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ルワンダで社会課題解決を学ぶ

(SELF編集部 かつ しんいちろう)

2023年3月のルワンダの旅でお世話になったKISEKIは、「地域のお母さんが笑顔で暮らせる社会を創る」をミッションに山田美緒さんが行っているソーシャルビジネス。ミッション実現には多くの取組テーマがあり、それらの社会課題を連続的かつ継続的に解決し続けていくためにはボランティアではなくビジネスとしても成立していなくてならないと彼女は言う。

郊外の街はまだまだインフラ整備が進んでいない

ミッションは、「地域のお母さんが笑顔で暮らせる社会を創る」

「地域のお母さんが笑顔で暮らせる社会を創る」。そのために彼女が現在展開しているのは、幼稚園(ナーサリー)のサポート、子ども食堂、託児所、妊産婦ワークショップと栄養満点ご飯、First 1000days プロジェクト(妊娠中から2歳の誕生日を迎えるまでの1000日をサポートするプロジェクト)、ICT教育、食育菜園、縫製の職業訓練、図書館など、多岐にわたる。

KISEKIの施設

通常のビジネスは顧客の課題を解決して対価をもらう。ソーシャルビジネスは社会の課題を解決して直接的または間接的に対価をもらう。間接的にというのは、例えばODA(政府開発援助)などである組織や国が拠出した資金を得て、相手国の社会課題を解決するということ。現場で実行する部隊を持たない場合、事業が組まれ、実施者に実行の対価としてお金が支払われる。直接的と言う場合、こちらが社会課題の解決としてして欲しいことを当事者の向こうが行うことによって向こうに収入が発生する場合に成立する。

こども食堂は子どもがいるあ母さんを雇用

ソーシャルビジネス その① こども食堂

こども食堂のキッチンや清掃などを行なう運営スタッフは現地のシングルマザーから厳選されたお母さんである。生活の困り度合い、コミュニケーション能力、仕事の質などしっかりふるいにかけるそうだ。お母さんは、働いた分の賃金がもらえるし、子どもも目の届く範囲で勉強したり遊んでいるし、子どもの食事も提供される。そして何より安心・安全な空間で仕事ができる。

テーラーのデオさん

ソーシャルビジネス その② Dress for Two

二つ目はDress for Two。アフリカにはキテンゲという縦5・4㍍、横1㍍のカラフルな布地がある。その布地でドレスやジャケットを2着作ることができる。Dress for Twoは現地で調達した生地を日本の方がネットで選び、1着を作る。残りの半分の生地でルワンダの方が洋服をオーダーして作る。1枚の布を「はんぶんこ」することになる。

このプロジェクトでは、日本の方は素敵な洋服を購入でき、ルワンダ側では普段なかなか洋服が購入できないシングルマザーが少し安く洋服を購入できる。日本側の購入者が少しだけ代金を負担するのだ。縫製をルワンダで行うので、仕事のないシングルマザーには縫製の仕事により収入が生まれる。

このプロジェクトのメイン・テーラーのデオさんは、日本人の鈴木掌(すずき・つかさ)さんから服作りの基礎を学び活躍している。様々な種類の服のパターンを作り、布をカットし、きれいに縫製して仕立てるスーパー・テーラーだ。

このDress for Twoは山田さんと日本側の協力者岡本望(おかもと・のぞみ)さんの協同プロジェクト。多くの商品が既に販売され、現地と日本を結んだファッションショーも開催された。私も、このプロジェクトで3年前に1着、そして今回も1着ジャケットを作ってもらった。

超ご機嫌なジャケット!

さらに、今は縫製のトレーニングセンターもKISEKIが運営していて、デオさんはそこの講師も務めている。

パターンに従って裁断しミシンで縫製

技術が上達した人にはミシンが譲渡され、独立の道もあるという。技術習得→製品作り(収入)→独立の循環が出来ている。

ソーシャルビジネス その③ 次世代人材育成

もう一つの大きな柱が次世代人材育成。次の世代を育成しておかないと次々と出てくる社会課題に対応できない。これもボランティアベースでは続かないので、参加者自身からしっかり料金をいただく。どこかの組織からの資金でないので突然の予算打ち切りとか使途の制限とかなく、自分たちの裁量で運営できる。継続して運営するためにたどり着いたソーシャルビジネスとしての成り立たせ方だ。

曜日ごとに設定された滞在メンバー全員で行うミーティング

KISEKIではこのサービスをボランティアプログラム、インターンシッププログラム、国際協力体験プログラムとして提供している。既に多くの大学生や高校生、そして中学生が参加して多くのプロジェクトを立ち上げている。参加者は1週間500ドルを払って参加。自分がやりたいと計画してきたことを現地で実践。その実践を山田さんがコーディネートして支援する。
日本で考えてきたことをそのまま実践できないので、夜のミーティングで山田さんが問いを発しながらファシリテートしていく。
私が滞在していた時も約10人の若者たちが自分のプロジェクトに取り組んでいた。

挑戦は続く

このほかにもプロジェクトが同時並行的に進み、その過程で「そんなことある?」というようなことが起きるという。経理できますという人がエクセルを使えなかったり、調理人が3人分作りながら自分で食べるので結果2人分しかできなかったり、色んなことが起きるのだそうだ。
それでもめげずミッション達成のために方針を変更し、やり方を変え、現地の人と共に実践を続けている。
そんな彼女の頼りにしているスタッフたちは、優しく仕事も丁寧でしっかりしていた。選び抜かれし精鋭たちという感じだった。彼女の思いが伝わっているのだろう。

山田さんとカメレオンと筆者

日本に帰ってから気が付いたことだが、これから何をしたいのか?聞くのを忘れた。今やっていることだけでもスゴイので、きっと伺うのを忘れたのだろう。

子どもたちに異文化体験を

今回の訪問で、もし中学生、高校生のお子さんをお持ちの方ならぜひKISEKIのプログラムに子どもだけで参加させることをお勧めする。わずか1週間でも良い体験になる。英語が話せなくても英語を話したくなるきっかけにもなるので良い。(それでも入国審査とかのレベルは覚えて行こう!)
大学生なら自分で稼いで行ってみよう。自分のプロジェクトを立てて実践に行くと良い。詳しくは、ホームページを見て欲しい。

自分のミッションは何か?何をどこまでやるのか?のスコープ(範囲あるいは世界)を定義し、達成に向けて進めることの苦しさ兼楽しさ兼達成感は、生まれてきた者にしか得られないものだ。

「あなたは何になりたいのか?」と職業名を問うのではなく、「どんなことに興味があり、どんなことをやってみたいのか?」を問い、その選択肢を見せるためにも体験の旅に出よう!


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