最先端半導体技術センター(LSTC)とは?学術界によるラピダス支援団体💡
一言で言えば…
日本の半導体産業の再興と次世代技術の開発を目指して設立された研究機関です。LSTCは、ラピダスや東京大学などの主要な組織が参画しており、国内外の最先端技術を融合させることで、世界をリードする半導体技術の開発を推進しています。
本記事では、LSTCの設立背景、目的、活動内容、及びその意義について詳しく説明します。
概要
まず、LSTCの概要は以下の通りです。
設立年月日:令和4年12月21日
理事長: 東 哲郎 (Rapidus(株)取締役会長)
組合員:Rapidus(株)、物質・材料研究機構、理化学研究所、産業技術総合研究所
準組合員:東京大学、東京工業大学、東北大学、筑波大学、高エネルギー加速器研究機構、名古屋大学、大阪大学、北海道大学
事業の概要:2nmノード以細の次世代半導体の短TAT製造技術の開発
拠点は、”東京都千代田区麹町3-3-8 麹町センタープレイス”です。
組織構成
LSTCは国研、大学、ラピダスが主体となって設立されています。以下が組織構造です。
大学としては、東京大学、東北大学、大阪大学、国研としては、産総研、NIMSがはいっており、ラピダスの研究開発を支える構成になっていますね。
なおこのほかにも組合員として、北海道大学、筑波大学、東京工業大学、名古屋大学、広島大学、九州大学が加入しています。
設立背景と目的
1980年代、日本の半導体産業は世界をリードし、世界市場で大きなシェアを占めていました。しかし、日米半導体協定などの影響により、国内半導体産業の勢いは減退し、その後、韓国や台湾の企業が台頭しました。この状況を受けて、日本国内の半導体技術者数も大幅に減少しました。1999年には19万4000人いた技術者が、2020年にはその約6割が減少したとされています。
このような背景の中、LSTCは従来性能を凌駕する2nmノード以細の半導体を短TAT (Turn-Around-Time)で製造可能とするために必要な回路設計・デバイス・製造・装置/材料技術を策定し、組合員や外部機関と連携して要素技術研究を実施、研究成果の実用化を行うために設立されました。
また、国際連携により開発が見込まれる短TATかつ2nmノードの製造技術・パイロットラインを活用しつつ、国内外機関と連携して、製品化に向けた設計・デバイス・製造・装置/材料技術を開発することで国内の半導体産業エコシステムを構築することを実用化に向けた方向性として定めています。
LSTCの主な活動内容
LSTCは、以下のような具体的な活動を通じて半導体技術の進化を推進しています。
1. 技術者の海外派遣と育成
LSTCは、国内の大学院生や半導体設計・開発に携わる技術者を対象に、アメリカの新興企業テンストレントに派遣するプログラムを実施することを発表しています。テンストレントは、アップル出身の設計者が設立した企業であり、AI向けのCPUやアクセラレーターを開発しています。
派遣された技術者は、テンストレントで1〜2年間、AI推論や学習に使う演算用半導体の設計業務に従事し、その後日本に帰国して通信や自動車関連企業、研究機関での就業が見込まれています。
このプログラムは、5年間で200人の技術者を育成することを目標としています。また、経済産業省からの補助金により、研修や派遣期間中の生活費が支援されます。
2. 半導体技術の研究開発
LSTCは、最先端の半導体技術の研究開発を行っています。ラピダスとテンストレントは、AI向け半導体の開発でも協業しており、消費電力を抑えた高性能な半導体の開発を目指しています。この協業により、米国のエヌビディアよりも効率的なAI向け半導体の実現を目指しています。
3. 産学連携と教育プログラムの整備
LSTCは、半導体技術者の育成を目的とした産学連携を推進しています。熊本大学では「半導体デバイス工学課程」を開設し、大学内にクリーンルームを設置するなど、実践的な教育環境を整備しています。また、北海道大学でも半導体技術者育成のための推進本部を設立しました。
さらに、米国のマイクロン・テクノロジーや東京エレクトロンなどの大手企業も、日米の大学と協力して教育プログラムを整備し、先端教育のカリキュラムを策定しています。これにより、日本の半導体教育のレベルを米国並みに引き上げることを目指しています。
LSTCの意義と今後の展望
LSTCの活動は、日本の半導体産業の再興にとって極めて重要です。以下の点において、その意義は大きいと言えます。
1. 技術者の育成による産業基盤の強化
技術者の育成は、半導体産業の基盤を強化するために欠かせません。LSTCの派遣プログラムや教育プログラムは、次世代を担う技術者を育成し、日本の半導体産業の競争力を高めることに寄与します。
2. 産学連携による技術革新
産学連携による技術革新は、半導体技術の進化を加速させます。LSTCの活動は、大学と企業の連携を促進し、実践的な教育と最先端の研究開発を両立させることで、技術革新を推進します。
3. 国際協力と技術交流の推進
LSTCは、米国のテンストレントとの協力を通じて、国際的な技術交流を推進しています。これにより、グローバルな視点での技術開発が可能となり、日本の半導体産業が国際競争力を持つことを目指しています。
結論
最先端半導体技術センター(LSTC)は、日本の半導体産業の再興と次世代技術の開発を目指す重要な研究機関です。
技術者の育成、産学連携、国際協力を通じて、半導体技術の進化を推進し、日本の産業競争力を高める役割を担っています。LSTCの取り組みは、国内外の半導体市場において重要な位置を占めており、今後の展望も非常に明るいものと言えます。
参考文献
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