見出し画像

最高のコンセプトをつくる方法総集編【手順や具体例を解説】

この記事は次のような方へ向けた内容になっています。

  • コンセプトってなに?

  • コンセプトってどう考えるの?

  • コンセプトが思い付かないのだけど…

  • 具体例が知りたい

この記事には、私が運営するブログ「ケンチクカノオト」やinstagram
での発信内容と重複する内容が含まれます。
それでもこの記事を読むメリットは、

  • ブログやinstagramの内容を分かりやすく体系化している

  • ブログやinstagramの内容からさらにブラッシュアップしている

  • 新規に追加した項目が含まれている

  • 有料で購入する必要があるため本気で学習するモチベーションになる

などがあります。

これまで発信してきた情報量がそれなりに増え、情報が発散し始めていたので、体系化するという意味で、今回は「最高のコンセプトのつくり方」という括りにまとめました。この記事に関連する一通りの情報が詰まっています。

まとめるに際し、かつての投稿の分かりにくい言い回しや補足が必要な箇所はできる限り改善しました。さらに新しい内容を追加してパワーアップしています。今後も関連した追加すべきことを思いつき次第、この記事に加筆します。

実は大切だと思っていることは「有料」にするということです。
「ケンチクカノオト」の平均滞在時間は、流し読みをしているのが明らかなくらい短いし、instagramの投稿もささっと飛ばすことがほとんどだと思います。でもそれを責めているわけではなくて、現代が情報社会である以上、急ぐ気持ちは十分に分かるのです。(一部の熟読してくださっている方、ありがとうございます。)
できる限り有益な内容にしようと作成してきましたが、パパパッと見ただけでは正直効果が薄いと思っています…。
「有料」にすることで読む人が限られるというデメリットはありますが、「買ったからにはしっかり学ぼう!」と建築を学ぶことに本腰を入れる人が一人でも増えた方が良いと考えました。集中し、繰り返し読むことで成長効果は絶対に高まります。内容に関しては、値段の数倍の価値は少なくともあると思いますので、その点はご心配されなくて大丈夫です。

※この記事はマガジン「設計課題完全攻略」に含まれます


1.「コンセプト」とは何か?

1-1.コンセプト=仮設である


コンセプトは直訳すると「概念・観点・考え方」となります。

上記はもちろんその通りですが、私は「建築におけるコンセプト=仮説」だと捉えるのが良いのでは、と考えています。
設計の大まかな流れをものすごくざっくりと表すと以下の通りです。(実際は紆余曲折あります。)

コンセプト立案

スタディ

最終的な設計案

ここでそれぞれ、以下のように言葉を当てはめるとイメージがしやすくなります。

コンセプト立案  =  仮説
スタデイ     =  実験
最終的な設計案  =  結果

つまり、

仮説(コンセプト)を立てて、実験(スタディ)して、結果(設計案)が現れる。

これがまさに設計の大筋です。

仮説(コンセプト)はあくまでも言葉であって、それだけだと正しいかは判断できません。仮説(コンセプト)を具現化した結果(設計案)が素晴らしければ、結果的に仮説(コンセプト)が正しいと証明された、ということになります。

反対に、結果(設計案)がイマイチだと、残念ながら仮説自体が間違っていたか、実験(スタディ)の仕方に問題があったということになります。

1-2.コンセプトをつくる目的


コンペ案、設計案、雑誌に載っている建物にはコンセプト文が書かれています。ものすごく当然のようにコンセプトが書かれていますが、本当に必要なのか?改めて考えてみましょう。

コンセプト作成のメリットは次の3つが考えられます。


①頭の中を整理するため
②周りの人への説明のため
③集団プロジェクトの指針


①頭の中を整理するため

一つ目の理由は、設計者が設計をしやすくするためです。
建築はとても多くの与件があり複雑ですが、複雑なものをそのまま設計案に変換しようとすると頭がこんがらがり、何をしたいのか自分でも分からなくなってしまいます。人間ですから、あまりにも複雑で曖昧なことは頭の中で処理しきれないのです。
そのために、話をシンプルにし、分かりやすく言語化します。言語化することで論理的に設計を進めることが可能になります。このようなプロセスを経ないと、直感のみに頼って彷徨いながら設計することになります。

②周りの人へのプレゼンテーションのため

二つ目の理由は、自分以外の人への説明のためです。
講師とのエスキス時や、講評会、あるいは友人や先輩に自分の案を説明するときには、コンセプトがないと説明することが困難でしょう。

コンセプトは全体像を示すテーマでもあります。
設計案を説明するときに、「この部屋は◯◯で〜」「庭は△△で〜」「屋根は□□で〜」と場所ごとにバラバラな説明をしても、聞いた側は「結局何がしたいんだろう…?」と頭に入ってきません…。
まずは全体を示すコンセプト(テーマ)を説明して、その上で個々の場所の説明に移っていけば、聞く側も理解しやすくなります。

③集団プロジェクトにおける指針

三つ目の理由は、設計チームの考えに統一感を出すためです。
グループ課題では数人でチームを組みますが、実務になるとその何倍もの人数でチームを組みます。人数が増えれば増えるほど、それをまとめるのが大変になります。そこで活躍するのが、「コンセプト」です。コンセプトは、チーム全員が共通して目指すべき指針として活躍し、同じ方向を向かせてくれます。

1-3.コンセプトをつくるデメリット


公平を期すためにコンセプトを作成することのデメリットも考えておきましょう。こちらはあんまり考えたことのある人はいないんじゃないでしょうか。

コンセプト作成のデメリットは次の3つが考えられます。


❶話が単純化してしまう
❷言語化される部分に焦点が当たってしまう
❸設計がコンセプトに引っ張られてしまう


❶話が単純化してしまう

コンセプトをつくることで話がシンプルになり、伝わりやすくなるということを先に書きました。ただ実際の設計案はそこまでシンプルではありません。

思い起こして貰いたいのですが、設計があっさりとまとまることはありますか?様々な事を、様々な角度から、あーだこーだと悩んだ結果の設計案ですよね?

多くの場合の設計案は、複合的で多面的で重層的な、複雑さを持ったものなんです。

つまり、コンセプトとして話をシンプルにするということは、同時に多くのことを語らないということなのです。コンセプトは必ずしも「全て」を語れているわけではないということは忘れずにいたほうが良いと思います。

❷言語化される部分に焦点が当たってしまう

コンセプトは言語化(場合によっては数値化)されているわけですが、建築には言語化・数値化できない側面が多くあります。コンセプトに偏重してしまうと、言語化できない部分がないがしろにされがちです。

言語化できるもの・数値化できるものが説得力を持つのは誰もが知るところです。
「○%のCO2削減に成功しました」とか言われたら、とりあえず効果があったんだと頷いてしまいますよね。

けれども、建築の本質はむしろ言語化できない部分にあると思うのです。空間の響き、彫刻的美しさ、原初的幸福感、などなど…。

文章では立派なことを語っていても、実物がいまいちなことは往々にしてあるように、コンセプトばかり追い求めると多くの大切なことを失っていることに気が付かない可能性があるので用心したいところです。

❸設計がコンセプトに引っ張られてしまう

『良い設計のためのコンセプト』ではなく『コンセプトのための設計』になってしまうパターンもあります。

「コンセプトの辻褄が合わないからこうしとくか…。」
「コンセプトが見えやすい形にしておくか…。」

こんな風に考えた経験が多くの人にあると思います。でもこれでは本末転倒です…。設計の目的は『コンセプトの表現』ではなく、良い空間や経験のできる場を目指すことです。

1-4.結局コンセプトとどう向き合えば良いのか?


メリット・デメリットを紹介したように、コンセプトは強力な『武器』になると同時に『毒』にもなります。

私なりのコンセプトへの向き合い方は、
「コンセプトに捉われすぎちゃいけない。けど有効だから利用しよう。」
となります。

追加であえて混乱するようなことを付け足すと…。

名作建築の多くはそもそもコンセプトが言語化ができないものばかりです。
名作建築を言葉にしようとすると実物より陳腐になってしまう…。

例としては、近現代建築の頂点ル・コルビュジェをあげれば十分でしょう。
「ロンシャン礼拝堂」や「ラ・トゥーレット修道院」を見ると、コンセプトなんてどうでもよく思えてきます。(知らない方は調べてみてください!)

2.コンセプトは評価に多大な影響を与える


「コンセプト」を制することは「設計課題」を制することに直結します。これは紛れもない事実です。大学・大学院の6年間で入選できなかったのが一度だけの私が断言します。
評価の高い/低い設計案とコンセプトの関係について、それぞれの特徴を紹介します。

2-1.評価の高い設計案とコンセプト

ここから先は

7,063字
この記事のみ ¥ 990
期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?