見出し画像

2 考える「部品」を大量生産して考える

ここでは、考えるための方法を考えていきたいと思います。第2回は、思考の「部品」づくりについて。重いものを押すときと同じで、考え始めは頭の動きが鈍いものです。思うように集中力が働きません。私の場合、そういうときはともかくキーボードに向かって、指を動かすようにしています。どこから手をつけていいか分からないときは、ボヤッとしながらでも言葉を羅列してみる。すると、そうした言葉たちが、やがてあるまとまりを持ってくるはずです。

これについて、具体的に例を挙げて考えてみましょう。ここで、あなたはご自分のことを旅行代理店の敏腕企画マンであると想像してみてください。残念ながら、いま、旅はできませんが、「その後」のことを考えてみましょう。

あなたは新たな市場開拓の切り札として、「小学生向けの旅行プラン」を思いついたとします。さあ、あなたならそこにどんな中身を盛り込むでしょうか。まず「小学生向けの旅行プラン」とタイトルを入力してみてください。そして、「小学生の特性」といったことを箇条書きにしていきます。

1 旅行などの生活行動には親や祖父母の意向が反映する。
2 受験をする子もいる。
3 塾に通っている子が多い。
4 この年代は男の子と女の子の関心領域が違う場合も多い。
5 都会と地方では子供の生活が異なる。
6 平常の生活は大人が思う以上に忙しい。

まだまだ考えられそうですが、思考のストレッチなので、このくらいにして……。あなたはどのようなことを挙げたでしょうか。こうして思いついた特性を書きだしていくと、頭が動き始めたのではないでしょうか。いま並んでいる項目だけでも、いくつか企画の方向性が見えてくると思います。

まず、1の「親や祖父母の意向」というところに反応して、「3世代旅行」の企画を考えてみるというのはどうでしょ(すでに、色々とあるようですが)。この場合、旅行の費用は、お金に余裕のある祖父母が、子や孫の分までそっくり面倒を見る可能性が大ですね。そうなると場所の選定も、祖父母と子供がともに興味を持てるような場所、たとえば古い歴史のある京都・奈良、鎌倉などの地が候補として上がってきます。あるいは地方の美術館巡りなどもあるでしょう。

2・3について考えてみると、たとえば社会の勉強に直接役立つような場所の選定もあり、ですね。地方在住の小学生なら、東京の国会議事堂や最高裁判所見学、というのもプランに盛り込めそう。また、これとは逆の考え方で、せめて旅行くらいは受験や勉強からは程遠い場所、という選択肢もあります。「沖縄の海でとことん遊ぶ」とか「北海道の大自然に親しむ」というプランなら、旅行によって英気を養い、旅行から帰ってふたたび勉強に励むことができますね。あるいは、「受験や塾などウチの子には関係がない。幼い子には旅をさせろ」と考えるタイプの親もいるはずですから、その場合は、子供ひとりで海外旅行、というプランも出てきます。

4については、男女別に旅行企画を考えてみるのも面白いかもしれません。同時に、ジェンダー(男らしさ・女らしさ)を超えた企画、たとえば、パティシエにお菓子作りの基礎を教わる、とか、オーストラリアでミニバイクに乗る、といったものがあれば話題になるでしょう。

5については、都会に住む子供たちと地方に住む子供たちが一週間生活を入れ替えてみるといった企画につながります。

6については、「忙しい」という子供たちに向けて、「のび太の旅~小学生ものんびりしたい」といったものも考えられるでしょう。青畳にごろっと寝転がって昼寝、下駄を履いて河原を散歩、浴衣で線香花火など、かつて時間がゆったり流れていた頃の日本を小学生が追体験するのです。のんびり、といっても、ゲーム機の持ち込みは禁止です。その代わり、老人の語りで戦前や戦中の苦労話を聞くのもいいでしょう。

このように、アイデアを生み出したりする際には、「さあ、アッと驚くような素晴らしいプランを考えるぞ」と身構えるのではなく、とりあえずどんなものでも構わないので、思考の「部品」となるものを大量生産すること、これが大事です。いまのところ、「部品」のレベルは、35点くらい。このあと、50点、70点、95点と上げていきましょう。

考えるための「部品」を机の上に並べて、「ああでもない、こうでもない」とブロックのようにくっつけたりはなしたりしているうちに、「モノになりそうなアイデア」がいくつも生まれてくるもの。

部品と呼んだのには、意味があります。自分から突き放して、「外部化」することが風通しを良くするのです。ジグソーパズルのように並べ替えることで、考えが広がっていく楽しさを味わってみてください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?