アジア太平洋ギフテッド教育研究大会を経て改めて気づいたSEMや拡充の諸々。
8月16~20日に、香川大学で開催された第18回アジア太平洋ギフテッド教育研究大会(APCG2024)に、ワークショップ・スピーカーとして、そして運営スタッフとして、参加してきました。
アジア太平洋ギフテッド教育研究大会については、私の下の過去記事でも説明していますので、よろしければご覧ください。
みなさんに応援していただいたクラウドファンディングのページ(下記)には、実行委員長である愛媛大学の隅田学先生が大会についてやギフテッド教育について詳しく解説してくださっていますし、実行委員の先生方の思いも掲載されています。
今大会は国際大会なので、すべて英語で行われたのですが、そのなかで唯一日本語で行われるワークショップというのを私(知久)が担当させていただきました。素晴らしい機会をいただけて心から感謝しています。
ワークショップでは「家庭で実践できる拡充三つ組モデル」をセミナー形式でじっくりと紹介し、そのあと実習として、高度な思考スキルや創造性を楽しく伸ばすアクティビティなどに取り組みました。私たちが運営する学び場『おうちSEM SQUARES』でも実践しているアクティビティですが、経験豊かな大人の参加者のみなさんの発想力や創造性は子どもたちのそれとはまた一味違い、ユニークかつ洗練されていて、非常に興味深かったです。
また、今回のワークショップでは、学校でも今すぐ取り入れることができる拡充のアイデアを、少しですが、初めて紹介してみました。
これまで私は、家庭(=学校外)でも応用できるであろう拡充三つ組モデルを調整した「おうちSEM」を主に紹介してきましたが、逆にそれしか紹介してこなかったが故に、「SEM=拡充三つ組モデル」だと印象付けてしまったように思います。
拡充三つ組モデルは、確かにSEMの中心的要素ではあるのですが、そのカリキュラムモデルに沿わなくても行える拡充の数々や、その拡充をより効果的に行うための個別最適化(differentiation)の手法もまたSEMの大事な一部で、それらを学校全体(=全校)で行いながら、教師も含めた全員にとって楽しい学校環境を目指していくのが全校拡充モデル(=SEM)なのです。
拡充三つ組モデルは、それ単体でも導入しやすいカリキュラムモデルだと私は思うのですが、確立されたものだからこそ日本の学校では逆に取り入れにくいのかもしれない、、とここ数年紹介してきて感じるようになりました。もしかしてそれよりも、SEMの中で行われているもっと小さな拡充、例えば授業そのものを大幅に変えなくてもよい、「ちょっとした工夫」として簡単に取り入れやすい拡充の手法を紹介したほうが、受け入れられやすいのかも・・と考えました。
ちょっとした拡充は、ギフテッド教育に特化したものではなく、アメリカの一般的なクラスルームでも取り入れられています。息子が通った小学校~高校でも、教科を問わず、小さな拡充が散りばめられていました。面白くてワクワクする課題だと私は思いましたが、逆にめんどくさい、、と感じる生徒もいたようです。何を学んでいるのか不明瞭になってきたり、「そんなのは深めなくていいから早く先に進んでほしい」と息子も思ったりしたことがあるそうですから、「なんでもかんでも拡充!」というのもまた違うのでしょう。
なんでもかんでも拡充しなくてもよいのですが、それでも今回ワークショップで紹介した拡充の手法「curriculum enrichment infusion」というのは、味気ない授業を豊かにする「小さな拡充」として学校でも取り入れやすいだろうと思います。アメリカのCommonコアや日本の学習指導要領は今すぐには変わらないので、可能な範囲でアレンジしていくという拡充です。レンズーリ先生曰く、教師がクリエイティブになり、通常の授業内容に風味豊かに味つけ(スパイスup)するイメージです。
上のスライド内のアイデア例のように、少しの工夫や「小さな拡充」をカリキュラム(教育課程)に取り入れることでも、拡充の効果は十分発揮されるでしょう。
SEMについて、これまで何度もお話させていただきましたが、学校外、つまり家庭で実践できるギフテッド教育の拡充として「拡充三つ組モデル≒おうちSEM」ばかり紹介してきたものを、今回初めてSEMの根幹である「拡充」について少しお話できたことが、私自身にとってとても有意義であったと感じたアジア太平洋ギフテッド教育研究大会(APCG2024)でした。
総合学習の教科書がないことで学校の先生方が非常に困っているといった現場の声や、SEMが学校で導入されたらどんなによいか・・といった嬉しい感想もいただき、私たちの目指す方向性が少し定まる機会になったようにも思います。
コネチカット大学と同じくギフテッド教育研究で歴史あるパデュー大学の研究者の方とは「アメリカではギフテッド教育から才能伸長(タレントディベロップメント)にシフトしてきている」ことを再確認することができました。「日本にはアメリカの過ちを犯してほしくない」ともおっしゃっておられたのが印象的でした。
私自身は(不器用なこともあり)スタッフ業務で心身バタバタし、結局ほかの方の発表をほとんど見られずに終わってしまったのですが、それでも素晴らしい出会いが多々あり、懐かしい方々とも再会し、興味深いお話も沢山聞けて、とんでもなく充実した、楽しい1週間を過ごすことができました。
今大会では、写真家志望の息子も専属カメラマンとしてボランティアさせていただきました。暑さと慣れない環境や業務で体調を崩しつつも、息子は現場が楽し過ぎて毎晩「終わってほしくない~」と嘆いていました。親子で素晴らしく貴重な経験をさせていただいたことに心から感謝しています。
今後ともよろしくお願いいたします😊
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