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文次の手紙#07

拝啓

内地も若葉萌え桜花咲き香る春の訪れを見た事と存じます。その後、皆様ともに変わりなく元気でお働きの事と思います。幸いに僕も変わりなく、益々元気に勉強しています御安心下さい。

数日雨が降り続き、数あるクリークの水も黄色くにごって満水していましたが、今日は朝から一点の雲なし南支の強い日光に一日中照らされました。検閲が今月中旬にあるそうですから毎日激しい訓練に追われています。検閲が終われば各々分隊に配属せられるそうで先輩者、古参兵たちと一緒に作戦等にも参加でき、実際戦闘も加われる事と思い、張り切っています。ただ今では第一線からは少し後方にいて土匪【※1(原文まま)】の襲撃等は受けたこともなくすこぶる平和がみなぎり、付近の支那人も皇軍の宣撫【※2】により非常に好感を持っているらしいです。

ついては前々より話していた下士官志願について一応、家からの承諾書がいるそうですから、左記に書いたように書き、この手紙着次第、至急航空郵便にてお送りください(送り先は自分宛にてよろしく)。

二伸 写真は休養日に戦友達と写ったものです。あまり良くとれていませんが南支風景の一端が表れています。
それから慰問袋を送ってください。「中には(豆電気)懐中電灯の小さい(夏物ランニング)(甘いもの缶に入ったもの(雑誌)等

文次

昭和15年4月1日

【※1(原文まま)】現地の部族
【※2】占領政策の目的方法などを知らせて人心を安定させること

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