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【1%ノンフィクション】Vol.0744(2010年2月3日発行のブログより)

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某地方都市で講演したときだった。

参加者としては珍しく女性が数人いて、
その中でもとびきり目立つ存在が一人いた。

それが、乙だった。

乙は視線をまったくそらすことなく微動だにせずに
真剣に聴いていてくれた。

講演の講師をするとわかることがある。

誰がどのくらい真剣に聴いていて、誰がどのくらい理解しているのかも
手に取るようにわかるということだ。

自分から参加したのか上司に強制的に参加させられたのかも
わかってしまう。

これは自分が聴講している側にいては一生わからないことだ。

甲は講演の際にいつも会場の誰か一人に話しかけるように
心で決めて話している。

何百人の前で話していても実際にはたった一人にむかって
話しかけているのだ。


このとき会場には260人が講演を聞きに来ていた。

でも甲は乙に向かって話し続けた。

乙だけのために。

もちろん甲もプロだ。

講演中は乙の顔はほとんど見ない。

会場内の誰一人としてそんなことには気づかない。

最後の拍手喝采の後、
まるで⾵呂上がりのような乙の恍惚とした顔がハッキリと見えた。

講演終了後のサイン会で⻑蛇の列の後、乙が最後に並んでいるのが⾒えた。

後になって乙が40代半ばの女性社⻑と知った時は本当に驚いた。

テレビの年齢当てクイズ番組で出たらバカウケするだろう。

どう贔屓目に⾒ても30を超えているようには見えなかったからだ。

ちょっと知的で大人っぽい28歳だった。

...千田琢哉(2010年2月3日発行の次代創造館ブログより)

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