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瀬央ゆりあの中の透明な湖

 それが顕著に表れた舞台が、「龍の宮物語」だったのかなあと、録画していたものを再見して思いました。『清彦』という役名の通り、せおっちが演じる書生の彼は、清らかで優しく、嘘をつけない性分です。おそらく1,000人がいれば990人の方は清彦を、「好青年」だと評するでしょう。

 これは私が思っている事なのですが、嘘をつけない・つかない人というのは、自尊心があって強い人なのだと思うのです。なぜなら、嘘をついてまで自分を良く見せたり自分を守ったりする必要を感じていないから。だから清彦も、気弱そうに見えてその内実には燃えるような強いものを持っている人物に見えました。それが、玉姫への執着とも思える愛だったのかもしれません。

 浦島伝説を元にしているだけあって、登場人物のお衣装や化粧は独特です。みっきーさん演じる龍神火照の口紅は青ですし、龍の宮の住人達も、左右非対称のメイクであったり華やかなお衣装であったりと、日常とは切り離された空間になっています。でも、その根底にあるのはそのような煌びやかさではなく、ただ人を思い、憎み、愛するというひどく原始的で、だからこそ泣きたいくらい大切な感情だったと私は感じました。そしてその中心にいたのは清彦です。この舞台は、せおっちの中にある透明な湖に浮き上がる波紋やさざ波が、繊細に繊細に表現されていたように思います。

 初見の際にツイッターでもちょっとつぶやいた事なのですが、狂気の表し方も、動の人と静の人がいると思います。これはあくまでも私の好みなのですが、一見穏やかそうに見える人の中にある情念みたいなものに凄く惹かれるので、今回の清彦を演じたせおっちにそれを感じて、凄く心臓を鷲掴みにされました。透明な水に、墨汁が静かに流れていく感じとでも言いましょうか。きっと、その狂気にも似た愛がなければ、結局は出来なかったとしても、「本気で」玉姫を刺そうとまではしなかったでしょう。あそこの二人のやりとりは、ぞくっとしました。なんだろう、二人の感情がむき出しになって、そこにある感じ。静かに淡々と進んでいくので、余計なものが入り込む余地もなく、ただ二人の感情だけがそこにある。せおっちのその透明な狂気が凄く好きで、きっとこの人はずっと玉姫の事を思い続けながら、長い人生を生きるのだろうなと思わせられました。それがまた、切ない。もしかしたら、誰かと結婚するかもしれない。それでもこの人の心の一番大事な奥底にいるのは、玉姫なのだろうな、と。

 せおっちは、なんというか透明な中に少し黒を混ぜたような人を演じるのが似合う気がする。←単に私の好みです。分かっております。

 感情を素直に発散するタイプも好きですが、清らかで透明な笑顔の中に、重すぎる感情を持っていてそれがひょっこりと顔を出した時のラスボス感がたまりません。好き!って思います。そういう透明な湖って、多分誰もが持っているわけではなくて、燃える炎を持っていたり、お花を持っていたり、色々だと思うのです。「阿弖流為」を見た時にも感じたのですが、せおっちには、透明な湖があるような気がして、私はこの役者さんが好きだなあと思うのです。うん、透明感がある人が好きなんですよね。これからもずっと応援して行きたいですし、2月の初東上公演はぜひぜひ生観劇したいと思っております。楽しみだなあ。

 あとはこれ、ほんと私の願望なのですが、中国のドラマ「陳情令」の魏嬰を演じてほしいー!! 絶対似合う。似合わないわけがない。なんかもう、実現してもらえないと自家発電で脳内補給するしかないから、実現を本気で願っております。様々な原作物を成功へと導いてきた宝塚歌劇団なら、絶対出来ます!! 因みにね、らんじゃんも決めてるの(勝手に)。あかさん。あかさん、真っ白いお衣装似合いますよ、絶対に。師姉は、はるこさん。江澄はぴーすけくん。ほら、出来るやん。なんか、こういう妄想している時に、本気で石油王になりたいと思いますよね。頑張ろ(え? 石油王になるの、あなた)。


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