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後悔せず生きるための「お金」〜奨学金と留学のリアル〜

今回は経済編のインタビューです!

経済的に厳しい状況の中、奨学金を使ってルワンダに留学された大学3年生の高橋すみれさんに、セルパメンバーのなりがお話を伺いました!
奨学金を利用してみてのエピソード、共同生活でのお金管理のコツから、何のためにお金を使うのかというお話まで。U25世代、特に大学生の皆さん必読です!

高橋すみれさんのプロフィール

1998年宮城県仙台市に生まれる。震災を経験した2011年に仙台青陵中等教育学校へ入学し、6年間通った。そののち、親や担任の反対をうけながらも、2017年から横浜市立大学の国際総合科学科に在籍する。2018年9月から1年間にわたりルワンダ共和国のプロテスタント人文社会科学大学に留学し、平和紛争研究学科にてアフリカの紛争を中心に紛争解決・平和構築について学んだ。
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ー高橋すみれさん、よろしくお願いいたします!

高橋:よろしくお願いします!

留学への想いを後押しした奨学金制度

ー経済的に大変な中留学をされたとお聞きしましたが、留学費用はどのように工面されたんですか?

高橋:留学する際にトビタテ奨学金を利用しました。大学の掲示物や、部活の先輩が海外に留学するのに利用していたことからトビタテ奨学金の存在を知って。これのおかげで自己負担額はゼロでしたね。

ートビタテ奨学金について詳しく教えてください。

高橋:制度上補助される金額としては、物価などは特に関係なく、発展途上国は月万円で、先進国はまた違う料金体系でした。私の場合は、ルワンダの田舎の方に行ったこともあってトビタテのお金でまかなえました。例えばアメリカとかイギリスの場合、奨学金をもらっていてもかかるコストをまかなえないので選択肢としてなかったですね…。行く地域によって全体のコストが全然違うので…。

ーもともと留学をしたいと思っていたのでしょうか。

高橋:海外に憧れがあって、高校の時から留学を考えていました。大学も留学ありきで国際総合学部というところを選びました。

ルワンダへ飛び込み、価値観の違いを体感した日々

ールワンダに留学されたということですが、どうしてルワンダに決めたのでしょうか?

高橋:高校生の時に映画の「ホテルルワンダ」を観て、つい20数年前にルワンダという国ではジェノサイドが行われていたということに衝撃を受けて。いろいろ調べてみたんですが、かつてアフリカで一番平和な地域と呼ばれていたところだったとわかり、なぜここまで変わってしまったのかと疑問を抱いたんです。その時からいつか行ってみたいなと考えていました。
大学に入って、いざ留学先を決めるとなった時に高校の時に抱いた疑問を思い出して、このタイミングで行くしかない!とルワンダを選びました。

ールワンダの「プロテスタント人文社会科学大学」に通われていたということですが、その大学はどんな場所だったんでしょうか。

高橋:ビッグな大学ではなく、比較的田舎でしたが、生徒のバックグラウンドが多様でした。

ーその大学を留学先として選んだきっかけはなんだったんでしょう。

高橋:ネットで見つけました。まずルワンダに行きたいという気持ちがあって、でもルワンダにどんな大学があるのか全くわからず、色々調べていたら、プロテスタント人文社会科学大学に日本人の教授がいることがわかり、その方に直接連絡をとって。その教授とのWeb面接、親の許可があるかどうかの確認、日本で通っている大学の許可などの手続きをした上で入学許可をいただきました。

ーすごい行動力です。ルワンダでしか得られなかったなと思う経験はありますか?

高橋:やはり、一番は価値観の違いを体感したことですね。もちろんどこの国に行ってもそうだとは思うんですが、長期の留学に行くのが初めてだったので、価値観が違う人と深く議論したり、生活したりすること自体が初めての経験で。バックグラウンドが違うことで、考えがこんなにも違うんだなと実感しました。

ー具体的にどんな出来事で価値観の違いを感じましたか?

高橋:例えば、授業で中絶の議論をした時ですね。中絶が女性の権利になるかならないかという話で。ルワンダはほぼキリスト教信者が占めている国なので、子どもは神様の贈り物だから中絶はだめという意見が主流なんです。私は、貧困な家庭で子どもを養えない、学校に通わせてあげられないという状況がある中でも中絶はだめなんですかと聞いたら、それは神様がどうにかしてくれるんだと言われて。根本的な価値観というものが本当に違うんだなと。ある意味ショックを受けました。

留学中、教室にて

ー衝撃的な体験だったんですね。

あとは、私が行った場所がアフリカ諸国から生徒が集まってくる場所で。ルワンダにいながら、南スーダンとかコンゴとかみんな全然違うところから来ているんですよ。アフリカは色々な国と価値観や文化が連なった国々の集まりであるということを改めて実感しましたし、いろいろな情報を得られました。
例えば、自分1人で紛争が起きている南スーダンに行くというのはとても危険なことですよね。でも現地の情報を持っている人が大学にいたので、行かなくても現地の情報が得られたんです。そういった情報はネットにも載っていなくてすごく貴重でした。

ギリギリまで受けられるかわからなかった奨学金


ー経済的な制約がある中、留学ではなく普段の大学生活ではどんな工夫をされてきたんでしょうか?

高橋:私はトビタテの他にも奨学金をもらっているんですが、奨学金が受けられるかどうかってギリギリまで結果がわからないんです。
審査に落ちた時に備えて、留学に行く前は授業も部活もある中、バイトを3つ掛け持ちして、月15万円ほどほとんど寝ずに稼いでいました。
一番額が大きかった家賃を浮かせるために家を退去して、友達の家を転々としたり。食費も浮かせるために、バイトのまかないのパンを食べたり。健康には悪いですけど(笑)。

ー奨学金が受けられるかどうかギリギリまでわからないというのは、ものすごく不安じゃないですか?

高橋:本当にドキドキしながら待っていました。
2018年9月に留学することになっていたんですが、そのための奨学金が出るかどうかわかるのが2018年6月だったんですよ。出発の3ヶ月前になって奨学金が受けられないと言われても、留学費用を出発までにどうにかするのはちょっと厳しいですよね。

ー他の奨学金も受けられるかどうかギリギリまで分からないものなのでしょうか。

高橋:今年度から始まった生活費のための奨学金にも応募したんですが、それがなかったら本当に生活がやばいぞという状況で。その奨学金が受給できると分かったのは新学期が始まったあと、4月10日くらいだったんです。結果発表は振込をもって行うという仕組みだったので、4月10日に自分の口座にお金が振り込まれるまで、お金がもらえるのかどうかわからなかったんですよ。
その奨学金は、学費全額免除に加えて月に6万5000円もらえるというもので、額が大きく、先々のお金の計画を立てようがなくて困りました。

ー奨学金についてもう少し詳しくお聞きしてもいいでしょうか? 返済不要のものと返済する必要があるものがありますよね。

高橋:現状としては3種類借りています。
1つ目が留学するにあたって借りていたトビタテ奨学金で、これは無償のものです。
2つ目が日本学生支援機構のもので、大学1年生のころから借りていて生活費にあてています。これは利子付きで返さないといけないもので、額としては月5万くらいですね。
3つ目が、今年度から始まった高等教育修学新制度というもので、結構幅広く経済的に困窮している人に生活費や学費を支給するというもので、返済不要です。

お金を管理するコツは「共同財布」

ー今の経済的な目標はありますか?

高橋:いまは妹と一緒に住んでいるんです。母親は職に就いていなくて、妹をある程度は養わないといけないから、家族それぞれが自分らしく生きていけるくらいの経済的余裕は持ちたいですね。

ー妹さんとお金について話すことはありますか? やはり近しい人とお金について話し合う機会を持つべきなのでしょうか。

高橋:私は一回も一人暮らしをしたことがないんですよ。シェアハウスしたり彼と住んだり、ルワンダでもルームシェアしたり、今も妹と住んでいて。一緒に住む相手とお金の話をすることはあったんですけど…お金って怖いので(笑)複数人で住むのであれば、最初に具体的なお金の話はしておいた方がいいと思います。

同居する妹さんから誕生日ケーキをもらうすみれさん

ーそれぞれの共同生活で、お金について何か取り決めなどはしていましたか?

高橋:経験上、どっちかが収入をまとめて管理するお小遣い制よりも、共同財布というやり方が実用的でした。今妹とやっているんですが、共同の財布にお互い月2万円ずつくらい入れて、そこから光熱費とか食費とか、2人に関わる生活費を出すという形ですね。
夫婦であれば、子供に関するお金とかをそこから出したり。そこに入れる金額は、私は姉なのでちょっと多く負担していますが、シェアハウスならみんな同じ額にしたり、パートナーと住むならそれぞれの収入に応じて決めたりすれば縛られている感もないし、余ったら貯金になるし。特にいざこざとか問題も起きたことがないですね。

パートナーや親の前に、1人の人間である

ー今は大学3年生ということですが、卒業後の進路についてはどう考えていますか?

高橋:今は海外の大学院への進学を考えています。それが実現するとなるとまたお金を借りないといけないんですけど。就職という選択肢も捨てていないですが、今は院に進学できるだけの貯金をしたいです。

ーどちらの国の大学院に行きたいんですか?

高橋:イスラエルの大学院に留学したいんです。この間イスラエルに行ったんですが、3大宗教の聖地であるエルサレムで、世界中の人々にとってどれだけ宗教の影響が大きいのかということを間近で感じることができて。理論では解決しきれないそれぞれの考え方を肌で感じたいし、そういう国の教授に学んでみたいという思いが強くなりました。

イスラエルにて

ー「セルフパートナーシップBOOK」では、キャリア、子育て、性生活、自己実現、経済(収入)、家事・暮らしのテーマごとに情報を発信しています。この6つのうち、すみれさんの優先順位としては、経済などよりも自己実現・キャリアが先にくるということでした。
すみれさんにとってのキャリアや自己実現とはいったいどういうところなんでしょうか。

高橋:難しかったのが、自己実現といっても、子育てをしたい、家庭を持ちたいという気持ちはあるんです。やるなら本気でやりたいという気持ちもあるし、それも自己実現に含まれると思っていて。
ただ、一旦やっぱり子どもやパートナーの存在を前提とせずに、自分が生きている意味とか価値っていうものを見出していくことも必要だと思うんです。そこに、自分がしたい勉強や就職先でどういう仕事をするかということも含まれていると思っていて。「子どもやパートナーがいたとしても、自分は母や相手にとってのパートナーである前に1人の人間なんだ」ということをよく考えています。

ー自分がやりたいことをしっかり見据えることができるのはどうしてでしょう。

高橋:多分母親譲りですね。母は3歳の時に祖母を亡くしていて、男兄弟に囲まれながら家事をして暮らしていました。その後看護師として働きながら2人の子供を育ててきて、わたしたちが親の手を離れた今は自給自足をして暮らしているんです。自分らしく生きている母の姿を見て、かっこいいなと憧れていますね。そういう生き方をするために、今のうちから自分らしいキャリアについて考えていきたいと思っています。

ーお金の使い道にはその人の価値観が表れると思うのですが、お金を使って得られた一番大切なものはなんでしょうか?

高橋:留学もそうですが、お金を使って経験を買うことが圧倒的に多いです。
「人からお金を借りてまで旅をするのか、留学をするのか」とか他人に揶揄されることもあったんですよ。でも、私は留学という経験の前と後では自分が全く違う人間になったと感じています。それから、50歳くらいになった時に自分の人生に対して後悔をしたくないという気持ちが強くて。時間と体力があって、必死に頑張ればお金を得られる若いうちに、今しかできないことをたくさん経験したいと思っています。

留学前にお金を貯め、東南アジアの国々を訪れた時のすみれさん

ー自分のやりたいこととは一体なんなのか分からずにいるU25世代も多い中、自分のやりたいことを見据えて、必死の努力を重ねられるところが本当にすごいです。ありがとうございました!


インタビューを終えて

「自分は母や相手にとってのパートナーである前に1人の人間なんだ」という言葉が強く印象に残っています。
解決すべき課題はありそうですが、やりたいことのある学生のための経済的な補助というのは確かに存在しているとわかり勇気をもらえました。今ある仕組みをどんどん使い、よりよくしていきながら、一人の人間として後悔のない生き方を!



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