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【1%ノンフィクション】Vol.0815(2010年4月14日発行のブログより)

ハッピーバースデー

「誕生日、おめでとう」

甲は乙にプレゼントを渡した。

「わあ、すごい!」

甲は大手投資顧問会社に勤めるサラリーマンで、
ちょうど30歳の誕生日に1冊目の本を出した。

タイトルは、

『これは買い!とお客様が殺到する銘柄』

だった。

甲は乙の名前を入れてサインを書いておいた。

乙はあまりの感激に涙した。

数回にわたるゲラチェックはすべて乙がやってくれたからだ。

何⼗ヶ所も誤字脱字を見つけてくれた。

でも本当のプレゼントは本でもサインでもなかった。

それは翌朝甲が乙と別れた後にメールで教えてあげた。

「プロローグを読んでみてください」

乙はさっき別れたばかりなのに珍しく甲からメール着信音があったことに
驚いた。

電⾞の中でプレゼントにもらった本のプロローグを何度も読み返した。

さっぱりわからなかった。

「何か暗号でもあるの?いったい何?」

乙は我慢できずにちょっとイライラして家に着く前にメールを返した。

甲からはそれきり返信がなかった。

・・・・・・・・・・・・

⽇付が変わる1分前、甲から返信があった。

「第4段落14行目に乙の名前が隠れてます。
23時59分キミが本当に生まれた時間だね。
ハッピーバースデー。」


甲は自分の処⼥作に乙の名前を暗号で入れてくれていた。

乙は涙が止まらなかった。

プロローグは涙で滲んだ。

4月14日23時59分。

ハッピーバースデー。

...千田琢哉(2010年4月14日発行の次代創造館ブログより)

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