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【SELFアクション】CN分科会レポート 中古住宅の資産化による循環社会の実現

2月7日月曜日に行われたSELF Communityのカーボンニュートラル(以下、CN)分科会のレポートを共有します (文章: SELF編集部 小平)。
CN分科会は、エネルギー、建築、設計、金融の専門家などが集まってゼロカーボン社会の実現を目指すために活動する分科会です。毎回、持ち回りで自分の専門分野の知識をシェアするセミナーを行なっておりまして、今回は株式会社住まいずの 有村健弘さんにお話しいただきました。(写真はFacebookより)

有村さんのご紹介

有村さんは代々、霧島市で林業を営む会社の11代目として、林業、製材所、家などを作る工務店グループの代表としてマルチに活躍されています。また、鹿児島スマートBBQ協会会長 / 上級BBQインストラクターとして、「コミュニケーションツールとしての役割」を持つBBQの先駆者でもあります。今回、有村さんがCN分科会で話された内容は(珍しく!)本業の住宅の中古流通の話でした。

持ち回りセミナー「住宅の維持管理と資産価値を考える」

なぜ家の話なのか?

「CNなのに、なんで家の話?」と思った方も多いかもしれません。ただ、住宅・建築物に特に関連するCO2排出量は、全体の3割を占めます。もちろん、その3割には普段の生活のなかで出るCO2も含まれるのですが、建築施工自体からも年間411.9万t-CO2が出ています。CO2以外でも資源循環を目指すという意味でも中古住宅を循環させ流通させる仕組みは今後の社会にとって重要と言えます。

住宅流通の国際比較

こちらは、各国の新築と中古住宅の流通戸数の国際比較です。この表から以下の2点が判ります。

①日本の住宅流通の85.3%が新築住宅だが、海外ではほとんどが中古住宅で、オーナーを変えて住み続けられている。

②イギリスやフランスは日本の人口の半分ほどだが、流通戸数は同程度で、盛んに中古住宅の取引が行われている。

では、なぜ、日本では中古住宅の流通量が小さいのでしょうか?海外の方が地震少なく、転職が多いという要因もあるようですが、もっと大きな理由が建築側にあるようです。

日本では中古住宅の流通量が小さい理由

有村さんによると、日本で中古住宅の流通量が少ない理由は2個あります。

理由1: 家の価格が築年数で決まっているから、古い家が資産価値ゼロとなっている。

海外では築100年とかの家もたくさんあり、高値で流通されていますが、日本の金融会計や中古住宅市場では中古住宅の価値は築年数で計算されます。新築の価値が高く、中古住宅は20-30年で資産として計上されなくなる。なので中古住宅を対象にした住宅ローンは組めないそう(支払えない時に担保として取る家の価値がゼロだから)。だったら、新築建てた方が得だよね、と皆が考える構造になってます。

理由2: 1950年から2006年までとにかく「質より量」ということで機能性(断熱性、耐震性)が不十分な新築住宅が量産された。その低品質な中古住宅はメンテナンスもされておらず、改修に多額の費用がかかるので手が付けられない。

戦後、住宅不足の解消を目的に「1世帯1住宅」制度という方針が作られ、住居が量産されてきました。法律的には2006年に「質に転換しましょう」となったようなのですが、その後も業界的には変わらず、住居がピンからキリまでのクオリティで量産されていきました。実際、古い住宅のリフォームを依頼されることも多いそうなのですが、見積もりをしてみると、質の低い家だと耐震や断熱の改修の費用も高く、かつ資産価値がない事も考えると、壊して新しい家を建てることが得になる事がほとんどだそうです。

では、この状況を変え、より循環的な住宅市場を作るにはどうすればいいのでしょうか?

中古住宅を資産にするための提言

有村さんの提言のは「中古住宅を資産として活用できる」仕組みを作ろうという事です。具体的には「管理メンテナンス履歴情報を一元的にストックできる仕組みの導入」「金融スキームの活用」です。

まずは、中古住宅市場の弱点は「その家がどういう風に建設され、ちゃんと管理されてきたかの情報」がないことで、それが分かる仕組みが必要。建設と管理履歴があれば、ちゃんとした家は高値で販売することが出来ます。

実際には国交省の「いえかるて」いう建築情報やメンテナンス履歴管理サービスがあるのですが、まだ普及は0.5%以下です。有村さんの会社では、住宅の定期検診と同時にこの履歴情報の管理も行ってくれる月500円のサービスも自社で家を建ててくれた方に展開中。

二つ目は中古住宅を対象にした金融サービスを活用して中古住宅の流通量を増やす方式です。ちゃんと履歴管理がされている住宅は金融商品としての価値が発生するので、金融サービスの活用が可能となります。

アシューマブルローン(債務継承型融資: 住宅の所有者が住宅ローン残高も引き継ぐ形の住宅ローン)やノンリコースローン(非遡求型融資: 破産したら家を取られるだけで返さなくてもいいローン)などもあるのですが、最近、注目されているのはリバースモーゲージで、「自宅に住み続けながら、その自宅を担保に老後資金を借りることができ、死亡時に家が金融機関の持ち物になる仕組み」です。

相続で中古住宅を相続すると、古くて使えないし、固定資産税もかかるし、解体にもお金はかかるし、子供は大変です。この仕組みを使うと、老後の資金の足しにもなるし、家の処分も出来るしと一石二鳥。ただしまだ現状だと、住宅でなくて、土地分の価格しか評価されてくれないとのことなので、履歴管理の仕組みが出来てくることで、住宅できたら評価が着くのではと思います。

また、有村さんはこういう金融の仕組みをいっしょに作ってくれる金融機関のパートナーも募集中とのことです。

セミナーのまとめ

カーボンニュートラルの実現は、循環型社会の実現とも関係します。住宅の質を上げ、中古住宅の評価制度を作り、住宅が循環される市場が作られていくことは今後、ビジネス的にもSDGsとしても希望が持てるものだと感じました。

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