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就寝中も、住まいは環境に囲まれている

「ベッドに入ると、すぐに寝てしまうから、騒音は気にならない」という人がいる。こんなタイプであれば、住まいの前が高速道路であっても、利便性の方を選ぶだろう。

一方、少し遠くなっても、静かな環境を求める人がいる。「秋の虫もいなくなった今では、夜はなんの音もしない。それがいいのさ」と答えるはずだ。

住まいを探すときは、たいてい昼間。でも、その環境の中で、夜は眠ることになる。夜間にどんな雰囲気なのかも調べておく方がいい。

災害のリスクを示したハザードマップと同じように、ノイズマップ(騒音の度合い)、スメルマップ(周囲の匂い・臭い)、クライムマップ(犯罪などの発生率)などに該当するデータをチェックしてみよう。

住めば都81-2

日がとっぷりと沈んでしまう。カーテンを開けると、夜景が華やかでナイトショウをやっているようだ。あるいは、真っ暗で遠くの灯火だけが見える。窓を開ければ、冷たい夜風を通して、樹木の匂いも感じられる。さあて、どちらの住まいを選ぼうか。

住めば都も遷都する。住環境は、朝から夜まで24時間、私たちの生活に影響を与える。眠った後の周囲のたたずまいもイメージすること。そうそう、冬に見学するときは、夏はどんな感じかなと、季節ごとの変化も想像しておきたい。

関沢英彦(文・イラスト)
発想コンサルタント。東京経済大学名誉教授。コピーライターをへて、生活系シンクタンクの立ち上げから所長へ。著書に『女と夜と死の広告学』(晃洋書房)『いまどきネットだけじゃ、隣と同じ!「調べる力」』(明日香出版社)『偶然ベタの若者たち』(亜紀書房)他。論文に「記号としての心臓 なぜ、血液のポンプが、愛の象徴になったのか」「映画に描かれた『料理』と『食事』の4類型」「月の絵本 無生物とのコミュニケーションを描いたナラティブ」(いずれも『コミュニケーション科学』)他。


東京カンテイマンションライブラリ 関沢コラムより

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