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【SELFの本棚】#048 SPRINT 最速仕事術 ジェイク・ナップ著

(文:SELF編集部 かつ しんいちろう)

「ブレーンストーミングはもう古い。高速でバリエーションを考え、そこからベストを選ぶ『クレイジー8』は良いよ!」というポストを見て、Facebookにシェアしたところ、「Google社内でも使っている手法で『SPRINT』という本で紹介されている。自社でも使ってみたが、その時はあまり成果が出なかった。」というリプライをいただきました。

早速、購入して読んでみました。私は以前、製造業系の商品開発やサービスの開発を企業の内でやっていました。今もコンサルタントとして外部サポートの立場で参画することがあります。
本の中に書かれていることは、自分の経験の中で得てきたノウハウと重なっているものもあれば、そのノウハウをさらに高度化する内容もありました。こうして書籍にまとめられていることに感謝です。
商品開発やサービス開発をする方、その流れをファシリテートする方には良い本なので読んでみてください。

SPRINTのプロセスは1週間。月曜日から金曜日まで、そのテーマについてのベストな知識かつ決定権限のあるメンバーと、最終決定できるオーナーが参加します。
時間は毎日10時から17時。集中するために缶詰状態になります。スマホやPCを基本的に使わず、討議とアウトプットに集中します。1週間のそれぞれの日にやりきることは、以下の通りです。

月曜日:問題点を洗い出して、どの部分に照準を合わせるかを決める。
火曜日:多くのソリューションを紙にスケッチする。
水曜日:最高のソリューションを選ぶという困難な決定を下し、アイデアを検証可能な仮説のカタチに変える。
木曜日:リアルなプロトタイプを完成させる。
金曜日:本物の生身の人間でそれをテストする。

私自身の経験の中でも実践している内容がいくつかあったので紹介以下に紹介しますね。

①メンバーは7人以下
 チーム編成でも7はナジックナンバー。それ以上増えたらチームを分けて階層化する。大人数でもフラットな組織にできるのはプロフェッショナルのみで構成されたチームで、自分勝手に動いてもハイ・クオリティで調和する。普通のクオリティレベルの人がフラットに集まってもノー・コントロール状態になるだけです。

②壁全面ホワイトボードを2面
 書き出すという作業でアイデアが明確になります。業務系コンサルタントはホワイトボードが命です。是非、デカいホワイトボード(もしくは壁一面ホワイトボード加工)とよく書けるマーカーを。(←これ大事!)

③時間を区切って成果物を確認
 時間は有限。追い込むことで脳が活性化します。

④マップやイラストを多用してイマジネーションを有効に使う
 イラストや図は状況に没入するためにも、説明のためにも有効です。

⑤簡単なプロトタイプを作って、出来上がりをイメージ
 先に製品パンフレットを作って製品のセールスポイントを宣言し、開発要件出しに使う「仮想開発」、製品を使っている様子をモックの状態で短い映像にして反応を見る「ビデオ・プロトタイピング」、段ボールなどを使ってモックを作って試す「段ボールRP」、3Dプリンタで作る「RP:Rapid Prototyping」などなど、色んな手法を試してきました。完成してみないと分からないと、やり直しの工数をものすごく消費します。

⑥最終決定できる人を入れる
 最後にオーナーに伝えると、「自分のイメージとは違う」となることがあります。過去大変な目に何回か合いました。
必ずオーナーも参加。最悪でも全権委任された人に加わってもらいましょう!

⑦良い質問は良い答えを呼ぶ
 SPRINT運営でもそうですが、ファシリテータが、どれだけ良い刺激的かつ本質的な質問を行なうかで、チームメンバーから出される答えの質は変わってきます。今回のテーマの本質的課題は何かを「事前」に、そして「最中」も頭を高速回転させて深く考えましょう。それがファシリテータの仕事です。

そして、最後に Lessons  learned (教訓)のまとめも忘れずに。経験は次へのとても重要な学びです。そして重要なコトも時間と供に忘れられる運命にあります。

ということで、SPRINTは製品やサービスの開発方針を決めるのにとても良い手法なので、この分野を志す方は是非本書を読んでいただきたいです!


製品開発のプロトタイピング分野でリードしていたIDEOの経営が思わしくないのは、デザイン思考の終焉でもプロトタイピングの衰退でもなく、経営手腕の話しなので、この分野はこれからも重要です。


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