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680万部超えシリーズの新たな展開『ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~』(三上延)【読書ログ#165】

表紙に子供が登場している。そもそものシリーズでは、古書の達人である主人公の娘と、偉大なる古書マスターである母親との確執が物語の芯になっていた。さらに、そこに本を読む娘が登場ということで、これはもうドラゴンボールのような展開になるのかなと思ったら、全然、そういう話ではなかった。脳内に組み込まれている物語のフレームワークが、ほとんど少年ジャンプで出来ているので、どうしても子が親を超えていくバトルモノを想定してしまう。「私の買取価格は53万です」「!?」。

これまでの紹介は下記からどうぞ

食わず嫌いは良くなかった『ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~』(三上延)【読書ログ】

突然の巨乳推しに戸惑う『ビブリア古書堂の事件手帖(2) ~栞子さんと謎めく日常~』(三上延)【読書ログ】

どうしても思い出せない絵本がある『ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~』(三上延)【読書ログ】

シリーズも中盤にさしかかった『ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~』(三上延)【読書ログ】

『ビブリア古書堂の事件手帖5 ~栞子さんと繋がりの時~』(三上延)【読書ログ】

往年のミステリーのような『ビブリア古書堂の事件手帖6 ~栞子さんと巡るさだめ~』(三上延)【読書ログ】

最後はシェイクスピア!『ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~』(三上延)【読書ログ】

なにせ同じ登場人物で、基本的には同じ流れで話が進むシリーズものを一気に読んだものだから、楽しんで読んでいるわりに、だんだん書く事が無くなってきているのがよくわかる。古書をめぐるミステリーや蘊蓄がわりに面白くて、その部分を取り上げたいのだが、あまり書くとネタバレになるし。

本シリーズ、栞子を特に理由もなく巨乳キャラとして目立たせるという中途半端な味付けがされており、これは大失敗だろう。物語にも影響しない、宙に浮いた巨乳推しは読んでいて気持ちが悪い。残念ながら、作品の質を少し下げた。

オタク層にすりよっておきたいという気持ちはわからないでもないが、そのせいでAmazonのレビューにとても下品なコメントが並ぶ事もあり、これでは気味悪がって離れていく人も多いだろう。残念。

売れるかどうかもわからないときに、なにかしらキャッチーにしておきたいという気持ちはわかるけどね。思った以上に古書をめぐるミステリーの出来が良すぎて、それゆえのヒットとなったのだろうけど、それを見越してオタク受け要素を控えめにするなんてのも勇気が居るだろうし。

さて、シリーズ完結後の短編集も出ているのでそれも読みますよ。

『ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~』(三上延)

シリーズでは語られなかった物語を、子どもに昔話を聞かせる体で紹介するという流れ、短編4本。

第一話 北原白秋 与田準一編『からたちの花 北原白秋童話集』(新潮文庫)
第二話 『僕と母さんの思い出の本』
第三話 佐々木丸美『雪の断章』(講談社)
第四話 内田百閒『王様の背中』(樂浪書院)

相変わらず趣味の良い選書で、蘊蓄を読んでいて楽しい。

今後も続ける気があるそうなので、楽しみだ。このシリーズ、子供が中学生位になったら読みそうなので、とっておこう。

「それって有意義だねぇ」と言われるような事につかいます。