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科学ジャーナリスト賞2022贈呈式

3年前に科学ジャーナリスト賞(通称J賞)審査員を仰せつかって、過去2回はリモート会議だったのですが、今年初めて対面の会議があり、6月4日の土曜日午後、日本プレスセンターにて授賞式・記念の盾の贈呈式が行われました。

今年はJ賞3件と、大賞1件の受賞となり、先にJ賞の受賞者・受賞代表者に記念の盾がプレゼンターの先生から贈呈され、講評が述べられた後に、受賞者側からのスピーチ、という流れで進みました。

大賞となったのは『福島第一原発事故の「真実」』という"鈍器本"。NHKの「メルトダウン取材班」の13名が著者。10年かけた取材の内容を、736ページの大作を世に出された講談社さんにも感服です。

プレゼンターの浅島誠先生が熱の籠もったスピーチをされ、代表でNHKアナウンサー部の近堂靖洋さんが出版までのエピソードを交えて御礼を述べられました。浅島先生は、NHKならではの強力な取材力への称賛とともに、「紙の本も大事」ということを強調されておられました(私は後から検索したいので、Kindleもゲットしました♬)。

近藤さんのお話の中で、取材していたときに現場の方々の責任感等に述べられたことに触発されて、全体講評のスピーチの際に以下のようなことを述べました。

今回、初めて通常に戻った贈呈式に参加できたことを嬉しく思います。私は多数の応募作品の中から11件が選ばれてからの審査会に参加させていただきましたが、いずれも素晴らしいもので審査会では喧々諤々、活発な意見がかわされました。
惜しくもJ賞に漏れた作品の中で、NHKからのもう1つの映像作品として、NHKスペシャル「津波避難 何が生死を分けたのか」は、データ分析をもとに「どうすべきか」という実践的なメッセージがあったことが良かったと思いました。
また、『科学者をまどわす魔法の数字 インパクト・ファクターの正体』という書籍に関しては、研究者からの見方とジャーナリストの方の見方が異なるということを知り、勉強になりました。
「調査報道 通称「宮崎・早野論文」 『科学的』の正体――私たちは、実験台だったのか」というYouTube作品についても、審査会では長い時間をかけて議論しました。一般市民の方が制作されたものという点で評価されますが、一方、ジャーナリズムという観点では、難しい面がありました。
さて、浅島先生が大賞の作品について熱の籠もったスピーチをされましたが、東日本大震災当時のことを思い出しました。あの日、2011年3月11日14:46分の発災後に避難し、落ち着いてからPCを開くと、最初に届いていたお見舞いメールは西海岸の友人の研究者からでした。電話はつながらない状態でしたが、CNNのニュースを見て連絡をくれたのでした。
そして、F1の問題が浮上し始めた頃、UCSFの友人が「こっちに来なさい。アメリカ大使館が東京までのバスを用意するので、それに乗れるように手配するから」とメールを寄越したのですが、「John、ありがとう。でも私はここでしなければならないことがあるから……」と返信したのでした。
後に、色々な事実が報道されるようになりましたが、市民にとって正確な情報を伝えるということがジャーナリズムとして重要だと、今日の授賞式で改めて思いました。
受賞された皆様、また本賞の選考に関わられたすべての皆様に感謝申し上げます。有難うございました。

J賞受賞式全体講評スピーチ概要

全体講評では時間も押していたので話さなかったのですが、この友人はお父様が原子物理学者で、米国の専門家の間では、そのときすでに(当時の日本国民が知らなかった)「真実」が知られていたのだと後で思ったのでした。当時のブログを時系列で下記に貼り付けておきます。

私にとって、ジャーナリズムのごくごく基本のお作法について学んだのは、中学の国語の市川先生(故人)からだったと思い出しました。「5W1H」や「正確な表現」、「要点のまとめかたには2通りある」など。合掌。


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