【気づき】Vol.0936(2011年1月31日発行のブログより)
読書亡羊。
男2人が羊の放牧をしていた。
2人が他事にうつつを抜かしていたため、
すべての羊に逃げられてしまった。
理由を問うと、1人は読書に夢中になっていたから。
もう1人は博打に夢中になっていたから。
理由の差はあっても、2人とも羊を逃がしてしまったという点においては、同罪であるという故事だ。
この四字熟語がたまらなく好きだ。
出典はあの有名な『荘子』だ。
趣旨とは違って申し訳ないんだけど、
読書に夢中になって羊を逃してしまった男の気持ちが、
僕には痛いほどよくわかる。
最初のうちはチラチラ見ながら意識をしているんだけど、
10ページ、20ページ、 30ページ・・・とのめり込んでいくと
もうダメだ。
グッと入り込んで、夢から覚めたようにハッと前を見る。
「・・・」
やってもうた。
というような感じだったんじゃないかな。
絶対に遅刻が許されない全社かけての最重要プレゼンの日に寝過ごした。
絶対に遅刻が許されない受験当日にホテルで寝過ごした。
まあ想像するにそんなところが妥当だろう。
世界中で自分1⼈だけが取り残された血の気が引くアノ感覚だ。
博打の男はほとんど確信犯だったと思う。
読書に夢中になっていた人間と博打をしていた人間を⼀緒にするな!
という主張は受け入れられるはずがない。
もちろん僕から見てもこんなのは同罪だ。
ただ、読書に没頭しまくっていても誰にも文句言われないような、
そんな人生を歩みたいな、
そう願った。
晴れた日の昼間から、会社員たちが忙しそうに歩いている中、
僕だけがそれらとは無縁で好きなことをゆったりやっている。
ウトウトしながら、
そんな空想をしながら漢文の授業を聞いていた記憶がある。
漢文の担当はすごく小柄な先生で、
あだ名が「モンチッチ(雄)」だった。
モンチッチは結構厳しくて体が小さい割にはよく怒鳴った。
理系クラスにいた僕たちの授業は、みんな漢文を放棄して、
教科書を立てながら数学や物理の宿題をやっていた生徒が大半だった。
僕はといえばそのどちらでもなかった。
モンチッチの漢文の授業をしている内容ではなくて、
独特の表情やしぐさを観察することが好きだった。
小柄でも一生懸命なその姿はそっくりそのままモノマネができた。
だからといって、
モンチッチは漢文を軽く見ることは断じて許さなかった。
そして、僕はそんなモンチッチが好きだった。
読書亡羊(どくしょ・ぼうよう)
なんて懐かしくって夢が詰まった言葉なんだろう。
追伸.
モンチッチに、
「お前は何でいつも教科書を忘れるんだ!」と大声でよく注意された。
その度に面白い理由が言えると許してもらうことができた。
でも、今だから正直に告白します。
実は、買っていなかったんです。
...千田琢哉(2011年1月31日発行の次代創造館ブログより)
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