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天下取れることをやれ 【経済 山田 俊皓先生】

記:2019年3月9日

そろそろどのゼミにするか真剣に考える人も増えてきたのではないでしょうか。

今回は、昨年から一橋大学でゼミを持たれている経済学部の山田俊皓(ヤマダトシヒロ)先生にインタビューしました。先生の学生時代から研究テーマ、さらに一橋の学生に思っていることを聞いてみました。

■「このままじゃヤバい」遊び続けた2年間から一転、数学で“遊んだ”2年間


ーー本日はよろしくお願いします。

こちらこそよろしくね。参考になるかな。

ーー大丈夫です!山田先生は学生時代、何に力を入れていましたか?

1・2年のときは・・・うーん・・・
・・・遊んでてあんま記憶ないな(笑)

ーーそうなんですね。正直、親近感わきます。

でも、2年生の途中から「これはまずいな」と思い始めて。
数学が好きやったから、そこからは数学を必死に勉強したよね。

ーー必死にですか。

まあ必死にというか、大学の数学を基礎からめっちゃやったよね。
でも、キツイという気持ちはなくて、むしろ凄く楽しかった。「勉強している」という感覚もあまり無かったね。

数学系の授業の単位も取ってはいたけど、あまり単位とか気にしてなかったかな。数学って、「至高の遊び」みたいなところがあるじゃないですか。そういう感覚で、大学の数学をやってたかな。まあだから、2年の前半までは遊んでた記憶しかないし、2年の後半以降は数学やってる記憶しかないね。


■スポーツの道からファイナンス・確率論の道へ

もともと数学が好きで、大学でも学ぼうと思っていたのでしょうか。

それを言うと、高校生のときはめっちゃサッカーをやってたんですよ。
だから、高校時代は全然勉強をしてなくて。
「サッカー辞めて、何しよう・・・そういえば数学は好きやったから数学使って何か実社会でやれることやろ」と思って、立命館大学の文理総合インスティテュートにしたかな。

大学でサッカーを続けなかった理由はなぜでしょうか。

「高校でやり尽くした」というよりは「もっと違う道で生きよ」と思ったかな。俺の高校(京都・東山高校)は全国にも出るような体育会が強いところやったから、想定されるシナリオとしてはサッカー続ける選択肢はあったよね。

ただ、「流石にもう無理やな」と思って。体育会で天下を取ることは、恐ろしく難しい。さらに、スポーツで飯食うのは難しい。そしてスポーツで天下取るのは、遥かに難しい。当時サッカーを辞めた後は、いろいろ考えることがあったかな。

そしてファイナンスの学科に入られたんですね。

そやねん。ファイナンスを専攻してたんやけど、理工学部の数学科の授業とか、確率論研究室のゼミにも参加できたんです。

そこで、数学の先生と出会って色々学ぶことができた。数学って、自分1人でやると出来た「気」になるけど、数学者が一目見ると「ここはおかしい」って一発で分かるねん。その作法みたいなものを、大学では教わったかな。

出会った先生の影響は大きかったですか?

めっちゃ大きかったね。あの大学入らなかったら、多分数学を本気でやってなかったかもしれないし、今みたいになってなかったと思う。

学部生から見て「大学の先生=授業してる人」ってイメージあるやん。
もちろん俺も学部の時は授業をとって基礎をもくもくと勉強してたんやけど、その先生は授業以外のところで「大学での研究とは」とか「こういう勉強したらどういう道が拓けてどういうプロになれる」、「今はこういう流れが注目されてる」とかをその時々の勉強内容と絡めてうまく伝えてくれた。それは授業で単位を取るだけの勉強から得られるものとは明らかに違ったよね。そやし、早い時期から授業とか単位とかでなく「大学の研究」みたいなものを漠然と意識できたかな。

大学院(東京大学・経済学研究科)の時も影響受けましたね。大学院の時の先生は圧倒的なオーラを持ってはるグレートティーチャーって感じやった。先生は金融業界でもカリスマだった方なので、発想とか豪快さが今まで会った人とちょっと違ったかな。実務感覚というか応用数学に取り組む心構えというか。金融マンとしても金融工学者・数理ファイナンス研究者としても
プロの匂いがぷんぷんしてましたね。

今思えば、大学、大学院のときの先生から影響を受けたのは、 先生らがその分野の世界の一線で戦ってる人やったからやと思う。 そういう先生は、考え方・発言一つ一つが興味深く面白いし、 人間として大きいので尊敬できます。

■クオンツ時代に「数値解析」にのめり込む


ーー先生の研究テーマは「数値解析」で合っていますか?

まあ、そうやね。専門は確率数値解析やな。ただ研究のモチベーションはやっぱりファイナンスで、具体的な応用としては金融商品のプライシングだったり、金融機関のリスク管理に用いる数理的手法の研究をしてますね。

ーー大学からずっとそのテーマを研究していたのでしょうか。

いや、大学の頃からバリバリ数値解析ってことはないで。数理ファイナンスは専攻してたけど。数値計算系の本格的な研究は金融機関にいた時からやな。金融機関の研究所みたいなところで働いてたんやけど、その仕事が影響したかな。

ーー三菱UFJトラスト投資工学研究所で働いていたんですよね。

そうそう。サラリーマンになって、「金融商品の価格はいくらだ」とか「そのリスクはどれくらいあるのか」とかをプログラム組んで計算する仕事をメインでやってたね。金融機関では業界特有の数値計算の要請があって。その延長で、今の研究をやってるかな。

ーー大学時代から学者になろうと考えていたんですか?

まっっったく、思ってない。だって、サラリーマンなってんねんで。学者になれるとも思ってなかった。博士はいずれ取りたいなとは思ってたけど。博士に通って、研究している最中に「あ、これ面白いから、この道で飯食えたらな」とかは考えたかな。研究には興味あったけど、教育には全く興味なかった(笑)

ーー興味なかったんですね(笑)

だって、人に教えるほど俺偉くないし(笑)今でこそ教えてるけど、当時は教育なんて全く考えてなかった。

ーー大学院にはどうして進まれたんですか?

金融機関の仕事、クオンツ系に就きたいなとは思ってたから、「大学院行って勉強しよ」とは考えてたね。あと純粋に自分が当時やってた勉強の先端が知りたかった。大学院のときは、ファイナンスとか数学・物理系の人達と数理ファイナンスと確率解析の研究してたね。

(注)クオンツとは:
「Quantitative(数量的、定量的)」から派生した用語で、高度な数学・物理学を用いて、市場動向や企業業績の分析・予測、投資戦略や金融商品の開発・考案を行う数理分析専門家のこと。(引用:https://gaishishukatsu.com/archives/5742)

ーー研究でいったい何をしているのか、良く分からないです。。。

それ、説明するの難しいよね。まあ少し硬く言うと、

「ブラウン運動でドライブするような微分方程式の解の期待値やら確率分布を高速に計算する方法」

をやってるんやけど。

なるほど(分からん)

なんやろな・・・うーん・・・
きみ、ワンピース読んでる?

大好きです。

イメージしやすい例だと、「ルフィのギア4を5にする」みたいな感じ。要は、数値計算の遅いところを、ブワーッと高速でやるために、1段ギアを上げる計算法作る研究をしてます。

これが出来ると、金融の現象を表現する数理モデルがどんなに複雑になっても、よりスピーディに、より効率的に、プライスやリスク量を見積もることが出来るようになる。

ーーなるほど(分かりやす過ぎる)

数学自体はすごく難しいけど、やってること自体は取っ付きやすいと思うで。「今まで既存の~って方法あるけど、これがギア1つ上がんねや!」みたいなことやし、大学院で勉強してる院生も実感しやすいんちゃうかな。

■理論と応用の両輪を大切にするゼミ

山田ゼミは去年始まったばかりですが、振り返ってみていかがでしたか?

え~、どうやろ(笑)。学部ゼミだと、何を教えたら良いのか分からないところはあるよね。というのも、色々な人がいるじゃないですか。「取り敢えず体育会だけど来ました」みたいな人から「けっこう本気で数学したいんです」という人まで。

ーーゼミ生は何人いるんですか?

17人やね。その人達みんなが大学院に行ったり専門的な勉強をするわけではないので「数理ファイナンスの入口となる部分を、少しでも面白く感じてくれたらな」って感じでゼミやってるかな。


ーーちなみに、ゼミでは機械学習などもやられているんですか?

機械学習も触れるけど入門みたいなところやね。ファイナンスにしても機械学習系にしても数学部分をある程度やった後にプログラミングの演習みたいな形式でさせてます。その方がいいかなと思ってて。というのも数学はさ、俺自身やってたから分かるねんけど、数学は本気で基礎からやらんかったら、あんま意味ないねん。

だから、理論やるんやったら、時間かけてほんまにやらなあかんねん。だけど、それをゼミの皆さんにそれをバリバリ強要するのもなんか違うかなーと思うから「プログラミングを使うことで、理論で難しいものがこんな感じで動くんや」って感覚として分かってくれたらいいかなと思ってる。

ーー言語は何を使うんですか?

Rやね。来年度はPythonでやるかもしれない。

ーー理論をガッツリやりたい人、そうでない人に分けて、理論と実践の塩梅をうまくつける感じですね。

そやね。数学に明るくてもっと理論やりたい人もいるから、そういう人達には『裏ゼミ』でゼミの正規じゃない時間で教えてんねん。単位に加算されるとか関係無く、もう少し勉強したいやつに付き合ってるって感じかな。基本4~5人で、ゼミの時間終わったあとやってますね。院生も呼んだりして一緒に勉強してる。

ーそれは先程の例でいう「ギア4から5」の方法について勉強するんですか?

いや、学部レベルじゃ全く無理ですね。
「院生のM2までにかなり頑張れば、何とかギリギリ間に合う」っていう感じやな。

ーーそうすると、『裏ゼミ』ではどんなことを学ぶんですか?

裏ゼミでは、数理ファイナンスの基礎となる数学をやってる。結局、その「基礎」が分からへんと、「その先」に行けへんのよね。だから、理論となる数学はしっかりやる。

ーー普段のゼミはどんな流れでやりますか?

今年は試行錯誤やったからなー。最初は俺がファイナンスの数値計算のテキストを選んだんやけど、けっこう皆サクッとプログラミングとかやってくるので夏までに読み終えたよね。夏以降は各々やりたいテーマをやってもらいました。

応用に近い機械学習をやりたい人もいれば、俺がやっているような数理ファイナンスの理論を深くやりたい人もいるし、ゼミの人数も多いから、応用班と理論班2チームに分けたんです。応用班は最適化数学の数値計算を、理論班は前期に習った数理ファイナンスの基礎を、より深く学ぶっていう感じやね。

要するに、前期に皆で1冊、後期にチームごとに1冊読む。ゼミではチームごとに発表させるから、それぞれのチームはもう片方のチームの本の内容をコピーして、ゼミ全員で見るようにしましたね。

ーー理論と応用のお互い知らないことを共有し合う、という感じですね。

そんな感じやね。

ーー応用班のテーマは金融に絞っていますか?

いや、全然。例えば、バイトの最適なスケジューリング作成のプログラミングとか文系っぽいテーマも全然あり。ゼミでは「そういうとこの数理的な方法も少しは知ったらどうですか」みたいな感じやな。あとは、各々がやりたいテーマをやっていく。

ーー4年次に何をするのかは考えていますか?

来年度始めはとりあえず就活案内というか、例えば、実際に企業の人を呼んで機械学習がビジネスの現場でどうやって使われているのかを説明してもらうことも検討してんねん。みんな就活あると、学校来なくなるやん。それならいっそ、企業の人呼んだ方が、ギリギリ来るんじゃないかって。

ーー学生としても、そちらのほうが有り難いです。

やっぱりそやろ?一橋の卒業生とかも呼ぼうと思ってる。4年の途中からは卒論のテーマを各々がやってくことになるんちゃうかな。

ーかなり脱線しますが、一橋の教員でサッカーをすると聞きしました。

そやで。俺、「教職員サッカー部」に入ってんねん。

ーー「教職員サッカー部」があるんですね。 

職員の方が多いけど、商学部だと筒井先生とか入ってはるで。法学部とか社学部の先生もいはる。ちなみに俺、得点王やで。これ記事に書いといてや。

(お茶目だ)


■一橋生には「天下取れること」を見つけて欲しい

ーーゼミに入る学生や一橋生に、大学で何をして欲しいですか?

天下取れることをして欲しい。

ーー天下取れること、ですか。

当たり前やんな。これは、本音の話で。「お前ら天下取るの勉強やろ」と思うけどね。サッカーでも野球でもスポーツの世界の人は18歳からその道のプロに入って死ぬほどやってんねんで。けど、大学は勉強のプロ養成機関やから。それはね、めちゃくちゃ選抜されとる訳なんやから。

ここでプロになれるもの、天下取れることをやったほうがいいよね。それは勉強やろ、と。一橋はめっちゃいい環境を提供してる大学やねんから興味あるもの見つけていっぱい勉強した方がいい。と僕は思う。

ーー学生だと「興味があるかどうか」よりも「単位が取れるかどうか」を気にしてしまいます。

単位取れるかなんて、どっちでもいいやん。もちろん、いい成績取った方が絶対いいし、卒業要件は満たさなあかんねんけど、単位取ることより大事なことあるやろ、と。あと、授業はあくまできっかけを与えるために過ぎない。正直週1,2コマの授業で出来ることなんて少ないし、限られてるわけやん。

だから、単位取れたからって「よし、俺あの学問わかった!」とはならないわけで。あとは自分で勉強するものだからこそ、自分の好きなものを見つけて、 天下取れるものをやったほうがええと思う。

ーー先生がそこまで仰る理由はなぜでしょうか?

この大学の人は天下狙えると思うから言うねん。その素質があって、一橋に来てるんやと思うから。だからこそ、もし入ってから勉強やる気ない人がいるんやとしたら「何でそれを放棄しちゃうの?」って思う。もったいないなあって。

この大学、就職がいいから、そこを見えにくくしてるのかもしれないけどね。けど大学名使えるのなんて就職の入り口だけやから。社会なんて世知辛いっすよ、まじで。程よく社会は優しいけど、程よく社会は残酷やから。

ーー「残酷」というと・・・

社会は完全な生存競争ですからね。入社するときにあれほど新入社員がいる中でそこから凄まじい生存競争がスタートするわけですよ。人だけでなく企業も業界も長い年月かけて競争する。自分も学生の時そうでしたけど大学生って30代前半くらいの自分しか想像してないじゃないですか。

「年収がいくら欲しい」とかいうのも、大抵30代前半までの自分じゃないですか。でも、人生はそれよりも遥かに長いですからね。30歳まではまだまだ若手ですけど、そこから先はいろんな要素が絡んで状況がどんどん変わる中過酷な長いバトルがあるわけで。

そういうときに何か尖ってるものを、「飛び道具」みたいなものを身につけていないと無理やから、大学ではそういうものを身につけてほしいと思う。それは、絶対やったほうがいい。そして、それが好きなものであった方がいい。好きなことじゃないと、結局続かへんから。

ー商学部や経済学部だと、どうしてもゼミを就職の延長線上に考えてしまいがちです。

なんやろなー、そのノリ。将来のことを考えるのは大事なことやと思うけど、もし就職の噂とか流行とかネットの何かの情報に左右されて決めてるんやったらしょうもないよね。

みんな今の流行みたいのに殺到するじゃないですか。この大学の人、要領いい人も多いと思うし、一時的にはうまくやるのかもしれへんけど。ただ、ゼミとか就職とかを流行か何かで決めてしまっても、そんなのずっと続けるなんておもろくないし苦痛やで。

「ちょっとあの業界給料いいから受けよ」とか。ホンマに好きなら、それもありやけど。好きなことなら続けていけるし、本当になんとでもなるからな。と、俺は思うけどね。とりあえず好きなことをやったほうがいい。

ー大学で自分のやりたいことを見つけられない人も多いと思うんです。そういう人にアドバイスはありますか?

俺、好きなものない人なんていない、と思うねん。これまで生きてきて。あまり人の意見とか聞かずに、流行に流されずに、「やっぱりこれ好きや!」と思えるものやったほうがいい。天下という言葉にもいろいろな意味があると思うんやけど、自分なりに考えて目標を立てて、やりたいことをやることなんちゃうかな。

「大学の勉強は使えない」って考える人もいると思うけど、俺はそれ浅いなあと思う。使うためだけに大学で学んでるわけじゃないし。人生を生きていく中での考え方やったり、そういったものを身に着けるのも大学の勉強やと思う。大学で講義受けたり本読んでたら、いろんな考え方や学問に出会えるはずやし、その中で好きなものとか面白いと思うことをこだわってやったほうがいい。

大学の勉強でしか出会えへんものなんていっぱいありますよ。ほんで、やるんやったら基礎から徹底してやったほうがいい、と思うけどな。いろんな形があると思いますけどね。ただ、好きなことやってへんやつとか基礎をやってへんやつはプロなれへんねん。

ーー理論を学んでいないと「その先」に行けない、という話に通じる気がします。

本当にそのとおりで、多分こういうことを、教養的な意味で勉強できるのって大学だけだと思うんですよね。大学の4年間しかないと思う。君たちも後々社会人になって分かると思うけど、こんな自由な4年間ないですよ。ほんま貴重です。まあ、やりたいことがほんまに勉強ではない人は勉強じゃなくてもいいけど・・・

けど、くどいけど、この大学入った人は勉学の才能というか、その素質がある人やと思うねん。だから自然に、そこが考えられる道やと思うんよね。勉強全く苦手な人、この大学入れへんと思うし。

ーーそれでは改めて、どんな人にゼミに入って欲しいですか?

うーん。そうやなあ。…ってこんな偉そうなこと言っておいて、大学2年まで全く記憶ないからなあ(笑)けど、流石に2年の君らくらいのときに「この先飯食っていけへんちゃうかな…」って焦ったよね。だからこそ、めっちゃ数学をやったよね。でも苦痛じゃなくて、単純にそれが面白かったからやったし、続けられた。だから数学に抵抗ない人はそういうものを感じられると思うのでぜひ入ってほしいし、 野心ある人は大いに歓迎って感じ。

あと、金融工学はホンマに必要だから出来た学問っていう側面もあるわけやから、経済学があまり好きじゃない学生でも面白いもの見つけられると思いますね。「経済学がいま面白くないんですけど、数学を実社会に生かすことに興味持ってきました」っていう学生も向いてると思うし、そういう人も歓迎です。

数学に抵抗ないなら、何でも出来ると思うので。金融工学は「使えるかもしれませんよ」とかそういうレベルじゃない。 リスクをコントロールする上で絶対に世の中に必要なものだから。

ーー実社会で使える学問、ですね。

そやね!ただ、使えることばっかやるのも面白くないし。もちろん俺も就職は考えてたから「使えることも勉強しないとだめやな」 とは思ったこともあるんだけど。

でも一方、不思議なもので。現在使われている金融工学とか数理ファイナンスの基礎となる数学を確立したのは、京都大学理学部・数理解析研究所の伊藤清先生(故人)の功績です。

第二次世界大戦中・戦後すぐに、確率解析学の基礎理論を作った方なんやけど、伊藤先生は当たり前ですがファイナンスのためにそれを作ったわけでは全くなく、純粋に数学として研究されたわけです。

でも、それが何十年かしてファイナンスに応用されている。俺の私見も入るけど、面白いのはその数学が
「ファイナンスのリスクヘッジのためにあったんちゃうか」と思わず錯覚するくらい見事にファイナンスの理論にフィットします。今ではファイナンスが確率解析学の一大応用分野として認識されてるし、そういう数学が金融実務の技術を支えてる。

そして、その中核を成す確率解析学を理解するには地道な修行が必要です。だから金融工学とか数理ファイナンスの基礎を勉強しようと思ったらファイナンスに一見関係ないような数学の基礎もしっかりやらないとダメです。

そうしないと応用のことも分からなくなってしまう。だから、そういう意味で理論の勉強も大事。僕はそういう理論の勉強を純粋に楽しくやれた。数学が好きな人ならそういうことも楽しみながらやれると思います。

勿論、「お金稼ぎたい」みたいな人も大いに歓迎です。その一方で、それだけではなく、背後にある理論を純粋に数学として、じっくり腰据えて勉強したい人は、僕のゼミに向いているんじゃないですかね。

ー数学に真摯に向き合える人は、凄くいい環境ですね。

そやね。僕が数学を苦じゃなくやれたのも、あれほど面白いものはないんちゃう、と思うからです。数学は「至高の遊び」やと思うので。そういうことがやりたい人も歓迎ですよ。

本日は本当にありがとうございました!

--------------------------------------------------------------------------------------文責:森川(商・2年) 喜多村(経済・2年)

■インタビューをしてみて

森川 龍:
一橋大学商学部2年 SmartHRで2018年4月から2019年3月までインターン。
大学では国際部ディスカッションに所属。

とても親しみやすく、話している姿は「関西にいる元気いいお兄ちゃん」のようでした。その一方で、複雑な事象をシンプルに言語化してくださり、数理ファイナンスの世界に不思議と引き込まれていました。

冗談をいう姿も、一橋生にむけた熱い想いを語る姿も、どちらも魅力的だなと思うインタビューでした。

改めて、本当にありがとうございました!

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