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あをによし、連れて行く[奈良③]

道中色々(色々がひどい)あったが、京都に何とか着いた。

父の一人暮らしのイメージは、あなたはもう忘れたかしら的なものらしく、娘が暮らしているワンルームの学生マンションは驚愕だったようだ。
なんちゃって北欧風の女の子らしい部屋に、父は「じいじいは満足だ」なんて何度も言っていたから、まあ良かったんだろう。うん

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宿は、奈良の「春日ホテル」を選んだ。

こちらの特別室和洋室からは興福寺中金堂、五重塔が見える。出歩く事の出来ない父にピッタリだ。

食事はホテル内の食事処へ移動しなければならないが、車椅子の場合でも移動できる配慮が出来ており、問題ない。恐縮するような要望への対応も素晴らしく、負担なく嫌な思いをすることもなく、時を過ごす事が出来た。

そんな優しい気遣いを感じたからこそ、偏屈な父も嫌がらずに車椅子に乗ってくれたのだと思う。

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ありがとうございました
窓から奈良観光

食事だが、食事が細いのは、父だけ。
母も娘も、私も食欲はある。よって、

こうなる。父にはお粥を作ってもらった。

私は父の世話に忙しく、美味しいお料理をバキュームの様に(ああ勿体無い)食べつつ、母と娘に話しかける。食事を一番堪能していたのは、母と娘だろうがそれもいいだろう。
バキューム作業のせいで、二、三日胃が痛かったのは、しょうがない。

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父の奈良観光は部屋の窓からだが、母は歩いた。
夫(父)を放っておいても観光したい欲が滲み出ている母。娘にしばし父のお世話をお願いし、お出かけ。

ウエルカム 奈良
大仏、すごいなあと母と娘で見上げる。

実際どうよ?父の体調は。ほれ大仏的な?
シビアな現実問題も甘味をはさんで、語れる話題。

ちょっとした甘味もね。

大仏と鹿と母と甘味。

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夜に父がトイレと言う度に、母と一緒に起きる。
慣れないホテルの部屋で、転ばぬように注意する。

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朝食豪華。父は茶粥少々、梅干し少々。
次はゆっくり食べたい。

父は食べられるものが限られるので、父の食事の大半を再びバキューム。自分の胃を完全にいじめている。その時はしみじみ自分の食い意地と、強靱な胃袋をありがたく思った。なんか変だけど。

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台風に追い付かれる前に帰ろう。
娘を送り届け、そのまま高速へ。腰も足も痛むだろうがもう少し頑張っておくれ、と思いながら車を飛ばす。
サービスエリアの多目的トイレに感謝する。
スロープに感謝する。

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なんとか実家まで両親を送り届け、戻ろうとしたら「すまんかったのう。(孫の所に)よく行けたのう。またあの宿に行きたいのう。やっぱり京都の宿はいいのう」と父に言われた。
再びがあるのか(驚)、再びはあるのか(寂)、そして泊まったところは京都ではなく、奈良だと思いながら、じゃっと手を上げて帰宅したのであった。

ミッションヨロヨロコンプリート。

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