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【1%ノンフィクション】Vol.0794(2010年3月24日発行のブログより)
綺麗なのは・・・
国内の往復のスーパーシートで同じキャビンアテンダントに出くわすことがある。
甲は乙がキャビンアテンダントの中でも鮮明に記憶に残っていた理由は
簡単だった。
甲と乙は苗字が同じだったのだ。
ここのところスーパーシートの乗客には名前を呼び掛けて
サービスをしてくるようになった。
以前は最初に座席に座った時のみ声を掛けられていたが、
最近は⾷事の上げ下げやその他すべてのやり取りにおいて
名前を呼んでくる。
その時乙は少し顔を赤らめながら、でも目をそらさずに甲の名前を呼んだ。
⾃分と同じ苗字のお客さんを呼ぶというのは
最初は何とも恥ずかしいはずだ。
甲は他の乗客と違って必ず挨拶をされたら目を合わせるようにしている。
他の乗客は照れ臭いのか新聞を読んでいたり、仕事の書類に目を通したり、目を合わせてもすぐにそらしてしまう。
挨拶の際に目を合わせると必ずいいことがあるのにもったいない。
乙はわざわざ富士山が見える地点になると甲の座席までやって来てくれて、
「今が⼀番綺麗に見えますよ、富士山」
と教えてくれた。
確かに別格的な存在である際立って美しい富士。
「本当に、綺麗ですね」
振り返ってしばらくしてから甲は言った。
「よかったです!そんなに喜んでもらえて・・・」
乙の笑顔はキャビンアテンダントのビジネス・スマイルではなかった。
「いや、富士山じゃなくて・・・」
甲はついポロリと本⾳が口からこぼれた。
「えっ」
・・・・・・・・・
あの時の乙の笑顔は南青山のヨックモックカフェで
スイーツを⾷べているときと同じ笑顔だった。
...千田琢哉(2010年3月24日発行の次代創造館ブログより)
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