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長く使えるモノの楽しさ

長く使い続けられるモノの楽しさというものがある。

超が付くほど生来の「飽き性」な僕だけど、そんな僕でも長く使えるモノの楽しさや愛しさを感じてしまうことはある。


例えば、バラクータのG9。

僕が着ているのは、分厚い高密度のメルトンウールボディに、袖がシープレザーのモデル。全体はグレー基調の、落ち着いた雰囲気のモデルだ。

かなり暖かい作りになっているから、冬場に大活躍する。

購入したのは、今からもう15年近く前になるだろうか。

当時は時計を販売していて、仕事着はスーツ。

普段着もそこから派生したような服ばかりだったから、あまりカジュアルっぽいアイテムは興味を持たなかった。

G9はクラシックなブルゾンだけれど、テーラードジャケットに慣れていた僕からすると、すごくカジュアルなアイテムに見えていたものだ。

でも、同じ商業施設で働いていた人がそのG9を着ていたのをたまたま見かけて「なんてカッコいいんだ」と思ってしまったのが運のツキ。

その店へ行って、試着をして購入してしまった。

当時の僕には結構勇気のいる金額ではあったのだけれども、それから早10年以上の月日が流れた今も、冬になるとつい手が伸びてしまってそれを着ている。

袖のレザーはだいぶ古っぽくなってしまったけれど、それもまた味になっている気がして愛しくて仕方がないのだ。


例えば、ハンス・J・ウェグナーの本棚。

デンマーク出身の(もはや)伝説の家具デザイナーの本棚に出会ったのは、長野県上田市。

halutaというビンテージ家具を扱うお店だった。

住宅に関わる仕事をしている妻と出会ってから、「家は仕事の合間に寝るだけの場所」だった僕の考えは結構変えられた。

家という場所が充実していると、それだけで人生は豊かになるのだと教えてくれたのは妻だと思っている。

そんな妻と出会い、家具に少しばかり興味を持ってしまった僕は、仕事上本を読む機会も多いため、本を収納する棚が欲しくなる。

これまでは適当に置いてしまっている散らかった部屋にばかり暮らしていたのに、ちょっとばかり知恵がつくと「良い本棚とか欲しいな〜」と思ってしまうような人間なのだ。

なんとも浅はかなのだが、良い本棚を探すなら行ってみようということで、妻と二人、halutaへ足を運んでみた。

そこに鎮座していたのが、ウェグナーの本棚だった。

ウェグナーといえば、チェアーの方が有名なのだろうけれど、本棚も侮れない。

極々シンプルなデザイン。特にあれやこれや言うような機能もない。

でもそこに使われている木材の雰囲気や色、絶妙な棚の配置。

なぜだか惚れてしまったのだ。

聞けば購入当時で、製造されてから30年ほど経過しているものだと言う。

その金額はと言うと、家賃の何ヶ月分なのかもわからなくなる金額。

昔、清水の舞台から飛び降りても足りないくらいの覚悟で買ったギターよりも高いではないか。

でも、勇気を出して買った。

家に届いたその本棚は、すでに引っ越してしまった今も部屋に備わっている。

それを見て何か気持ちが湧き上がるわけでもないけれど、「ただそこにある」というだけで充足感が生まれてくる本棚なのだ。


超飽き性の僕だけど、こういう長く使えるモノ、いや、長く愛し続けられるモノは大好きだ。

そこには、長く使うことで生まれるいろんな思いが詰まっているように思う。


G9を着て出かけたあの日。

ウェグナーの本棚に、大好きな小説をしまう喜び。

そんな使い続けるモノの楽しさを感じ続けていたい。

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