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【中編/地域リーダーへのインタビュー⑤】にいがたイナカレッジ:井上有紀さん ~楽しむ力・話を聞く力が人を惹きつける~

【中編】


4.経験から得られた考え方

――新潟暮らしでの様々な経験を通して、得ることができた考え方や人生の資産はどのようなものがありますか。

井上さん:
東京にいたときは、優秀でいなければいけないなどの一つの価値軸で自分も周りも評価していました。
しかし、新潟のツルハシブックス(当時)という本屋さんには、やりたいことがこの場でできる、をテーマに集まった人々がいて、最初はこれまで会ったことがないタイプの人たちに対して戸惑いましたが、話してみると皆さん素敵な方々で、立場や肩書では判断できないんだなと思いました。そこから一つの物差しで頑張らなくていいという考え方がベースになりましたね。

地方では身の回りの楽しみを自分で作る人に多く出会いました。
大きなシステムはなかなか動かせないけれど、生活の中で小さく楽しいものは自分たちで作っていける。それは全く仕事につながらないわけではなく、人脈づくりや社会資本としてどんどん増えていく。そういった何でも自分で作るという考え方も得られました。


5.学生が持つ力とは

――学生と地域をつなぐコーディネーターとして、今最も力を入れていることは何ですか。

井上さん:
力を入れていることは、もっと学生が地域に関わる機会を新潟で作りたいので、コーディネーターに近い立場で一緒に仕事をしてくれる仲間作りです。参加側でも受け入れる側でもない、受け入れ時期を考えたりプログラムを作って募集したりするつなぎ役が今あまりいないので、増えたらいいなあと思います。
あとは、学生時代の地域での体験が、学生にとってどんな意義があるのか、模索・追究したいと思っています。

――学生が地域に行く価値は何かありますか。

井上さん:
まだ何も知らないということですね。
地域においては知らないことが逆に価値で、知りすぎているがゆえに言いづらいことや、関係性が固定されてしまって言いづらいことも言える。それは地域にとっての新しい風になる。新鮮な大学生の反応も地域にとってはとてもいいですね。

大学生側も、進路に悩む期間に、同じ世代の同じ環境で育った人とばかり会うよりも、多様な人と会って多様な価値観に触れておくと視点が広がる、視野が広がると思っています。


6.井上さんが考える地域リーダーとは

――井上さんにとっての地域リーダーとはどのような存在ですか。

井上さん:
いろいろな市町村に新しくプロジェクトの説明や打ち合わせに行ったときに、たまに理想的だなという人に出会います。その人たちのどこを見ているかというと、バランス力ですね。
例えば、地域への思いにあふれていて熱量があっても、それだけでは動かせないこともある。鳥の目線と草の根の目線、遠くを見たり地域全体を見たりしながらも、この人はこれが得意だから、明日はこれをしなくちゃならないから、と両方を行ったり来たりできる人がいると心強いです。また、熱量と冷静に分析し知識を集めるバランスも大事だと思います。

あとは楽しんでいる人。
地域のために対策をしていても、本人が難しい顔をしてあまり楽しそうじゃないと、周りの人が惹きつけられないし、この人は地域が好きなんだな、と思える部分がないと、どこかでつぶれてしまうのではないかと不安に感じます。
 
――センター長さんを尊敬しているとおっしゃっていましたが、どんなところを尊敬していますか。

井上さん:
センター長さんにも、バランスと楽しむ力は備わっていますね。
地域に住んでいる人がやりたいと言っているか、その人たちが幸せになるにはどうしたらいいかを考えてくれることですかね。仕事では、予算や立場の関係でどんどん話が本質的じゃなくなることが多くて、そんな中でも誰のためにやっているのかという原点を大事にし、忘れずにいてくれるのがいいところだと思います。


(記事は後編へ続きます!)
【後編】
7.地域の課題解決に興味を持つ学生に向けてのアドバイス
8.インタビューを通して考えた理想の地域リーダーとは
9.インタビュアーをしてみての気づき
10.今後の自分に生かしたいこと

前編はこちら)
【前編】
1.今までの活動を通して実感したこと
2.自分を動かす原動力
3.就職する決断のきっかけ


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