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【1%ノンフィクション】Vol.0870(2010年6月9日発行のブログより)
お嫁さんにして!
「ねぇ・・・」
乙は質問した。
「甲はどうして今の会社に入ったの?」
甲は即答した。
「辞めるのに何の未練もなさそうだったから」
乙は溜め息をつきながら驚き呆れて返した。
「そんなんで面接、よく通ったわね」
「いや、面接でも60歳のお爺さんになってから
社長になっても仕⽅ないので3年以内に辞めますって、
そのまま正直に思ったこと言ったんだけど、結局は 信じてもらえなかった」
それはそうだ。
どこの学生が面接でそんな馬鹿な回答をするだろう。
しかも甲は筆記試験免除の幹部候補生コースとしての採用だった。
たった2回の面接で内定を出されて、
どこでも好きな勤務地と職種を選んでいいとまで役員面接では言われた。
47都道府県すべてに支店支社が散らばっており、
従業員7800人を抱える証券会社だった。
それは甲の配属を見れば⼀目瞭然だった。
地域採用の事務職員だった乙は勇気を振り絞って言った。
「転勤になる前に辞めちゃうのかな?」
甲は乙の勇気など微塵も感じずに、目をキラキラ輝かせながら答えた。
「わからない。すべてが将来本を書くためのネタ集めだから。
1人でも多くの人の喜怒哀楽を肌で感じて、
最終的にはその人たちにも目にすることができるように世に出したい」
乙は甲の勢いでずっと堪えていたひと言が遂に言い出せなかった。
「お嫁さんにして!そして私を小説のヒロインにして」
甲は翌月、会社を辞めた。
誰にも相談せずに、辞めた。
同期のほとんどは内心、喜んだ。
職場のほとんどの人間が内心、ホッとした。
ごく⼀部を除いては。
...千田琢哉(2010年6月9日発行の次代創造館ブログより)
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