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関友美の連載コラム「同級生たちと、知らず知らず重ねる年輪」(リカーズ3月号)

そうだ。日本酒を飲もう。二十四杯目
ドキュメンタリー番組出演で気づいた“お酒の醍醐味”

このコラムは、「リカーズ」発刊のすこし前に入稿し、印刷されて皆さまの手元に届いています。3月号コラムを執筆する現在はまだ年の瀬。12月10日放映・朝日放送「LIFE〜夢のカタチ〜」で私について特集してもらい、大きな反響をいただいています。まさかテレビのドキュメンタリー番組で30分も取り上げてもらう日が来ようとは、夢にも思いませんでした。

ライターのかたわらで働いている兵庫県の山陽盃酒造(「播州一献」醸造元)で、私が発案して立ち上げた「シードルロンロン」の取り組みに関する内容でした。酒蔵の一従業員として杜氏と共に開発したりんご100%の発泡酒です。社内の説得からスタートし、シードルを学び、国内外150種以上のシードル/サイダーの研究や、各地の醸造所を見学させてもらい、兵庫県内のりんご園に「りんごを分けてください」と頭をさげに行く、という泥臭い開発工程を辿った末に誕生した、我が子のような商品です。

このブランドを立ち上げるキッカケは、2018年11月に起きた火災でした。当時私はライターとしてさらなる成長を遂げるため、それまでの仕事を辞め、この山陽盃酒造で蔵人として2カ月間の研修(バイト)をする準備をしていました。約束の3日前。酒蔵では火災が発生して、1,500平米が焼失。翌日現地に着き、見るも無残な光景に胸が詰まりました。それからは酒造りをしながら、復興のためのあらゆる取り組みに尽力しました。国内外のファンから応援を受けありがたい反面、「いつまでも応援される側ではブランドが廃れてしまう。お酒は皆をワクワクさせる存在でないと!」と考えるようになりました。そこで地元・兵庫県宍粟市(しそうし)産りんごを使ったシードル造りを閃きました。「兵庫のりんご」なんて意外だし、創業から185年、日本酒を一筋につくってきた酒蔵の新たなる取り組みとしても面白い。いかにも“地域産品”ではなく、本格的な味わいとジャケ買いしたくなるオシャレなラベルのお酒が名も知らぬ町から発信されている、というのが返って見所あるのではないか、と考えたのです。

テレビを通して、私の存在、酒蔵との出会いや開発秘話を知った方たちが共感し購入してくれて、あっという間に完売しました。多くの温かい言葉の中には、「シードルと一緒に初めて日本酒を買ってみました」というものもあり、酒の醍醐味に立ち返りました。料理の美味しさUP、人や地域との繋がり創造、ほろ酔いで立場を超えて笑い合う宴…かつて私を救ってくれたお酒からの恩恵の数々。今度は別の誰かが享受できますように、と心から願うのです。

神戸「TOOTH TOOTH MART FOOD HALL&NIGHT FES(トゥーストゥースマート フードホール&ナイトフェス)」で11月26日おこなわれたイベントでの撮影風景


酒蔵での商品撮影の様子


番組放映前のホームページ告知


今月の酒蔵


宮坂醸造(長野県)
銘柄「真澄」醸造元。諏訪家家臣の武士だったが、戦乱の末、1662年造り酒屋へと転身。創業から360年以上の時を刻んでいる。全国新酒鑑評会の前身である「全国清酒鑑評会」で、1943年に第一位を受賞して以来、数々の品評会で上位入賞を果たしている。現在でも醸造家から愛される「きょうかい7号酵母」の発祥蔵としても有名。味わいの良さ、安定性に長年定評があり、早くから海外進出もしているため、世界から愛される信州・諏訪の地酒だ。


以上

庄司酒店発刊「リカーズ」連載日本酒コラム
関友美の「そうだ。日本酒を飲もう。」3月号より

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