【1%ノンフィクション】Vol.0759(2010年2月17日発行のブログより)
デジャブ:déjà-vu
「私、不思議な力があるの」
乙が言った。
「毎日のように実際は⼀度も体験したことがないはずなのに、
すでにどこかで体験したことがあると感じることが頻繁に起こるの。
しかも鮮明なカラー映像の記憶で」
「電車に乗った時に見上げた⾞窓の⾵景とか、
オフィスで交わした会話とか、
物思いに耽ったときに思い浮かんだアイデアとか・・・」
甲が興味を⽰した。
「それってひょっとしてデジャブってやつか?」
「そうなの。でも物心ついたときから当たり前だったから
みんなそうだと思っていたのね。でもそうじゃないことに気づいて・・・」
「神様は⼈間に昔の記憶をほんの少しだけ残しておいてくれるって
いうからな。乙にはちょっと余計に残してくれたんじゃないのか?」
乙はちょっとうれしそうに言った。
「え!?そんなこと初めて聞いたわ。いいことなのかしら」
甲は答えた。
「それはそうだろう。前にやり残したことを今回はヒントを
たくさんあげるから必ずやり遂げなさいっていうことだから」
乙はちょっと興奮気味に言った。
「じゃあ、
私はそれだけ⼤切な使命を担って生まれてきたってことなのね?」
甲は言った。
「そうだよ。でも乙は嘘をついてるな」
ギョッとして⼄は振り返った。
「どうして?」
甲は言った。
「今、こうして交わしている会話もすべてデジャブだろ?」
甲は乙よりデジャブの達人だった。
乙の⿎動が高まった。
乙が目を瞑った表情はハッキリとデジャブだった。
...千田琢哉(2010年2月17日発行の次代創造館ブログより)
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