最近好きな曲と告知
なんやら音楽業界のことばっかをよく話した一週間だった。
Fuzeの特集シリーズ、星野源が表紙のanan、今日でるらしいインタビュー記事(追記: でた。)もそのたぐいの話をめっちゃ詰め込んでしまった。一方で、自分にとってベスト級のラインナップが揃った今年のフジロックには結局いけなかったり、だったらせめて......と考えていた地元のクラブにもほぼ顔を出せずじまいと、積もっていくものはあれど発散出来るタイミングがない日々を過ごした。
何某の構造の話を考えるのは好きなので、それはそれで良かったんだけど、そのバランスが偏ってしまうと、自分のせいとはいえちょっと居心地が悪くなる。なーんかやだなァと思いながら手癖のように最近買った曲を再生したらめちゃ楽しくなってきた。ン〜〜〜やっぱり音楽は最高!
一体なんの反動か、多分全部なんだろうけど、そういうことをパーティとかインタビュー以外でも誰かと共有したくてたまらなくなってしまったので新しいチャートをつくりました。
https://www.beatport.com/chart/sekitova-chart-for-tesla/454582
せっかく土曜日はTESLAっていう自分のパーティなんだし、インタビューもそれについてだったから、これまでTESLAでプレイしてて記憶に残ってる曲と、最近よかった曲(次かけれたらいいな)っていう2つの基準で選びつつ、順番は順位と関係ない詰め合わせの10曲です。
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01.
Dinky - Casa (Axel Boman Dub Mix)
昨シーズンの曲なんだけど、Axel Boman節もここに極まれりのアツい一曲。溜める溜めるで失禁禁止のカタルシストラック。散々溜めたあとは素っ気ないのが色男。でもまたゆっくりダンスフロアに帰してくれるのが愛やね。
Pampa三銃士として来日した時も、Studio Barnhusトリオで来日した時も、一際陽気だったのがこの人です。チープな音を寄せ集めてめっちゃ良い曲をつくる特殊能力を持つ彼、そのスイミー力の高さは今回もシグネチャーエッセンスとして活かされていて、なんかリッチでスイスイしてて浮遊感のあるオリジナルの素材との組み合わせ方がお上手。
"チープなだけ"じゃなくてチープなのが集まってリッチ力を高めていたり"地味なだけ"じゃなくて、地味だけどシャレてて踊れるみたいなのが大好物。まぁこの曲は地味界の中では好色派手男みたいな感じだけど、なんかそういう本能的に相反するものを同居させられるのが音楽のマジックのひとつなんですよね。ホントのところは相反や対立自体存在しないのかも。どっちにしろそういうのを軽々越えていける曲はカッコいい。
そういえばDinkyの来日に出演した時もJouleだったなァ。
02.
Jesse Futerman - Gem
ここ数年、自分にとって大きな変化といえば好きな曲の割合にUK産のものが増えてきたこと。この曲はロンドンのキャンバーウェルに拠点を持つChurchというレーベルからのリリース。ここは他にもDJ Aakmel、Ishmael、Chaos in The CBD、そしてLawrence Guyと粒揃いで、どれも温度感をもった質感のあるハウスなのが特徴のレーベルです。
この曲も情動的なシンセハーモニーの上で強く斬り続けるオープンハイハットが激エモ(もしかしてもう死語?)で、推進力のある曲だと思う。前もリキッドでseihoさん、アヴちゃんと話になったんだけど、グルーヴってよく円を使って表されるしそれ相応の根拠もありながら、僕としては前に進んでいくイメージなので、それに合致する曲が好き。
キャンバーウェルってロンドン芸大のカレッジのひとつがある地域で、そういった地域からUKの新しい風が吹いているのは面白い。大学を挟んでの隣町のペッカムとかはなにやら芸術関連のイロハが揃っていて街自体が面白いことになってるらしいよ。これは適当にググって見つけた記事をまるまま鵜呑みにしているだけなんだけど。
03.
Anthony Naples - Us Mix
たまたまUKの次にUSが来てしまった。Anthony Naples自身の主宰レーベルからは2年ぶりのリリースとなった本作。
音の擦れ方とかはさっきのテイストにそっくりだけど、よりUS訛りというか、どすこい性が強い一曲。どすこい性が強い曲はついついミキサーの縦フェーダーを壊してしまいそうになるので、DJ中はいつも盛り上がりすぎないように気をつけている......。
同じようなグルーヴの中でプレイすると小休憩的なグルーヴ維持、フロウ重視に持っていける落ち着いた曲になるけど、ヨーロッパとか日本的な空気が通り抜けるようなグルーヴの中でこれをぶち込むとファットなキックと荒々しいサンプル使いが場を支配して一気に旗色が変わるクラッチの効いたMT車。
家とかイヤホンとか小さい音で聴いてるとドッチッドッチッってシンプルなビートなんだけど、ひとたびクラブで鳴ると、このビートに粘りがでて自然に音楽と身体が一体になる凄い曲。音楽的に言うとキックとベースのミックスが完璧なおかげでストレートな置き方でも着地と離脱でハネのグルーヴが出てるのと、ハットのアタックがマスキングされつつボリュームをあげて聴くことでお尻のノイズが聴こえてくるおかげでビートに連なりが出てくるから、ってのがひとつの要因なんだろうけど、やっぱり一言でどすこいと言った方がシックリくるよね。
04.
Massiande - Straight
これまたややこしい鳴りで、人によっては気持ち悪いと感じてしまうかもしれない。音の鳴らし方はめちゃ個性あるのにやってること自体は超王道ディープハウスで、このチグハグ感が最高。
楽譜上で変なことしなくても、こういうテクスチャの在り方でドラッギーになってて奥が深いんだわね。キックよりもベースに重心があるのかなと思わせぶっといてその下にはまた四つ打ちの低音が控えてるとこも個人的にツボで面白い。本人は普通にやってるだけっぽいから。
ハイハットの走り方、じわじわとスペーシーになっていく展開からテクノっぽいテクノの方にも行く布石にも使える。
Massiandeはチリの首都サンティアゴのアーティストで、ここルーツといえば3歳で亡命したとはいえ、言わずと知れたRicard Villalobosがいる訳だけども、彼に至っては変の極み(勿論最大級の褒め言葉)みたいな人だし......。
この曲以外もちょっとずつなんかチグハグだったり、スピリチュアルな要素が入ってて、ぐにゃぐにゃ歪んでいく世界を見せてくれるプロデューサーです。おススメ。
05.
Young Marco - The Best I Could Do (With That I Had)
や〜〜〜〜〜〜〜この曲はとにかくプレイしまくっている。最近のDJで軸になることが一番多い曲で、とにかく使いまくるので勝手につくってるエディットも4種類か5種類くらいある。
Dekmantelらしさがしっかり出た多幸感溢れるハウスで、低温なんだけどしっかり組まれたビートのおかげで安定性もあって、家づくりは基礎づくりと言われるような基礎の大事さみたいなのを教えてくれる。だからどういう展開で使ってもこの曲が軸になってしまうみたいな力強さがあるのが正解なのかもね。
今年のDekmantel Festivalは今まさに開催中。今年から場所が変わったらしい。Greenhouseっていうステージが毎年最高のロケーションで、いつか行ってみたい。今年はD.A.F.もでてるし、なんとDJ Nobuさんは2日目UFOのトリ。凄いよね。宮島と松原が帯同してるから感想を伺いたい。当のYoung MarcoはNina Kravizがオープンを務めるSelectorsの初日トリなので、こっちも見に行っててほしいな。
06.
Nick Höppner - In My Mind
ベルリンといえば地下テクノと連想する人には意外かもしれないけど、Berghainに併設されてるPanorama Barの顔として長年レジデントを任されているのがこのNick Höppnerなんです。
リリース元のOstgut TonでもA&Rを務めていながら、えげつないスピードで曲をつくるニックのセカンドアルバムからの一曲は最近の彼らしいシンセフルなモダンディープハウストラック。元はと言えばMarcel Dettmannも彼によってOstgut Tonに引きあげられ、Berghainでは今や超人気のレジデント......。
ファーストアルバムのFolkの時のようなシリアスで危ういグルーヴは少し控えめだけど、表現の幅が広がりつつも統一された多幸感が増していて、彼の変化、シーンの変化が読み取れる。知らんけど。
グチャグチャいってるビートと、あまり主張してこないけどしっかり鳴ってるシェイカー、ハット類のバランス感がラヴ。どの曲もちょっと雷っぽい要素がどっかしかにあるというか、天気みたいな感じがする。かといってステレオタイプなジャングル!とかそういう訳でもなくて、彼って言う強烈なファクターを通してるから、見えてくる世界が絶妙のバランス感で面白い。
07.
Donato Dozzy - Cassandra (Fred P. Remix)
このあいだのLiquid Roomでかけたら大分調子がよかった曲。まぁ全部の曲がそうなんでもう今更言うまでもないんだけど、これもウワモノ浮遊感でふわふわさせつつ、無骨な下でグイグイ押してくる武器として素晴らしい一曲。
fp-onerのクレジットでToshiya KawasakiさんのMule Musiqからリリースされていたシリーズもどれもこれも素晴らしくて、一聴してすぐわかるFred Pらしさがツボな人は延々とのめりこんでしまう沼にハマるみたい。
彼の場合、浮遊感はふわふわしてるだけじゃなくて、原子になって身体をすり抜けてくるみたいな、聴いてるこっちが透明にさせられる(洗われる、とはまた違うんだよなぁ......)っぽい感覚があって最高。
頭で捉えてると退屈と感じるシンプルな曲が多いかもしれないんだけど、頭のタガを外して身体で聴くと"わかる"っていうダンスミュージックの根幹をこの方向から導いてくれる。多分それって彼なりのルールに基づいて、音に対するフェチズムを緻密かつ濃密に曲に落とし込んでるからだと思う。徹底的にフェチを貫いてるから、まったく自分のルールに沿わなくても筋の通り方がパーフェクトで、だからこそ揺さぶられるものがあるんじゃないかな。
08.
Johannes Volk - Emerald Tunnel (Efdemin Remix)
最近はハウスの色めきが強かったけど、昔から大好きなアーティストに関してはやっぱり間違いないものがあって、Efdeminなんかはその典型例。
この曲はEfdeminの金物回しが光るRemix作品。ドラムマシンがこんなにイキイキと音を出してるのやばくないですか?めっちゃ可愛いでしょ。テクノっぽい構成が光るけどハウスの音の出し方でゴリっと出てる訳じゃないのがまたエロい。
楽曲はTobias.に拮抗する巨匠タイプだと思っていて、ホントにマシンの個性とエナジーを引き出すのが上手。記号に頼らないミステリアスさを醸し出してくるテクニックは随一だし、そこに他の要素を含んでいくポップセンスも両立されてて素敵です。
2013年に京都のMetroに来日した時に遊びにいってて、ず〜〜っと楽しかったのを覚えてる。Move Dみたいなドープなハウスからテクノっぽいところまで流れるように流してくれて、いたいけな18歳は入り口で念を刺されたノンアルを貫きながら流されるように流されたのが良い思い出。人もめっちゃ入ってて、雰囲気も最高だったな。
09.
Bufi - El House Es Tu Idioma (Dave DK Remix)
ず〜〜〜〜っと言ってるからもうお馴染みになった感すらあるけど、Dave DKの新しいのも凄いよかった。Anjuna Deepから出たKysonのRemixも最高だったし、相変わらず生涯ベスト1のアーティスト。
シンプルだけど、よりダンサブルになった今作は汎用性も増して、かつDave節はそのまま残っててめちゃくちゃありがたい一作。久しぶりにビットクラッシュがかかったビートの飛び道具が帰ってきててマニア的な歓喜も......。
TESLAではまだかけてないけど、他のパーティではちょいちょいかけてて、今までにない力強さがフロアから反応として返ってくるからDJとして使ってても面白い。
数多ある他の曲もそうだけど、一度製作者の手によって完成されたはずの曲がmixの中でもう一度分解されて、どう化けるのかっていうのを存分に楽しめるのはブースに立つ側の緊張感でもあるけど特権でもあって、音のカロリー自体はそんなにないこの曲は自分にとってその特権をとても楽しめる曲。
10.
Christian Löffler - Vind (Max Cooper)
Christian Löfflerの新しいアルバムはマジで最高なんで全員聴いて。この曲はそのRemixesとしてリリースされたMax Cooperのバージョン。
繊細なプロダクションは両者の良いところが絡み合っていて最高。ハイファイだけど安っぽくないメランコリックな曲、四つ打ってるけどダンスフロア限定じゃない感じ。千と千尋の神隠しにボロ泣きしながらおにぎりを必死に食べる名シーンがあるけど、なんかそういうのに近いなにかを感じる気がする。
大雑把にエレクトロニックって言ってしまうのが一番わかりやすいタグになると思うけど、抽象的な世界観というよりはパーソナルな空間を持ってて、なんていうか自分の部屋の中っぽい感じというか、ファンタジーだけじゃなくてリアルな地に足がついた重力の存在がテクノやハウスにも通じるポイントだと思う。
自分の中でこの重力っていう概念は重要なジャンル分けのひとつで、ちょっと説明が難しいけど、とにかく重力です。三種類あって、宇宙的な無重力と、地上的な1重力と、ブラックホールみたいな凄まじい重力っていう。
自分がDJする時に一番大事にしてる観点がこの重力で、重力が変わることでカメラの位置が動いていって、出てる音のイメージがそれを可視化する感じで。なんの話かわからんよね。多分カツ丼の話です。
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また長々と書いてしまった!延々書いてたら今度は猛烈にDJがしたい気分になってきたのでみなさんぜひ土曜日Jouleでお会いしましょう!
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