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井槻世菜
2017年10月9日 01:48
4.遅れてきた白ウサギ そっちに行ってみよう、と思ったのは完全に何となくだった。 部屋にはどうしても戻れない。かといって入り口にトボトボ一人で向かう自分もあんまりに情けなくて、ましてやトイレに一人でこもるなんて。 考えあぐねた結果、私はほんの思いつきで店の奥の方へと足を向けた。 パーティールームを右に曲がると、狭い廊下の奥は突き当たりになっている。そこに、スタッフ専用と張り紙のされた小さ
2017年10月9日 01:44
1.午睡の始まり 私はいわゆる、〝変な子〟だったらしい。 小学校に入りたての頃の話だ。学校という新しい世界で、私が一番感動したのは、本が所狭しと積まれた大きな図書室の存在だった。幼い頃から本の虫だった私は、いつでも好きな本を手に取れる環境に夢中になった。 そして、毎日一人で図書室に入り浸っていた折に、ある日突然担任から呼び出されたのだ。 ――三枝(さえぐさ)さん、どうして友達と遊