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ミステリー仕立てのスポーツ小説? スポーツ小説の形をしたミステリー?

 スポーツ小説はよく読むが、サイクルロードレースを扱ったものを僕は初めて手に取った。(番号が付けられていない章を含めて)全12章のうち8章までだから、物語の3分の2は、主人公・白石誓(しらいし・ちかう)を中心にした普通の熱血スポーツものだと思っていた(いや、9章のほとんど終わり際、誓があることに気づき始めるところまでだから、「4分の3」と言うのが正しい)。
 そこから、ストーリーはまさかの怒濤のミステリー的展開になる。自転車で坂を一気に下るような雰囲気だ。誓が尊敬する先輩・石尾は悲劇的な最期を遂げるが、小説自体は平和なトーンで終わる。

 ロードレースについて主人公の言葉で丁寧に説明されているのは、アマチュアボクシング初心者の高校教師の眼で描かれた、百田尚樹「ボックス!」を彷彿とさせる。誓の元カノ・初野香乃や、その今カレの袴田一平(元・誓と同じチームの所属で、今は車いすラグビーの選手)との絡みも、彼女たちの役どころを含め、絶品。

 香乃のイメージはこのひと、堀田茜さんでした。

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 僕が誉田哲也や今野敏の作品を好んで読むのは、結局は「スポーツとミステリーがどこかで融合していること(同じ小説の中でなくてもいいけど)」のせいだということを、改めて感じた作品だった。

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