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【気づき】Vol.0952(2011年2月14日発行のブログより)

マリアビートル。

伊坂幸太郎さんの最新作『マリアビートル』(⾓川書店)を読み終えた。

460ページ超の結構なボリュームだったが、
その過半数を占める人生論や蘊蓄うんちくが、
ちょっとクドイが、 そのクドさが好きだ。

⼩説はどうしても結論がバシッと出てこない、
廻りくどい表現でイライラしてしまうのは、 僕の職業病なのかもしれない。

そんなこといったら、⼩説なんてみんなそうなんだけど(笑)

僕が460ページを通して受けた薫陶をまとめると、

幸運な人生と不運な人生があるわけではない。

長期的な幸運と短期的な幸運があるだけだ。

となる。

伊坂さんの小説は、勧善懲悪がベースになっており、
それに生物学の知識がマニアックなほどに散りばめられている。

たぶんセンター試験の理科では生物を選択したんじゃないだろうか。

文系だけど理数系の1科目だけは満点狙っちゃうような学生はいる。

医学部志望なのに日本史で満点狙って熱くなっている人って、
クラスで必ず1人はいたよね(笑)

でも社会人になったら、この一見すると無駄な努力こそが効いてくるんだ。

僕が最初に読んだ、『重⼒ピエロ』はまさにDNAの⼆重螺旋構造に
ついてのエピソードだった。

全知全能の神のような存在の登場人物をはじめ、ちょっとドン臭いけれど、

最終的には

「いいじゃない!」

「こういうカッコよさもあるんだ!」

という登場人物が必ず出てくる。

ストーリーとともに魅力が成長してくる感覚だ。

⾎液型や行動特性、心理学的な話がとっても多くて、
⼀瞬自己啓発書ではないかと錯覚してしまう。

というより、優れた小説はすべて自己啓発書なのかもしれない。

ウィリアム・シェイクスピアの小説は、自己啓発書以上に自己啓発書だ。

人生の教訓や人間の本質のオンパレードであり、
ダブル折りをしまくってしまう。

スタインベックも然り。

またピーター・ドラッカーの本は、
小説のように味わうことができる。

現に『もしドラ』は小説だし、それに追従して出ている本も多数ある。

優れた自己啓発書は小説であり、優れた小説は自己啓発書でもある。

今回の『マリアビートル』においては、 336ページ・10行目

「人の行動は、頭ではなく、直感で決まる。」

というのがよかったな。

これは僕がよく使う多数決の法則と同じだ。

多数決に従うとたいていは不幸を招くというものだ。

ルワンダ虐殺の例を挙げながら、
これでもか、というほど伊坂さんは執拗に攻めてくる。

最後がハッピーエンドだからいいんだけど、
途中ではこんなに恐ろしい話を、否、こんなに⼈間のはらわたをえぐり出すような話を、よくできるものだ、

とブルブルっと⽔で濡れた犬が体を震わせるように、電流が⾛る。

タイトル、『マリアビートル(てんとう⾍)』も素晴らしい。

感動した。

追伸.

同じ日に買って読んだ、エッセイ集

『3652』(新潮社)も好きです。

無名の頃は誰もがみんなこうだったんだ、と勇気がわいてきます。

追伸の追伸.

伊坂さんの本は、すべての本のタイトルが抜群!

いつも物語のラスト5%ほどで、ようやくパズルが完成するかのように、
タイトルに繋がっていく。

 ...千田琢哉(2011年2月14日発行の次代創造館ブログより)

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