_関沢の目2020

3人制ジャパンへ

今年の7月、お台場の青海アーバンスポーツパークから、大きな歓声が聞こえてくるはずだ。東京オリンピックの初種目3×3 (スリーエックススリー)バスケットボールの応援である。3人制バスケはストリートシーンで発展してきたが、今回オリンピックに登場する。5人制のバスケットボールと異なる点は多い。試合時間10分間。先に21点を取れば勝ちになる。すべてがスピーディ。チームとともに個人ランキングで順位を決める点も現代的だ。世界の街中から誕生した3人制バスケは、日本社会の活性化へのヒントにもなる。例えば、職場の最小単位を一挙に3人に減らしてみたらどうか。3人寄れば文殊の知恵と言う。アメリカの心理学者たちが2006年に発表した論文によれば、3人以上のチームの業績は、優秀な個人に勝る。2人組だと、個人に負けることもある。4人、5人は、3人と結果が違わない。つまり、3人チームが安定して強い。まさに「文殊の知恵」が実証された。労働生産性の低迷する日本を変えるには、労働投入量を減らし、付加価値額を高める必要がある。「3人制ジャパン」宣言のような大胆な施策が求められる(図参照)。3人なら、専門を張り合わずに、全員が当事者として一体になれる。「専門融合」による総合力は大きい。3人制バスケと同様に集団としても評価できるし、個人の能力も見えやすいので、「集個共存」の組織になりうる。外国籍の人やAIを加えて「異質活力」を高めることもできる。5人の部署が6つよりも、3人ずつ10チームが機動的にタスクフォースを組む方が環境変化に素早く対応できる。店舗の効率化が必要な金融機関、新技術の開発を進める製造業、人員を増やせない官庁など、大胆にチーム構成員を減少させよう。3人に減らすとなれば、業務の目的と過程を見直す「破壊的創造」が必要だ。働く人にとっても、3人なら労働時間の調整も容易で休日も取りやすい。抜本的にルールを変えるべき年である。(日経産業新聞コラム 2020.2.14)

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