イスラム社会で働くガイジン女。

去年の夏、それまで4年間スイスで働いていた国際機関をバーンアウト退職(この話はまたいつか詳しく!)して、日本に帰って充電しようとしていた私にふってわいたパキスタン行きの話。 それまではアフリカの保健医療政策の現場に戻ろうと思っていたのに、縁もゆかりもなく、仕事もこれまでとは似て非なるサブセクター、南アジアはインド駐在経験があるけどイスラム教の国は初体験、と全く自分が行く理由が見つからないにも関わらず、なぜか「これも何かのご縁」とオファーを受けることになってしまいました。

パキスタン。

国民の98%がイスラム教の国です。

アジアで最も母子保健の指標が悪い国の一つ。 そして女子の就学率・識字率が最も悪い国の一つ。 その理由は、宗教的な背景から習慣として女児・女性の社会参画を長らく許してこなかったから。 女性・女児は大家族の家の中から一歩も外に出さないという習慣がまだ根強く残っている国なので、国連などで国の発展度合いを見るのに使う社会開発系の指標がなかなか向上しないところです。

そんなパキスタンでも私のプロジェクトが活動しているKP州は特に女性に対する保守的な姿勢が強い地域。 女性は基本的に他の男性の目に触れてはいけないから、外に出ない。 家事はするけれど、食品も生活用品も自分の着る服も外で買い物をしてくるのは男の仕事。 子どもを病院に連れていくのも父親の役目。 女が外で仕事をするなんておかしいと6割の女性が思っている地域です。(実際に働いているのは11%) 実際、私のプロジェクトで働くローカルスタッフも10人全員が男性、何度求人をかけても女性からの応募がないので、仕方なく男祭りみたいな状態が続いています。

では、家では妻や娘を外に一歩も出さないローカルスタッフ男性たちは、私のようなガイジン女がいきなり上司になって困惑しないのか。 女に指図されるなんてまっぴらだと思っていないのかしら? 時々彼らに聞いてみていますが、どうやら答えは「別に気にしていない」の様子。 異教徒のガイジンの女が何をしようが、自分の上司だろうが、そこに特に違和感を持つこともないのだそう。「あなたはどんな男よりもアグレッシブに仕事するからね」とうちのスタッフたちは笑っていますが、少なくとも彼らの日常の中に、学歴があって海外で仕事をがつがつする女を見たことがある、という経験が、彼らの娘たちに教育や働く機会を与えるきっかけになると良いなと思わずにはいられません。 本当に小さな影響力ですが。

イスラム社会にここまでどっぷり浸かって仕事をするのは初めてのことで、アジアのはずなのに、とにかくアフリカにいた時よりもカルチャーショックを感じる日々。 40代も半ばになって、こんな新鮮な経験をして、新しいことをものすごい勢いで学べる開発ワーカーという仕事とはありがたきものです。