見出し画像

【1%ノンフィクション】Vol.0674(2009年11月25日発行のブログより)

1⽇を2回⽣きる。

⾦融業界は朝が早い。

8時までにはすでに全社員集まってミーティングをしている。

甲はいつも朝5時台の始発の電⾞に乗っていた。

睡眠時間は毎⽇2時間半。

JR⽴花駅という鈍⾏列⾞しか停まらない兵庫県尼崎市に
会社の独⾝寮があった。

そこから⼤阪駅に出て地下鉄御堂筋線で⼼斎橋まで⾏き、
そこから歩いて5分でオフィスに着いた。

1Fと2Fには⾼級ブティックが⼊っていた。

まだ昔の⼼斎橋のご威光が残る⼀等地だった。

 始発に乗ると、6時くらいに⼼斎橋に到着する。

8時までには2時間余裕があった。

その2時間が⼄との毎⽇デートの時間だった。

平⽇はいつも終電にかけ込む⽇々であり、
休⽇のうち⼟曜⽇は⼣⽅頃まで爆睡。

⽇曜⽇は資格試験の勉強。

新⼊社員の1年間はまさに怒涛の如く過ぎていったものだ。

しかしあの頃があったから今があると断⾔できる。

⼄との毎⽇の早朝2時間デートは⽣き甲斐だった。

朝6時の⼼斎橋の毎⽇を知っている⼈は少ない。

8時半を回るとあれだけの雑踏になるが、
6時から8時まではそれこそ⼈っ⼦ひとりいない、
⾃動⾞もほとんど⾛っていない、綺麗な街だ。

特に四ツ橋まで散歩して時の堀江界隈のあの静けさが好きだった。

夜のミナミより朝のミナミが本当のミナミなのだ。

朝6時から開いている秘密の隠れ家的なカフェを知っている⼈など
誰もいない。

甲はいつも杜仲茶。

※杜仲茶は甲が店に無理を⾔ってつくった幻のメニューだった。

学⽣時代から愛飲していた。

⼄はいつもアールグレイ。

 1年中2⼈ともホットだった。

もちろん真夏も。

・・・・・・・・・・・・

その後あの店を訪ねたけれど、もうなくなっていた。

甲と⼄2⼈のためにギリギリで店を開けてくれていたのかもしれない。

責任を感じてしまう。

⼄には朝の2時間は夜の6時間に匹敵するということを教えてもらった。

あの頃甲は毎⽇2回の⼈⽣を⽣きていたのだ。

...千田琢哉(2009年11月25日発行の次代創造館ブログより)

↓千田琢哉のコンテンツ↓

🔷千田琢哉レポート
文筆家・千田琢哉が書き下ろしたコトバを毎月PDFファイルでお届けします。

名称未設定 1

🔷真夜中の雑談~千田琢哉に訊いてきました~
文筆家・千田琢哉があなたから頂いたお悩みに直接答える
音声ダウンロードサービスです。毎月1日と15日発売!
“毎月1回の飲み代を、毎月2回の勉強代に”

真夜中の雑談アイコン Library使用

🔷千田琢哉公式チャンネル

「3分の囁き」千田琢哉の独り語りをYouTubeでお楽しみ下さい。