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50の手習い(EWI奮闘記)~Ⅳ.基礎練習

1.      教則本と私


 さて、いよいよ新しい楽器への挑戦となるわけですが、何から吹けばいいかということになります。なにせまったくやったことのない笛ものですから、とりあえずド素人が手を出すとしたら『ゼロから始めるEWIスタートガイド』(よしめめ・著)になるでしょう。よしめめさんというEWIのエンドーサーの方が執筆されているもので、EWIの初心者が知るべき知識もふんだんに織り込まれているのでとても役に立ちます。また収録されている曲も初心者用からやや難度の高いものまで並んでいて、達成感があると思います。もちろんCD音源付きなのはありがたいことです。

最近Reviseしたみたいですね。でも本当にこれは役に立ちます。


 もう一つ、元T-SQUAREの宮崎隆睦氏が書いている『EWI MASTER BOOK』というものもあります。こちらもまぁEWIについては何でも書いてあるみたいなものですが、音源付きなのはありがたいとしても曲の難度がちょっとねぇ、高いわけですよ。「Omens of Love」とか「Truth」「宝島」といったT-SQUAREのド定番もありますし、宮崎氏の美しい曲もあったりしていいのですが、いざそれを吹くとなるとアドリブのところでどうしても無理があります。これはEWIに関する知識面とエチュードの部分だけ最初に手をつけるだけにして、あとは技術が身についてきたら取り組めばいい、っていう感じですかね。

EWIの歴史までわかっちゃう本。これをマスターするのは何年先か……。

 ほかにも『EWI BEST アニ・ソン』『EWI BEST Maniax!』がありますが、これは楽譜と思った方がいいでしょう。私は買っていません。収録曲があまり好みではなかったからです。

2.      サックスは変調楽器だけど、指使いはどうする?

 さて、前にも書きましたが、私はEWI方式の運指で取り組んでいるのですが、他にもサクソフォン方式やオーボエ方式、EVI方式など運指方法はいろいろ選べるわけでして、どれを使うかは人によりけりとなります(EVI方式を使う人はそれほどいないのではないかと思いますけど……)。

 サックスが変調楽器だということはすぐわかったのですが、E♭にしてもB♭にしても、私の場合はサックス用譜面だけをやるとは限らないので、とりあえずC管ととらえてEWI方式にしたんですね。まぁEWIはトランスポーズも容易ですから、サックス用譜面をやりたい場合はE♭かB♭にすればいいわけで、あんまり悩むことなかったなぁというのが今の思いです。とは言え、これから私のように管楽器の経験が無くてEWIを始める方で、サックス用の曲をやることが多いと考えておられる場合は最初からサクソフォン方式というのもアリだと思います。

3.      「大きなのっぽの古時計」から「Over the Rainbow」まではなんとかなった

 前のオーナーさんがご親切におまけしてくれた『ゼロから始めるEWIスタートガイド』を手に、私はいよいよEWIの第一歩を踏み出しました。最初の曲は「大きなのっぽの古時計」。定番なのかな、でもまぁ耳に残っている曲ですからなんとかなるかということで始めました。あまり苦労せずに吹くことができましたが、付属音源を聴いてみたらまぁなんとも……私はアーティキュレーションが全然できていないわけです。これはなかなか険しい道のりになりそうです。とは言え、指使いに関してはそれほど苦にならなかったです。

 2曲目の「ジムノペディ」はちょっと大変。途中で♭やら#やらがどんどん出てきます。これを練習することで指使いの練習になりますね。運指表とにらめっこしながらこなしていきますが、リコーダーが得意だったという私にとっては、いくつかはリコーダーの指使いそのままだったものもあり、何度も吹いているうちにだんだんできるようになりました。とは言え、ミスなく吹けるようになるまでは一か月くらいはかかりましたかね。あとはテンポの問題もあります。できるところはどうしても走ってしまいがちですし、♭や#がつくところではもたついてしまいます。メトロノームでテンポをキープしつつ、しっかりと吹けるようになることと雰囲気を大事にしないといけない曲だと痛感しました。

 「デイドリーム・ビリーバー」はちょっとノリのいい曲です。好みの問題として私としてはあまり好きな曲ではないですが(嫌いというわけではないです)、ノリを出すにはいい練習曲ですね。ハーモニカの音で吹くように指示があり、その通りにやってみて楽しかったです。
「Over the Rainbow」でベンドをうまくやれるようになれば、EWIの初歩の初歩はだいたいクリアしたことになりますかね。情感を出すためには息遣いが鍵になります。

 ここまでやってみて思ったことは、曲っていうのは吹く人の解釈によっていかようにも変わるということです。前に中学の時にリコーダーは得意だったと書きましたが、ピアノが弾けない、ギターはちょろちょろという自分にとって、音楽の授業というのはどうしてもコンプレックスだったのです。歌もそんなにうまいわけでもないし(私は音域がめちゃくちゃ狭い)、楽器が得意なわけでもない。そうなるとせめてリコーダーくらいはなんとかしなくちゃという感じで練習したわけです。音楽のテストでノーミスで吹けるとちょっと嬉しかったりするわけです。

 ちょっと脱線しますが(脱線ばっかりだな……)、中学3年の時の音楽の先生のことがすごく記憶に残っています。ちょっと荒れたクラスだったので、音楽の授業は先生にとってすごくストレスフルだったと思うのですが、リコーダーのテストがあったとき、誰もろくに練習しておらず、先生の顔がひきつっていました。吹奏楽部の生徒ですらまともに吹けないために、先生のストレスはMaxになっていました。そんなときに私の番がまわってきました。私はかなり練習していたので、ちょっと特殊なリズムのその曲を足でテンポキープしながらノーミスで吹ききったんですね。集中していたんで、周囲の妨害(私のテンポを乱そうとする行為)などものともせず、自分的には完璧に吹けたわけです。これは褒められるかな、と思いきやその先生は険しい顔で「音が硬い!」と言うわけです。そこから息遣いのこととか曲の盛り上げ方とかを周囲の生徒のことなどお構いなしに延々と私に指摘したわけです。褒められることもなくただただ指摘を受けることに少し凹み気味でしたが、最後に「でもあなたに救われたわ」とボソッと言われた時、「これがこの先生の褒め方なんだ」と思いました。練習してきたからこそ次のレベルはこうなんだ、というのを示すことが指導者としてのあり方だったわけです。女性のちょっと陰気な感じのする先生でしたが、私はその先生の気質がわかった気がしてその後は何だか心が温かくなった気がしました。だから「Over the Rainbow」をどうやって盛り上げるのか、どうやって囁くようなところを囁くように吹くのか考えているうちに、その先生のことを思い出したんですね。もう40年も前のことです。あの先生、お元気かな……。

4.      「Twilight in Upper West」でつまづき、「Lemon」はやめた

 さて、そんなわけで順調に消化していって、「Over the Rainbow」までだいたい1カ月弱。結構やっているなぁっていう感じですけど、楽しいからあまり苦にはならなかったですね。とは言え、課題曲をやっているだけじゃちょっと飽きるので、自分で適当に音を拾いながら好きな曲を吹いてみたりもして、楽しい毎日でした。ちなみに音色は教則本指定の音色でやっていました。音作りなんてまだまだ無理と思っていたので、とりあえずは曲が吹けるようになる、ということを優先したわけです。

 ところが、「Twilight in Upper West」でちょっとつまづきました。The SQUAREのとても美しい曲で、かつて私がバンドでベースを弾いたこともある曲ですからよく知っているわけですが、メロディーをやるのは当然初めて。アルトサックスですので、E♭のトランスポーズして吹くわけです。教則本ではあえてシンセの音でやっていましたが、私はアルトサックスの音でやってみることにしました。00番だとちょっとエッジが効きすぎている感じなので、01かもしくは31でやってみました。サビの部分あたりが上手くいくと気持ちいいんですが、やっぱり難度は高めですね。情感を出すのが大変です。でもまぁやってやれないことはないっていう感じなんですが、ちょっと気持ち的に教則本を離れたくなってきたこともあって、未だ完成には至っていません。

 そして教則本にはもう一曲「Lemon」があるのですが、これは#が多めの曲です。教則本でもトランスポーズ前提となっているんですが、これはまったくやっていません。曲は素敵だと思うのですが、トランスポーズはできればやりたくないというのが私の気持ちなんですね。変調楽器に合わせてトランスポーズするのはいいのですが、曲の難度を下げるためにトランスポーズするということをやってしまうと、その後の取り組みに気持ちの面で影響が出てしまいそうなんで、やりたくないわけです。だけどこの曲をトランスポーズ無しでやるのは私の技量では無理、と判断し、この曲は最初からやらないことにしました。

5.      息が苦しい……よだれとの戦い

 EWIをやる前は考えもしなかったのですが、EWIは構造上息が抜けにくくなっているようで、初期型のEWI(EWI1000)ではまったく息が抜けなかったそうです(どうやって吹いてたんだ)。そのため、口の横から息を漏らしながら吹くのが基本のようで、サックスなどのアナログ楽器とは真逆のようです。「最初はストローを横に加えて息を逃がしながらやるといい」なんてありましたが、結局私はやらなかったです。

 息が抜けないとなると、どうしても別の意味で苦しいわけです。つまり、肺に空気が足りなくなって苦しいのではなく、肺から空気が抜けない、つまり「息が余る」ために苦しくなるという感じになります。これは驚きでした。ただ、私は学生時代水泳をやっていて、背泳ぎだったんですが、バサロに15メートル制限が無い時代だったこともあって結構潜っていたんです。そのせいか肺活量だけはこの歳になっても結構あって、健康診断なんかではよく驚かれます。そのため、普通の人よりは結構息を長く止めていられることもあり、それはちょっと幸いしているかもしれないですね。

 もう一つは、「よだれ」です。これがまぁダラダラと流れてきます。それを防止するために、テニスプレーヤーなんかが手首にはめているリストバンドをEWIのマウスピースマウントと本体のつなぎ目あたりにはめるのがやや定番のようです。私の場合、リストバンドが無かったのでそのままよだれが流れるにまかせていましたけど、慣れればこれはだんだん少なくなってきます。今だとほとんど流れてきません。息苦しさは相変わらずなんですが、これにはまた別の理由があったりします。それはまたいずれ……。



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