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【1%ノンフィクション】Vol.0836(2010年5月5日発行のブログより)

ウラのウラのウラ。

日差しの強い休日の昼過ぎ、心斎橋のホテルトラスティのカフェで、
焼き立ての手作りクッキーをチョイスしてから
乙がちょっとストレス溜まった風に、

「なんか裏を読み過ぎの人って最近多くない?」

と話しかけてきた。

ここだけの話だが、乙のチョイスというのはいつも全種類制覇のことだ。

「裏読み過ぎないのもサラリーマンとしては失格だけどな」

甲があまり真剣味がなさそうに返事をした。

「甲に言われたくないわ!
裏読み過ぎない超鈍感なところがあなたの裏なのよね」


甲はようやく興味を示した。

「それ、褒め言葉?」

「ムッカ!ああ、その余裕かましたとこ・・・好きよ」


乙はじれったそうに言った。

「裏の裏までは誰でも読めるけど裏の裏の裏までくると
将棋の名人クラスの心のヨミが求められるのよね」


そういえば乙は文学部で心理学を専攻していた。

「『氷の微笑』観た?」

乙の心理学の授業が始まりそうだ。

「観たよ!ちゃんと映画館で」

甲は得意気に答えた。

「誰と?」

「・・・」

「冗談よ、そんな昔の話は興味ないわ。全然」


というジョークもはさんだ上で乙は続けた。

「あの映画の凄いところは
結局シャロン・ストーンは犯人ではなかったところなのよね」


「そ、そうだったね(そうだったのか・・・!)」

「・・・本能が強くて欲望に忠実でありのまま正直で嘘がない。
これが多くの刑事たちを困らせたのよね」

「ああ、なるほど。
1000人中999人の凡人は裏や裏の裏を考えるからね」


甲はちょっと得意気にまとめてみた。

焼きたてオリジナルクッキーを7種類すべて乙一人で平らげてから
最後にため息をつくように言った。

「ハァ・・・似た者同士ね」

「似た者同士・・・ですか」


さすがの甲も100%純粋な褒め言葉でないことは、わかった。

...千田琢哉(2010年5月5日発行の次代創造館ブログより)

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