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ブレイクスルー

風の強い昼に雲を見上げる。

雲間から見える空はビビッドな青で、雲が流れるように移動していても、決して空を泳いでるようには見えなかった。

雲は僕を見ているかな。

距離は遠く離れていても僕らは互いにほとんどが見える場所にいたんだ。

それでいて、僕は地面にずっと貼り付いてるし、向こうも空から降りてはこない。

こんな距離感に、どちらも少しだけ歩み寄りを試して近づけないと分かったのに、なぜ僕に責任を負わせる寂しそうな目を向けるのか。僕は雲を恨んだりはしていないよ。

ある程度被害妄想だって分かってはいるけど、そんな気持ちがひょっこり顔を出しちゃったから腕を引っ張ってまじまじと観察してた。

でももういいんだ。視線を一回下ろして前を見てみた。

そしたら遠くに陽炎が見えた、何かを得ようとしてじっと根気よく眺めたけど僕は何とも思わなかった。

雨や雪を降らし、太陽の光を遮るのは雲か。

そんな役割に見えて干渉されているような気がしていたけど、とどのつまり遠くの陽炎と変わらないのかもしれないな。

涙をこらえて、目一杯の大きな声で笑い飛ばした。

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