実際にペイパルのユーザーにも影響を及ぼしていたとのことがEarnings Callでは話がありました。オミクロンが来た上で政府の景気刺激策も廃止されればお手上げというのは、確かに。とも思いますね(今まで追い風だっただろとも思いますが)。

サプライチェーンの問題は、当社のクロスボーダー商品と中小企業のお客様に大きな影響を与えました。インフレ圧力は、一部のユーザー層の支出に影響を与えました。COVIDバリアントの脅威が高まり、旅行やイベントの予約が減少したほか、政府の景気刺激策が廃止されたことも影響しました。

Earnings Call和訳



■ EPS(1株当たりの当期純利益)

◇ Q4-2021:$1.11/YoY+4%(予想$1.12)×

EPSは外しました。数字を掻き集めてもどうしても予想に届かなかったという必死感をひしひしと感じました。投資家は優しくないのでこれは売り判断になりますよね。

■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■

Q1-19:$0.66(YoY+16%)
Q2-19:$0.71(YoY+22%)
Q3-19:$0.76(YoY+31%)
Q4-19:$0.83(YoY+20%)
Q1-20:$0.66(YoY+0%)
Q2-20:$1.07(YoY+50.70%)
Q3-20:$1.07(YoY+40.79%)
Q4-20:$1.08(YoY+30.12%)
Q1-21:$1.22(YoY+84.85%)
Q2-21:$1.15(YoY+7.48%)
Q3-21:$1.11(YoY+3.74%)
Q4-21:$1.11(YoY+2.78%)←New!!

■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■


Q2-2020からQ1-2021で仮想通貨バブルや政府給付金などの追い風でやってきましたが、力尽きたという感じですね。ペイパルも一時は株高だったので、もう何年もの成長を織り込んでしまったという感じでしょうか。


■ GAAP/Non-GAAP営業マージン

株式市場ではNon-GAAP(調整後実力値)が重視されます。


Non-GAAP営業マージンは21.8%(Q3-21は23.8%)。GAAP営業マージンは15.2%(Q2-21は16.9%)。マージン毎四半期のように圧縮されています。利益率の高いビジネスが不調であることを示しています。


■ フリー・キャッシュフロー

FCFは$1,550M、前期の1,121Mから増加。FC Marginは22%。

前年同期よりも+38%のフリーキャッシュフローを生んでいます。PayPalは売上高1ドルにつき22セントのFCFを生み出しています。


企業KPI

■ トータル・ペイメント・ボリューム(TPV)

TPVはユーザーの総支払い金額です。ペイパルの最も重要な指標です。

ペイメントボリュームをひたすら増やす努力を同社は長年実施してきているのです。

TPVはYoY+23%の$340Bと増加。成長率は下がりましたが、高い水準を維持。仮想通貨トレンドの追い風がなくなったのも業績に影響していると思います。


PayPal、Venmo、Xoomを含むP2Pの取扱高は19%増の930億ドル。TPVの27%を占めました。Venmoの取扱高は29%増の610億ドルです。

Venmoは決済SNS。若者向けであり、Covid-19下では、追加経済対策の給付金による追い風があり、また仮想通貨決済も非常に活発でした。一応まだ取扱高は増加していますが、Q2の58%増加からわかりやすく減速していますね(Q3も+36%)。


Venmoを受け入れる事業者は増加の一途を辿っています。今後は地道な経営がまた続くと思います(本来ペイパルは堅実なペイメント事業ですからね)。

現在、北米およびヨーロッパの大手小売業者の70%以上、米国の大手小売業者の80%以上が、チェックアウト時にPayPalまたはVenmoを受け入れています。

Earnings Call和訳


BNPL分野は前年同期比で+325%となっています。

Buy Now, Pay Laterは、日本でのPaidyを含め、8つの市場で提供されています。第4四半期のBuy Now, Pay LaterのTPVは32億ドルで、これは130億ドルに相当し、第4四半期の成長率は前年同期比で325%以上となっています。発売以来、全世界で5,400万件のローンを処理し、1,300万人の一般消費者と120万の加盟店がBuy Now, Pay Laterサービスを利用しています。

Earnings Call和訳



■ マーチャント・サービス・ボリューム(事業者決済)

eBayを除いた事業者決済ボリュームは$330B(年平均成長率+27%)。

前回の決算から「Merchant service TPV($B)」がプレゼンテーションに掲載されていないのですが(笑)eBayからの収益が圧縮されすぎて、eBayを外したMerchant TPVしか掲載されていません。

たしかにこれなら多少は見栄えは良いですね。


■ アクティブアカウント/新規アクティブアカウント(NNAs)

アクティブアカウント数は4.26億(YoY+13%)。新規アクティブアカウントは980万。


■ Transaction回数

53億回(YoY+21%)。こちらは安定して伸びています。


財務状況(資本配分/自社株買い/M&A)

2020年は年間で自社株買いは合計16億ドルを実施。Q1-2021に平均株価249.26ドルで530万株の自社株買いをさらに実施。13億2,000万ドルの資本を株主に還元しました。

Q2では平均株価261.82ドルで765,000株の自社株買いを行い、2億ドルの資本を株主に還元。Q3は平均275.12ドルで127万株の自社株買いを行いました。3億5,000万ドルの株主還元を実施。

Q4は平均187.36ドルで800万株の自社株買いを行いました。15億ドルの株主還元を実施。


2015年にeBayよりスピンアウトしてから、約1億3,200万株の普通株式を買い戻し、1株あたり平均90.49ドルで119億ドルの資本を株主に還元しています。

PaypalはFCFの30-40%を自社株買いに充てる方針をとっており、2025年まで継続することを計画しています。


自社株買いはEPSを引き上げますので株式市場で好感されます。アップル(AAPL)と同様に、株主還元に非常に積極的ですね。


M&A


3月にCurvを2億ドルで買収することを発表。5月に返品サービス「ハッピーリターンズ(Happy Returns)」を買収に合意。オンラインの小売業への参入を目指します。

直近、ピンタレスト(PINS)の買収の噂が流れましたが、こちらは進展はありません。


9月に日本の後払い決済業者「ペイディ」を買収していましたね。


FY-22ガイダンス


■ FY-22:

■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■

・2022年売上見通し:YoY~+15%-17%
・Non-GAAP EPS:~$4.60-$4.75
・Free Cash Flow ($B):~$6.0

■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■


eBayの移行により、PayPalの収益は2022年も影響が出ます。(しかしこの辺はある程度数字は把握しているはずで、アナリストとコミュニュケーションはできていなかったのでしょうか)

eBayの移行により、当社のトップラインには6億ドルの圧力がかかります。第1四半期に約4億ドル、第2四半期に約2億ドルです。下半期には、eBayの調整をやめて、当社の中核部門の業績の強さを示すことができるようになることを楽しみにしています。

Earnings Call和訳


■ Q1-22:

■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■

・売上:$6.4B/YoY~+6%(予想$6.74B)×
・EPS:~$0.87(予想$1.16)×

■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■


Earnings Call(役員説明とQ&A)

こちらに日本語訳(調整済み)で全文記事にしてあります。重要ポイントは上記の決算数字項目に落とし込み、以下記事内ではハイライトにしています(太字)ので参考にしてください。


ここではアナリストからの最初の2つの質問だけ掲載しておきます(初期の質問は市場が一番関心がある内容)。マス層の消費の弱さが露呈しているとのことでしたが、これは好景気もあっという間に終わってしまうかもしれませんね。一寸先は闇。


Q1:NNA(New Active Accounts)について。M&Aにおいて、成長よりも品質を重視するエンゲージメントを促進した理由は?また、今年の7億5000万ドルは、よりソフトなものだと思いますが?

A:取引の規模や価格は?モバイル機器での利用だったのか?リピーターであったのか?P2P取引の後に行われたのか、などを分析し、戦略に反映させている。その結果、エンゲージメントが非常に低いユーザーを維持し、エンゲージメントが中程度のユーザーをエンゲージメントが高いユーザーに引き上げるという戦略をとることができた。

A:過去2年間で1億2,200万人のNNAを導入した。これは明らかに、事前の流行レベルを大幅に上回っている。その中には、関与度が低い人や、1回の取引しかしていない人も常にいる。そこで、インセンティブ付きのプログラムをいくつか用意し、彼らが再び参加し、ベースに戻ってくるかどうかを確認した。その結果、パフォーマンスが再び低下することがわかった。このように、ベースに関与しない価値の低いNNAにお金をかけることは、時間の経過とともにますますコスト高になり、収益の増加にはつながらないと考えている。私たちは中期的な見通しに大きな自信を持っており、このシフトは、四半期ごとに何千万人ものNNAを導入することを意味するものではない。ただ、価値の低い加入者にマーケティング費用を投じることはしないということ。


Q2:売上ガイダンスの前提条件について。15%から17%という数字は、数ヶ月前に予想されていた18%よりも明らかに低い数字。

A:今年はより保守的なスタンスを採用しているが、これは過去8~10週間に当社のビジネスで見られたことに基づいている。2022年の見通しの根底には、Eコマースの成長があると考えている。当社のコンセンサス予想では、10%の範囲となっている。これは、まず基本的な仮定のようなもの。

準備書面でも述べたが、低所得層の消費には弱さが見られる。当社の場合、ユーザーベースの割合は、米国全体と同様に、ほぼ同じだ。つまり、ユーザーベースの大きな割合を占めているということ。

このユーザー層は、今年の初めに行われた景気刺激策の恩恵を確実に受けていた。この層は、今年の初めに景気刺激策の恩恵を受けた層であり、需要曲線がより弾力的になったことで、インフレ価格の影響を受けている。確かに、高所得者層の場合は、より非弾力的な需要曲線となり、当社の基盤に占める割合は低くなる。しかし、一般的に言って、人々はVenmoを使ってボートを買いに行っているとは思えない。




ーFINー

ここから先は

0字

¥ 400

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?