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夕方のロバ #2

その日は雨が降った。

水溜りや土のおしゃべりは止むことはなかったけれど、
ロバは誰かの話を聞きたい気分ではなかった。

アオガエルが一匹、紫陽花の葉の陰から顔を出し、
すぐにまた別の葉の陰に隠れた。

ロバは目を閉じて、鳴き止まないセミのことを考えようとしたが、
瞼の裏のセミは、すぐにまた、別の木に飛び立ってしまうのだった。

そして代わりにアオガエルが姿を現し、
目の前でじっとロバを見つめていた。

「首の短いキリン。針のないハリネズミ。甲羅のないカメ。」

雨の音が少し小さくなった。

「跳ねないノミ。鼻の短いゾウ。掘らないモグラ」

「そして、鳴き止まないセミ」

ロバは目を開けたが、そこにはカエルの姿は無く、水溜りと土が相変わらず、意味のないおしゃべりを続けていた。

「いつか鳴き止むことが、セミをセミたらしめているとしたら?」

ロバは急いで紫陽花の葉を裏返したが、
そこにはアオガエルの姿は無かった。

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