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文次の手紙#03

政次様

拝啓 数日来、寒さ急に厳しくなりました。皆様には御変わりありませんか。
2、3日ははげしく雪が降り、営内も真っ白く積もりました。僕も益々元気でいます。他事ながら安心のほどを。
今日豊子が面会に来ました。第1期の検閲は行軍だけは終わりましたが大体の検閲は残念ながら急に命令変更になり、無期延期になりました。その関係でもありましょうか戦地行きも遅くなりましょう。

そして来月の5、6日ごろから約20日位で予定にて大分県の日出生台の演習場へ連隊全部の初年兵は行くことになりました。検閲は演習から帰ってからあることでしょう。非常に寒くて普通零下何度ということです。教官殿の特別の許しで私物のシャツ等も持って行かれるそうですからシャツはジャケットやチョッキも持っていますから別段いりませんが、あるなら一枚くらい持ってきてください。手袋、靴下等も少し用意してください。来月の5日か6日は確実に行きますからその前に一度来て下さるように御願いします。

それから豊子から聞きましたが軍事補助の事につき、非常に立腹のよし、自分としても全然そんなことを言った覚えもなければまた言われたこともありません。いずれ何かの間違いで達せられたことと思います。もちろん、早速断られた事と思いますが何とぞ悪しからず、右のような次第であります。
ではまた後便にて、お身体大切に。

文次

昭和15年1月29日

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