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海馬と旅と私。

”生命の危機が脳をはたらかせてくれる” 
扁桃体や海馬をいちばん活躍させる状況は、生命の危機状態です。ちょっと部屋を寒くするとか、お腹をちょっと空かせるという状態は、脳を余計に動かします。寒いのは冬に入りエサの捕れない時期になるしるしですし、お腹を空かせるのは直に飢えにつながりますから。

 上記の記述は愛読書『海馬』から引用したものだ。

 私にとって、生命の危機を感じる状態、それは知らない土地へいくこと=旅である。旅はいつも、忘れられない味や、風景、人との出逢い、思わぬハプニング、新しい自分、をプレゼントしてくれる。

 2018年9月最後の3連休。私は旅仲間である友人二人と、香港・マカオ・深センへ。今回の旅で、私自身、心に決めていたことがひとつあった。

それは、”自身の海馬をどんどん刺激させ活躍させよう”ということだった。つまり、頭が良くなりたかった。

 『海馬』の第1章には以下のようなことが書かれている。

”生きることに慣れてはいけない”

 日常の生活を毎日ほぼ変化なく送っていると、やることなすことがルーティン化していき、考えなくても無意識に行動したり考えたりすることがある。例えば、それは朝の起床時間だったり、見る景色だったり、会う人だったり、食べるものだったり。ある人からみると、それは安定していて平和で、むしろ毎日変わらない生活を送ることこそが幸せだ、と思うかもしれない。

 しかし、私にとって、変化のない生活ということは、梅干しも海苔ものっていないただの白米でしかないのだ、ということに『海馬』を読んで気づかされた。

 だから、今回の旅ではたくさんの刺激を海馬に与えよう、そして生きることに慣れてしまっていた自分に一発パンチをして再び生まれ変わろう、と考えていた。

 旅先では、心の底に重く沈んでいた生きる力というものが自然と湧き上がってきた。ずっと動いてばかりで体や足は疲れているはずなのに、心はずっと踊っている。ずっとワクワクしているのだ。さらに、日本にいるときはいつも夜になるとなかなか寝付けなかったのに、旅先ではベットに倒れた瞬間夢の中へ行くことができた。

 濃くて渋くて甘くない香港のミルクティー、大きいお茶碗並々に入ったピータンと牛肉の熱々のおかゆ、唐辛子たっぷり激辛スープとトマトスープの火鍋、こんがり焼けたサクサク生地のエッグタルト、400円の北京ダック、冷めた油条をほんのり甘くて暖かい豆乳でお腹を満たす深センでの朝食、蓮の実とあずきとプレーン味の牛乳プリン、辛酸っぱい面紛。忘れられない味がまた増えた。

 今回の旅の目的=海馬を活躍させる。そのために、お腹を空かせることはできなかったけれど、代わりにたくさんの新しい刺激を海馬に与えることができたと思う。その中でも1番の刺激は、激辛火鍋で3人ともお腹を下したことだ。

 これからも、ずっと生きることに慣れたくない。

 








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