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マレーの作り話

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藤子・F・不二雄先生のいうところのSF(少し不思議な話)
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#読むくすり

夕方のロバ #1

「夢から覚める時、失われているのは現実の方だ。 セミが夏の終わりに鳴くのをやめる時、 失わ…

夕方のロバ #15 終話

ロバが目を覚ました時 辺りはすっかり暗くなっていて 雲の隙間から月が見降ろしていた。 慌て…

夕方のロバ #14

誰もいない湖のほとりで ------ 月が水面を泳いでいる 昨晩もその前も もう随分の間 同じ形で…

夕方のロバ #13

顔のないカエル③ ーーーーーー 操縦席を目指して泳いでいたのに、カエルは今自分がどこを泳い…

夕方のロバ #12

カエルはロバの背中から落ちて目を覚ました。 運よく多年草の葉の上に落ちることができたので…

夕方のロバ #11

顔のないカエル② -------- 記憶の中で、カエルはロバと見つめ合っていた。 カエルは見つめら…

夕方のロバ #3

泡の記憶 --- 私はひとつの気泡に過ぎない。 薄暗い海の中を、ゆらゆらと昇っていく気泡。 時に魚の群れに飲まれ、または偶然にも海面に辿り着く。あわつぶ。 海底に目を凝らしても、もはや生まれ出でた理由など見えない。 私は海底から噴き出す有毒ガスだったかもしれないし、 潜水艦の吐き出す二酸化炭素だったかもしれないし、 シロナガスクジラの吐息だったかもしれない。 ただ一つわかっていることは、 いつか消えて無くなるということだけだ。 その時何か、シグナルがあるだろうか

夕方のロバ #4

ロバは雨宿りの木の下で、 カエルがいなくなった紫陽花の葉のあたりを 長いこと見つめていた。…

夕方のロバ #5

アオガエルは目を開けた後も、しばらく山の方角を見つめたまま佇んでいた。 肩を落としている…

夕方のロバ #6

記憶のけむり① ----- 忘れることで救われたことが何度もあった しかし記憶は煙のように た…

夕方のロバ #7

記憶のけむり② ------- やがて、けむりはまた別のけむりと混ざり合い そのまた別のけむりと…

夕方のロバ #8

途中、小さな小川があり、その川を渡る時にカエルはロバの背中を借りた。 ロバの背中は思った…

夕方のロバ #9

顔のないカエル① --------- 夢を見ている。 深い海だ。真っ暗で何も見えない。 そして、何も…

夕方のロバ #10

記憶のけむり③ ---------- 全ては過ぎ去ってしまった 目の前には記憶の「次」の場面が用意されていて 私たちはそれを演じなければならない 記憶をかき集めている時間はない すべては断片的な印象と 数行のセンテンスに置き換えられて けむりのように漂うだけだ そして私もいつか 記憶のけむりとなる