青春の終わらせ方
これ、「どんなに咲き誇る花もいつかは風にさらわれてしまう。なにごともいつか終わるのだから俺の注いだ酒を断らないでくれ…友よ…お前ともいずれ別れていくんだからよ……」みたいな気持ちを歌った漢詩なんだけど、井伏鱒二の訳が美しすぎて広く知られている一遍ですね。
これを、青春を共にした友へのさようならを描いた曲の歌詞にさりげなく盛り込むって、氣志團、やるやん……ってそう、氣志團が作ったんだって。この曲。クレジット見てホォ~ンってなった。知らなかったわ。
いやほんと~~に美しかったね。EBiDAN THE LIVE 2022。
美しかったっていうか、正直さ、ウチら全然みんなの青春に関係ない感じで超良かったよね。みんな、口を開けば当時の「俺ら」の話しかしないから…。なんか意識が全然客席向いてないっていうか、彼らの青春の思い出はお互いのことでみちみちにいっぱいで、あとはららぽーととかガンダムとかみんなで乗ったバスの話でさ、なつかしいね~って話をするために組んだようなセトリで顔がバカ派手な男たちが歌ったり踊ったりエモくなってるの、蚊帳の外から見ててめちゃくちゃ感動するんだけどよく考えたら私そこにいっこも関係なくてそれがよかった。
高校卒業するときさ、鈴木(仮名)っていう友達がいてさ、私は東京の大学、彼女は地元の大学に進学することが決まってた。仲間内で開いたちょっとした催しみたいなの、ライブハウス借りてさ、私がタイムテーブル組んで打ち上げまでやったの。もう3月の終わりで私は数日後には上京するってタイミングだったと思う。最後の最後、サイゼリヤの前でバイバイする時にふと鈴木と目が合って、なにも言わなかったんだけど二人同時にボロって涙出てきてさ、あれが忘れられない。
別に鈴木とは一番仲良かったとかそういうわけでもなくて、確か3年のときは同じクラスだったかな。でも私鈴木以外の全員嫌いだったのね。そんなことある?ってマジ。鈴木のことだけが大好きだった。
私たち、あのときかなり自覚的に青春を終わらせたよね。口に出しても言ってたと思う。「青春が終わる~」って。
あれから鈴木とは1回か2回くらい会った気がするけど、それからはもう長い間会ってない。もう二度と会わないかもしれない。でも私は昨日、あなたのことを思い出しました。
冒頭の詩に対して寺山修司が書いたこれが好きでさ。
2022年8月21日をもってEBiDANを卒業したDISH//のみんなに対してもこんな気持ちなわけ。きみたちには見えてるんだろうか。また来る春が。はるか遠くに咲いている花が。友達が。
さよならだけが人生ならば。
もう二度と会わないかもしれない友達のことを考える。
一度だけうちに遊びに来たことあったじゃん、鈴木。あの頃うちで飼ってた猫、気が弱くてインターホンが鳴っただけでクローゼットの奥に隠れちゃうような子でさ、来客なんてあった日にはもう一生暗いところで小さくなってたのね。いつもは。
でもあの時、突然すました顔で階段をトコトコ降りてきてさ、リビングで鈴木と鉢合わせしたわけ。逃げるかな、と思ったら鈴木の顔をじっと見つめて、でその時きみがやわらかい声で「こんにちは」って言ったの。
なんかね、あれ、魔法みたいだったよ。